経済を知らんと欲すれば

2012年9月20日 (木)

★…きょうのニュース解説 [ 9月20日 ] シャープが米インテルと提携?


 経営再建中の家電大手シャープに20日、半導体世界最大手の米インテルとの資本提携の話が急浮上しました。救世主となるはずだった台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と資本・業務提携の話が進まず、資金繰りの悪化から「もしも」が心配もされていただけに、周囲はホッと一息でしょう。報道では、インテルは自社の半導体を使ったスマートフォン(多機能携帯電話)などの協業相手として高く評価、シャープは提携で新たな出資先とパネル供給先を確保出来ます。インテルがシャープに対して300億円超を出資する方向で協議しており、早ければ10月中にも合意すると報じられています。

 それにしても、この15日に創業100周年を迎えたシャープの経営がここまで一気に悪化、「もしも」が取りざたされるようなことになるとは…。2008年3月期に
1019億円という過去最高益を計上してからわずか4年です。12年3月期に連結決算で過去最大の3760億円、13年3月期も2500億円の赤字を計上。社債などの格付けが最下位となって市場からの資金調達が出来なくなりました。シャープは、本社と国内連結子会社の従業員を対象に創業以来初となる約2000人の希望退職を募集。残る社員の給与の削減と、あらゆるリストラ策を進める一方、当面の資金繰りを銀行融資で支えています。しかし、国内のほぼ全ての事業所と営業拠点の土地と建物に対して計1500億円の根抵当権を設定するところまで追い詰められています。

 止まってしまった鴻海との提携話は(1)鴻海グループ4社に第三者割当増資をして669億円を調達(2)鴻海の郭会長個人に堺工場の運営会社の株式を660億円で売却するという内容でした。このうち(2)は実現しましたが、(1)はシャープの株価が200円前後に急落したことで「1株550円で9.9%分を買う」という話がご破算に。出資額が同じで株価が下がれば、
鴻海の持ち分が増えます。持ち分が増えれば、鴻海の経営への関与が強まります。鴻海は亀山工場を中心とした中小型液晶パネルの生産に関与することを希望、これに対してシャープは今後の収益の柱として期待している技術の流出に繋がる鴻海の関与に難色を示しており、なかなか話がまとまらないと言われています。

 インテル、鴻海が共に狙っているのは、シャープの持つ「IGZO(酸化物半導体)液晶」の技術です。「IGZO液晶」は高精細と低消費電力に優れており、米アップルが今年3月に発売したタブレット端末「新アイパッド」にも採用されています。インテルは半導体生産こそ世界1位ですが、市場が拡大しているスマートフォンやタブレット端末向けの半導体ではサムスンやクアルコムの後塵を拝しています。目下、超薄型パソコン「ウルトラブック」の普及に注力しており、「IGZO液晶」の採用を起爆剤にしたいとみられています。

 インテルとの提携が実現すると、筆頭株主に躍り出る可能性があり、鴻海との交渉にも影を落とします。しかし、シャープは技術流出の危険性の少ない提携に(供給だけですから)大きく舵を切ることになります。近く、鴻海からの出資を前提としない再建計画が発表されるようです(13年度通期の最終黒字化をめざしたもの)。シャープの国内の従業員は連結会社を含めて約2万9300人ですが、その仕入れ先は直接・間接取引を含めると国内に8500社に迫り、その従業員まで含めると優に400万人を超えるという事業規模です。鴻海との交渉の行方に翻弄されてきた銀行を中心とした関係者たちは一息でしょう。しかし、まだまだ先が見えない、それも事実です。


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2012年4月25日 (水)

★…日本の危険度は53位

面白い数字がありました。アメリカのCMAが出した「世界各国破綻確率ランキング」です。CMAは「5年以内に国債がデフォルト(債務不履行)となる確率を算出している分析機関」で、デフォルトに備える保険の一種「CDS」の値に基づいてランキングしています。デフォルトを予想する投資家が多くなればなるほど、破綻確率が上がります。ギリシャは数字が90%を超えていましたが、その3月末時点のランキングから姿を消しました。というのも、事実上のデフォルトとなったからです。

さて、新しいベスト3は、キプロス(63.7%)、ポルトガル(60.5%)、パキスタン(46.4)です。キプロスはギリシャの隣国で関係が深いのですが、2位にポルトガル、10位にスペイン(321)、11位にイタリア(297)という南欧のユーロ圏の大国が入っていることが目を引きます。多くのエコノミストが指摘していますが、ユーロ不安が依然くすぶっている証拠です。

イタリアは、ユーロ圏(17カ国)でドイツ、フランスに次いで第3の経済規模を誇りますが、政府債務残高も約1兆9000億ユーロ(200兆円)とギリシャの5倍以上あることから、ギリシャのようにデフォルトとなると、イタリア国債を大量保有する欧米の金融機関全体に影響が及びます。スペインもしかりです。欧州への貸し付けが比較的少ない日本の銀行も、ここまでくると間接的に大きな影響を受けることになります。

そこでイタリアに至っては、先進国としては前例のない国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)による監視まで受け入れ、政府財政の健全化に邁進しています。ただ、緊縮財政だけで何とかなるのか、というと、そういうわけでもなく、却って景気が悪化し、財政がいっそう苦しくなるという負のスパイラルに陥る可能性も否定できません。その意味では綱渡りが続いているのです。

ところで、肝心の日本は。なんと53位です。他の主要国を見ると、日本より“危険”なのは、31位のフランス、36位のロシア、41位の韓国、43位の中国。一方、“安全”なのは、59位のドイツ、63位のイギリス、67位のアメリカ、といった具合です。これを見ると、世界の投資家がどう思っているか、よく分かります。最近よく耳にする「今にも国際が暴落する」といった説が説得力を持っていないことが解ります。

昨年からのユーロ危機の中、ギリシャ、イタリア、スペインを見ても、緊縮財政一本槍では財政再建が進まないことが証明されつつあります。というのも、GDPが大きくならないと、緊縮財政だけでは財政健全化がなかなか進まないのです。大胆な財政出動という呼び水で景気を喚起して税収を上げる、という“もう一つの正攻法”で財政健全化を進めないと、日本も負のスパイラルから抜け出せなくなってしまいます。


2012年3月24日 (土)

★…ディーゼル・エンジン再評価[2]


 マツダが2月16日から発売を始めた新型SUV(=スポーツ用多目的車)CX-5の販売が好調です。ロシアやオランダを中心に海外でも人気が高く、マツダの山内社長は「年間の世界販売目標である16万台以上を達成できると確信している」と記者会見で語っています。

 発売からまだ1ヵ月ほどですが、日本でも累計受注台数はもう8000台と、月間販売目標の8倍にもなっているそうです。ここで注目したいのは、その73%をディーゼル車が占めているという事実です。ディーゼル・エンジンの再評価の表れと思います。


2012年2月18日 (土)

★…嬉しい、ディーゼル・エンジン再評価


 きのう新聞各紙で、マツダの新型車のことが報じられました。私の注目を引いたのは、今回デビューした車にディーゼル・エンジンのモデルが設定されていたことです。ディーゼル・エンジンと言うと日本では、「あの黒い煙がね…」、「カラカラ・カラカラといった独特のエンジン音がうるさい」といったイメージが強く、ガソリン車に比べて人気薄ですが、ヨーロッパでは以前から「メルセデス」をはじめとしてかなり普及している印象があります。

 確かに、私がまだ学生の頃の(30年も前!)ディーゼル・エンジンはうるさかったです。友人が乗っていた初代ゴルフの中古はかなり高い音の「カラカラ音」を盛大に撒き散らかしていましたし、「リッター・ディーゼル」をうたい文句に登場してきた私のダイハツのシャレードは「カラカラ音」が「ゴロゴロ音」に近く、アクセルを踏むと「ギュイーン」と唸りを上げました。ボディー自体がそれなりの安っぽい作りですから、その音が室内にもろに伝わってくるという代物でした。ただ、わずか1000㏄という小さなエンジンにしてはディーゼルらしい粘りがあり、高速を走れば、リッター30㎞くらいは楽に走ってくれるという低燃費でガソリン代が(実際は軽油代ですが!)助かったことを覚えています。

 しかし、今のディーゼル・エンジンはまったく別物。乗っていて、ガソリン車との違いはよほど注意しないと解りません。このところ電気自動車ばかりにスポットライトが当たっていますが、その前にもう一度、“ガソリン車よりも環境に優しくなった”ディーゼル車に目を向けてみてはどうでしょう。実は、ファウヴェー(←ドイツではフォルクスワーゲンをそう読んでいます。彼らの頭文字「VW」のドイツ語読みです)との提携を止めたスズキがフィアットが開発した小型のディーゼル・エンジンを載せた小型車を開発中です。ヨーロッパ発のエンジンと日本発の小型ボディーの組み合わせ。近々登場してくる、この車に私は期待しています。




2012年2月17日 (金)

★…貿易赤字で当たり前


 この間、あるお客さんから「輸出大国・日本の、終わりの始まりってことかなあ…」と聞かれました。先日発表された貿易統計で、日本が31年ぶりに貿易赤字になったことを受けてのことなのでしょう。マスコミも日本経済新聞を筆頭に、どの新聞も「輸出に頼ってきた日本が転換点を迎えている」といった論調でそれを報じたこともあり、みんなが日本の“黄昏”を感じているのだな、と感じました。

 しかし、です。発表された数字をよく見ると、それほど悲観的にならなくても良いと思います。前年比こそ2・7%減ですが、輸出額は金額ベースで65兆円超。あの大震災の中で、この数字を叩き出しているのです。リーマン・ショックの後の2009年の時のそれが54兆円だったことを思い起こせば、よく“健闘”した方と考えていいと思います。加えて昨年は、ヨーロッパの金融危機とそれに伴う新興国経済の息切れ、それもありました。

 ではなぜ、貿易赤字になったのかといえば、福島第一原発の事故とその後の原発の稼働停止で火力発電用のLNG(液化天然ガス)など化石燃料の輸入が急増したからです。つまり…。あの事故がなければ、貿易赤字にはならなかったのです。ちなみに、前回の貿易赤字は1980年でした。この時も、第2次石油危機で輸入額が急増したのが原因です。

 むしろ、今回は円が高くて本当に助かりました(買い付ける時の日本円が少なくて済む)。円が安い時だったら、金額ベースにすると、もっともっと大きな赤字になっていたはずです。原油価格も世界的にこのところ上がっていますが、それほど高騰していると私たちは感じませんね。それも円高がクッションの役目を果たしてくれているからです。そう、円高は悪いことばかりではないのです。




2011年11月21日 (月)

★…連載:TPPは怖くない[2]本当に危ないのは製造業?


 「TPPは怖くない」という話を書き始めたところで、面白い記事に出会いました。きょうはそれをまず紹介しましょう。11月22日号の週刊誌「アエラ」に掲載された野口悠紀雄さんの記事です。野口さんは『「超」整理法』などの著書で知られる経済学者で、記事のタイトルは「崩壊するのは製造業だ」。「TPP」が語られる時、「打撃を受けるのは農業、得するのは輸出しやすくなる製造業」と、農業の被害がどれだけ出て、それをどうやって食い止めるか、という視点で語られることが多いのですが、野口さんの話を読むと、製造業にとって「TPPは怖くない」とは言えない状況らしいのです。

 野口さんは、「TPP」加盟によって得するのは製造業と言われるが、工業製品の関税障壁は既に低いので輸出メリットはあまりないと書いています。例に取り上げているのは、アメリカの車の関税。現状は2.5%という水準で、これが下がったところでそのメリットが大したことないこと、その恩恵が受けてもマーケット自体が米国にもうないこと、それよりも為替の変動の方がより大きなインパクトを持っているとしています。野口さんは文章の中で、「TPP」加盟は百害あって一利なしとまで断罪しています。

 それはなぜか。「TPP」が中国を弾き出す性格を持った経済ブロック体制であるため、中国とEUがさらに関係を深める結果、両者の間でFTA(自由貿易協定)が結ばれる可能性が高く、そうなれば、中国の工場の使う中間材には関税をゼロにしてもらったドイツ製品が、中国市場ではユーロ安も手伝って有利になり、日本は中国市場という輸出の生命線を失い、それで日本の製造業は壊滅する、というのです。TPPは日本の製造業にとって自殺行為、とまで言い切っています。

 農業について、私は「TPPは怖くない」と思っています。しかし、野口さんは、メリットがあると言われている製造業の方が危ないという、とても面白い話です。「なぜ経団連がそれを考えないのか。私は不思議でしょうがない。経済産業省の人も一体何を考えてるんでしょうか。彼らの頭はどうなってるのかと思いますね」。財界、官界に知り合いも多い野口さんがそこまで書いているのですから、これはこれで大きな問題と考えるべきです。投げ込まれた一石は、大きな反響を巻き起こすかもしれません。


2011年11月14日 (月)

★…連載:TPPは怖くない[1]そんなに急に誰が米を売り込んでくるの?

 最近、店に来るお客さんから、「TPP=トランス・パシフィック・パートナーシップ=環太平洋戦略的経済連携協定」の話をよく聞かれます。そういう時は、私の知識の範囲内で解説をしているのですが、「農業県」であるだけに、福井の人たちもその行方がかなり気になっているようです。

 それもこれも、「TPPに加盟すると関税がゼロになり、安い外国産の農産物がどっと入ってきて、地場産がやられてしまう」という話が声高に語られ、福井の農業にも打撃が出てくるのではないかという不安が渦巻いているからでしょう。私は「TPPによって、日本の農業は本当に壊滅的な打撃を受けるのか」と問われれば、私は「農政が変われば、そうはならない」と答えるようにしています。なぜか、それをきょうから書いていこうと思います。

 さて、TPPの話をする前に、まず言っておきたいのは、実は日本は農業大国であることを知っておいてほしいということです。「日本の食料自給率は40%、先進国の中で最低水準で、世界的な食糧危機がやって来ても大丈夫なように農業を保護しなければ…」といった話をよく聞きますが、これは数字をできるだけ低く見せようとする農水省によって操作された数字なのです。

 というのも、日本だけがカロリーベースで数字を出しているからで、世界標準の生産高ベースでみれば66%もあります。GDPに占める農業のGDPを比較すると世界第5位、先進国の中では米国に次いで堂々の第2位です。第6位のフランスを凌ぎ(あれだけワインを作っているのに!)、オーストラリアは(肉をはじめとして日本人の胃袋を支えているようなイメージがあるのに)第15位といった具合なのです。しかも、農業生産額は約8兆円もあります。

 さてそこで、「福井にとって大事な」米の話です。米の場合、関税はなんと778%という高率です。それがTPPに加盟すると、奨励的には0%にしないといけません。そう聞くと、確かに慌てる人もいるでしょう。しかし、ここにも一つ、トリックがあります。実はアメリカで生産されている1,000万トンの米のうち、日本人が食べているジャポニカ米(短粒種米)は30万トン、実に日本の生産量の4%にしかならないのです。これでは今すぐ輸出を急増させようとしても無理です。

 それでも「ジャポニカの作付けを増やして輸出攻勢をかけてくる可能性は?」という声が上がるかもしれません。しかし、ジャポニカは、栽培が難しい上に収量が3割ほど少なく、米国の農家にとっても儲けが少ない作物で、関税が0%になっても、品種転換がすぐに、しかも急に起こるとは考えられません。また、東南アジアの米が日本のマーケットを席巻するという話も、日本人の嗜好からいって現実的ではありません。将来的には中国東北部の米がライバルになるかも、といったところでしょうか。

 オーストラリアがあるではないか、という人がいるかもしれません。水稲の作付け面積は約13万ヘクタールで、南半球にあるため、5〜6月という日本の端境期に出荷できるというメリットがあります。ニューサウスウェールズ州の乾燥地帯を中心に、灌漑水を利用しての直播栽培で、省力、低コスト化が進んでいます。ただ、それで現地で10キロ1,200円という日本の半分ほどの価格です。日本まで運んで来ると、その価格差はどうなるでしょう。加えて、干ばつの影響から逃れられず、世界野生動物基金(WWF)からは、大量の水を要する米栽培は経済的ではなくなるだろうと言われてもいます。

 つまり、他国からの輸出攻勢恐るるに足らず、なのです。反対に日本には、今でも外に打って出るだけの力があるのです。中国、台湾、香港の富裕層向けの輸出が増えていますが、その先には、実は農業大国・米国があります。なんと米国は年間60万トン強、金額にして600億円以上も米を輸入しているのです。TPP加盟で関税障壁がなくなるのですから、彼らにドンドン輸出すればいいのです。

 ところで、福井の農業のことを心配するのであれば、むしろ私は、「コシヒカリ」を生み出しながらそれに安住してきた「福井の米づくり」の方がよほど心配です。なぜか。それはこの数年、米を取り巻く状況が大きく変わっているからです。私が子供の頃は、米どころといえば新潟でした。ところが、今や北海道が生産量でも日本一になる時代です。「きらら」、「ほしのゆめ」、「ななつぼし」が人気を集める一方、かつてのブランド米「コシヒカリ」は残留米が増えています。

 飽きられたということもありますが、実は温暖化の影響で「コシヒカリ」は西の方にいけばいくほど味が落ちてきていると言われています。東京の高級寿司店のほとんどがもう既に北の米にシフトしているという現実を見ないといけません。となると、北陸で最も西にある福井は、「次の一手」を考えなければいけません。つまり、外のライバルのことを心配する前に、もっと美味しい米を開発し、国内のライバルに勝つことの方が、福井の農業にとっては喫緊の課題だと思うのですが…。


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