年金の制度疲労をどうする

2012年9月29日 (土)

★…きょうのニュース解説 [ 9月29日 ] どうなる厚生年金基金の後始末


 以前、AIJ投資顧問による年金消失事件が起きた時に書きましたが、あの事件で「厚生年金基金」が積立金の不足に陥っている惨状がクローズアップされました。そこで政府は9月28日、大きく舵を切りました。「基金」を廃止すると決めたのです。10月中に社会保障審議会年金部会に専門委員会を設置、年内に最終案をまとめるとしています。ただ、移行準備などが必要なため、実現するのは10年程度先。しかも積立金の不足は総額は1兆1000億円にもなります。課題は山積です。

 何度も書いてきましたが、年金の構造は3階建て、です。1階部分が基礎年金(=国民年金)、2階部分が厚生年金、3階部分が企業年金です。そして「基金」は本来、私的年金である3階部分の企業年金の保険料の運用をするのが仕事でした。ところが2000年になって、「基金」が厚生年金の保険料の一部を企業年金にプラスして運用することが認められたのです。これが、いわゆる「代行」です。加入者は本来なら国に払う保険料の一部を企業年金の保険料に加えて「基金」に納め、「基金」はそれを運用して支給するというやり方です。そして経済が右肩上がりだった時代には「基金」の多くが運用益を上乗せすることができました。

 しかし、バブル崩壊で状況は激変、多くの「基金」が運用益を出せなくなりました。それでもOBには予定利率の年金を支給しないといけない…年金を支給するための積立金が足りなくなる「基金」が出るようになりました。中でも悲惨なのは、企業年金部分の不足で終わらず、「代行」部分も積み立て不足に陥る「代行割れ」を起こしている「基金」です。こうなると、企業年金を諦めてもらうだけでは済みません。そしてその数、今年7月の調査で全国572の基金の半数にあたる286基金もあるのです。不足分の総額は、なんと1兆1000億円。運用益が出るような経済環境がこれから訪れる…それに期待してこのまま放置しておけば、さらなる財政悪化を招くことになります。そこで政府としては、「基金」は解散させて将来の被害を食い止めようという作戦です。

 ただ、「代行割れ」に陥っている「基金」は、厚生年金の保険料の一部を払っていないのと同じことですから、「基金」の加入企業にはこの不足分を返還する(補填する)義務があります。また、上乗せ年金の支給を止める…そこまでいかなくても上乗せ部分の予定利率を下げたり、追加の保険料を徴収して「基金」の収支を改善しないといけません。しかし、当初の条件を変更するにはOBの3分の2の了解が必要といった高いハードルがあります。それで新たな企業年金制度に移行出来るようになった02年、体力のある大企業を中心にその時点で赤字を穴埋めて「基金」を解散、「代行」を返上するところが続出しました。

 ということは…。今残っている「基金」は体力的に厳しいところが多いということですから、それらを解散させるのはもっと大変ということです。政府は既に不足分の返還について分割での支払いを認めるといった緩和措置を取ってきましたが、今後はさらに解散しやすくするため、そのルールを改正するとしています。例えば(1)返還しなければいけない額の減額を認める(2)積立金の返還については、複数の企業が加入する基金の場合は加入企業に連帯責任が負わされていました。そのため、どこかの企業が抜けると、残った企業だけでそれを負担するという悪循環が生まれ、その負担で倒産する企業も出ていました。その連帯責任制を廃止する、といった措置です。

 しかし、減額しても払えないところは出てくるでしょうから、最悪の場合は返還額ゼロを認めることもあるでしょう(これ自体、不公平という声が上がりそうですが!)。それによって最終的に不足する分を何で補填するのか…政府は厚生年金の保険料で補填しようというのです。それはずばり、「基金と無関係なサラリーマンの保険料を充てる」こと。これはこれで、公平性を著しく欠くことになります。加えて、財政が健全な「基金」も解散させられることになります。政府は解散前に他の企業年金の制度に移行するよう促すとしていますが、中小企業が単独で企業年金を維持するのは難しい…だからこそ基金に加入してきたという現実があります。それを無視した、これも大雑把な議論ですね。自民党は存続容認の姿勢を示しています。これからの議論の中で最終的にどんな結論になるのか、年金制度の根幹に関わるだけにしっかり見守る必要があります。

2012年4月27日 (金)

★…連載:年金の話[3]どうなる官民一元化の行方


きょうもまた年金の話が出ました。年金の話題と言えば先日、厚生年金と国家公務員が入っている共済年金を一元化するための法案が国会に出されたところです。ところがこの法案、多くの識者から「5年前に自民、公明両党が提案した法案の焼き直し」と指摘される代物。しかも、5年前は民主党が反対して自らが潰した法案なのです。ブラッシュアップして出してきたものならまだしも、本当の「焼き直し」を性懲りもなく出してくるなんて…。その一方、実は一元化のスタートを遅らせたことへの反省も感じられません。

最大の問題は、「官民格差の最大の象徴」とされる「職域加算」の廃止が形だけなのです。年金についてはこれまで、「3階建て」と書いてきました。1階部分が「国民年金=基礎年金」、その上の2階部分が「厚生年金」、さらに上に積み上がる「企業年金」が3階部分です。「職域加算」とは、この3階部分のことです。そして、なぜこれが「官民格差の最大の象徴」なのかというと、厚生年金の場合は2階部分までの保険料が16.412%なのに、共済年金の場合は3階部分までの保険料で15.862%と低いからです。つまり、民間よりも安い保険料で、3階部分までの年金を受け取っているからです。

今回の法案では一応、「職域加算」廃止となっています。共済年金の保険料を段階的に上げていき、平成30年に厚生年金との格差を解消するとなっています。しかし、その一方で「廃止後、改めて新しい年金について法律を定める」となっています。これでは結局、「職域加算」が復活してしまいます。

もう一つ、自分たちに都合のいいことをやっています。拠出金の負担について、です。年金の一元化ということは、二つの財布を一つにすることですが、1、2階部分の支出についてぞれぞれ何年分の積立金を持っているかを比べると、厚生年金が4・2年に対して、共済年金は7・8年となっています。今回の統合案では、厚生年金に合わせることになりました。つまり、共済年金の積立金からは4・2年分の拠出しかしないのです。となると…。共済年金は3・6年分の積立金が余ります。なんとそれを、“職域加算の復活”の原資に使おうというのです。

ところが、実は、それは「今の時点で余っている」というだけの話なのです。本当は共済年金の方が、一足先に現役世代の負担率が厚生年金より高くなっているのです。一人分の年金を、厚生年金の場合は約2・4人で負担しているのに対して、共済年金は約1・5人。ですからよほど国家公務員が増えないと(ありえませんね、今後!)共済年金の財布は将来的に苦しくなっていくのです。なのに、そのための蓄えを使ってしまえ、とは。しかもそこには、積立金自体が元々は税金から支出されたものという感覚すらありません。そして、その負担も結局、一元化される厚生年金に回ってくるのです。そんなことは解り切っているはずです、聡明な彼らには。









2012年4月21日 (土)

★…ベーシック・インカムという解決策


耳慣れない人も多いと思うのですが、簡単にいうと、「年金、失業手当、子ども手当、生活保護といった国からの給付」を一本化し、国が毎月、一定の金額(=ベーシック・インカム)を現金で配るやり方です。子供から大人まで、お金のある人にもない人にも、個人ひとり一人に無条件で配るところが特徴で、もちろん、使い道は自由です。お金を配る……突然聞くと“奇妙な”仕組みですが、さまざまなメリットがあり、制度疲労が目立つ日本の社会保障制度を立て直すために導入すべきと思っています。

例えば、ベーシック・インカムが(大阪維新の会の「維新八策」にも採用されていて、彼らが想定しているとされる)月額5万円となれば、家族4人で月に20万円が国から支給されます。福井であれば、「それだけで生活ができそうな」金額が国から支給されるのです。「働かない人」にお金を配るのは道徳に反しないか、「お金をたくさん稼げる人」にも同じお金を配るというのもおかしい…みなさんが最初に思い浮かべるのはそんなことではないでしょうか。

ところが…。これがなかなかの「優れもの」なのです。平成21年度の厚生労働省の社会保障給付費の総額は約99兆8500億円。ここから「医療に必要な部分=医療費など」約30兆8400億円を引くと、ざっと69兆円です。そのお金が年金や失業手当、生活保護などに使われています。まず最大のメリットは、それらの国からの給付を一本化出来ることです。それにより、行政システムを大幅にスリム化できるところです。誰でも解るのは、現行の年金システムを廃止することで年金機構(旧・社会保険庁)が要らなくなることです。生活保護の審査や給付などの実務を行っている行政システムも要らなくなります。他の給付の手間も省けます。ベーシック・インカムが導入されると、年金という概念がなくなるのですから、社会保険料の徴収もなくなります。もちろん、企業の厚生年金の企業負担分もなくなるので、法人税の減税よりも企業にとっては助かります。繰り返しますが、そのための役所、人員も必要なくなります。

国の財政が破綻するといわれるのに、そんなばらまきをやってどうするのか。とんでもない、という人も多いでしょう。もちろん、ベーシック・インカムに姿を変える年金のための資金はみんなで納めないといけません。それを税金一本にして納めるのです。ベーシック・インカムが導入されると、「ベーシック・インカム+働いて得た収入」の合算に課税されます。なんだ…。税金が増えるだけじゃないの、これまで以上に重税に苦しむことになるのか、とため息をつかないでください。これまでとは違い、税金負担以上のお金(ベーシック・インカム)が国から支給されているのです。そして、支給と負担が一本化されることで国民と国とのお金のやりとりがとても見えやすくなるので、 “税金の納め甲斐”も出てきます。 いや、それ以上にメリットがいっぱいあるのです。

現行の年金制度のような年寄りにだけ優しい制度ではなく、若者にも優しい制度であることも大きな魅力です。子供を生めばベーシック・インカムが入ってくるため、少子化(=日本民族の減少)にも歯止めが掛かるでしょう。大学に行くための学費にも使えます。日本の資源は人材、ということをもう一度思い出しましょう。働き始めても、「生活するため」のプレッシャーが減るので、夢を追い続ける人も増えて、そこから革新的なことが生まれるかもしれません。また、働いて生活費を賄えれば、 ベーシック・インカムを貯金しておいて起業しようという人間も出てくるでしょう。それに年金システムで起きている世代間格差がなくなるどころか、年金破綻という不安がなくなります。

働き方も変わります。自分の働き方を選択する幅が大きく拡がるからです。「不当な条件では働きたくない」と低賃金のところやブラック企業では働かない人も出てくるし、反対に「安くても、ベーシック・インカムにプラスされるのだから暮らせる」と低賃金でも働くということを選ぶ人も出てきます。つまり、これまでのように最低賃金を決める必要もなくなります。

なぜ製造業は海外に出て行くのでしょう。安い労働力を求めるからですね。研修生という名目で安い労働力を中国から呼び寄せる必要もなくなります。企業はなぜ、同じ日本人の中でワーキングプアを作り出してまで派遣社員で雇用調整しているのですか。それは正社員を雇うことで生じる負担が(年金の負担や簡単に首に出来ないため)大きかったからですね。でも、ベーシック・インカムが導入されると、もっと弾力的な労働市場が生まれます。導入と同時にある程度のセイフティーネットも完成しますから。

国や多くの自治体が、雇用対策のために公共事業をやり、雇用を作るために企業などに補助金を出すなどして、どれだけのお金をつぎ込んでいるのでしょう。結局、月給20万の労働を作り出すため、込み込みで考えると国が30万円のコストをかけている、というようなことになってませんか。これも国の富の流出です。しかし、ベーシック・インカムというセイフティーネットがあれば、次の仕事が見つかるまでの助成、そういった行政コストも必要なくなります。

働かない人間の存在を社会としてどうするか、という問題は常にありますが、いまや生活保護のための国の支出は年3兆円に迫っていて、最大限受給すると、最低賃金の職場で働いた人の月収を超えるという逆差別すら生んでいます。障害などでベーシック・インカムだけでやっていけない本当の弱者は別の方法で助けるということにすれば、そうした馬鹿げたことはなくなります。働かない人間はこれまでにも常に存在してきたし、今後も社会はそうした人に我慢しなければならないということは変わらないのですから、ここは「ならば」と視点を変える必要があります。

変なところでは、こんなメリットもあります。犯罪者が刑期を終えた後も生活が保障されるので更正する可能性が高まること。刑務所で一人あたりに掛かっている コストは年額300万円。犯罪者が減るのは社会にとっても、財政の面でもいいことですね。「食べるために」また犯罪を起こして入所しようとする人も減ってきて…。

さて、最大の問題は財源です。多くのエコノミストが試算しています。例えば、山崎元氏の試算ではこうなります。平成21年度の厚生労働省の社会保障給付費の総額は約99兆8500億円。先にも書きましたが、ここから「医療に必要な部分=医療費など」約30兆8400億円を引くと、ざっと69兆円。それを人口を1億2500万人として割ると、現在の給付総額で、月に一人4万6000円くらいのベーシック・インカムを確保できる計算です。これに行政システムのスリム化にいる節約分が浮いてきますから、「維新八策」が想定している月額5万円という数字も、決して机上の空論でないことが解ります。ちなみに月額の支給額が5万円だと75兆円で、あと6兆円が必要です。消費税は5%で10兆円の増収といわれているので、消費税10%が実現すれば、行政コスト削減の上積みがないとしてその「月額5万円の財源」を確保できるのです。

現在、諸費税を10%に上げる方向で世の中が動いていますが、それだけでは年金問題だけに限っても根本的な手を打てないと政府自体が言っています。というのも、現在の巨大な行政機構には複雑なシステムが並立し、集めたお金があちらこちらに分散して使われる中でなくなってしまうのです。そうした構造を変えるためにもベーシック・インカムは良い仕組みと思います。ただ、行政システムのスリム化という国民にとって良いことは、行政を担っている政治家や官僚や公務員にとっては自分たちの仕事や権限がなくなることを意味します。つまり、最大の障壁が彼らなので、導入への道のりは険しいのです。



2012年4月 4日 (水)

★…連載:年金の話[2]国が運営しているネズミ講


次回の「ニウスな夜」のため、橋下大阪市長率いる「大阪維新の会」のことを調べていると、面白いと思うことがたくさんあります。その多くが、戦後の日本で続いてきたシステムの大改革(彼らのいうグレート・リセット)についてなのですが、その中でも「年金の賦課(ふか)方式をやめる」という考え方には考えさせられます。年金自体、国会の議論の中で出ている話を聞いていると待ったなしです。店で最も聞かれる話でもあるので、年金の話も、少しずつテーマを分けて書いていきます。

まずは、グレート・リセットでも取り上げている「賦課方式」です。国際的にみて、年金制度には積立方式と賦課方式(ふかほうしき)とがあります。積立方式とは文字通り貯金と同じことで、「若い現役時代に払い込んだ金を積み立て、老後にそのお金を受け取る」やり方です。一方、賦課方式とは、「現役の人が払い込んだ金を現在の高齢者に支給していく」やり方です。で、日本はこの「賦課方式」で年金を運用しています。

ところがこの「賦課方式」がくせ者なのです。なぜかというと、大雑把にいうと「巨大なネズミ講」のような仕組みだからです。きょう年金の支払いに必要なお金、それを現役世代から集めたお金でやりくりしているのですから。もちろん、現実的には、毎月集めるお金だけでは足りないので、2004年の法改正で半分を税金で賄い、貯めてあった貯金も切り崩しながらやりくりしています。

となると、現役世代が納めた社会保険料は右から左に消えていくわけですから、自分が年金を貰う頃には、現役時代に自分が納めたお金は政府の金庫の中にはもう残っていません。では、自分の年金はどうなるか。それはまた後輩たちが負担してくれる、ということを続けていくということになっています。

つまり、この循環が続くためには、後の世代の頭数が増えていくというのが大前提です。ところが現実は? 少子化の中で、後輩の頭数が減っていきます。すると、集まってくるお金も減る…。当然、現役一人あたりの負担がドンドン重くなっていくのです。「肩車型から騎馬戦型に」という話をテレビなどで最近よく聞くと思いますが、今の時点で、現役3人で負担していた一人分の年金を、一人で全部負担しなくてはならなくなっている状況になっている、ということです。

後輩たちは、その負担にどこまで耐えられるでしょうか。やがて月給の半分が(1)税金、(2)社会保険料、(3)健康保険料などで国に納める(みんな、取られると感じてますが!)という時代になるとしたら…。しかも、払っているお金自体が自分の年金の原資ですらなく、他人にわたる年金のための負担となると…。自分の年金は誰が負担してくれるのか…。

厚生労働省が先日発表した数字では、2010年度の国民年金保険料の未納率が40%を超え、過去最悪を更新している状況です。もうみんな、年金を見限ってしまっているのです。「年金は要らないから保険料も払わない。死ぬまで自分で稼ぐ」という人が増えてきているのでしょう。ただ、それで終わらないところが、この「賦課方式」のつらいところです。

なぜか。そう、払わないといけない保険料は「自分の年金のためのお金ではなく、自分の親が貰っている年金の原資だから」です。保険料とは名ばかりで、実際はもう税金のようなものになってしまっているのです。そして、それが入ってこなくなったら、きょう支払う年金に事欠くようなことにもなりかねません。

国民年金の場合(厚生年金の基礎部分=1階部分もこれですから全員に関係しています)、保険料の積立金を切り崩していると書きましたが、2004年4月の衆議院厚生労働委員会で、
安倍晋三議員が国民年金について、現状のままだと積立金は2017年度に枯渇するという見通しを述べて衝撃を呼びました。それから10年ほどになりますが、年金問題は本当に待ったなしです。

2012年3月30日 (金)

★…連載:年金の話[1]厚生年金と国民年金の微妙な関係


 実は、店でいちばん聞かれるのは、「年金」の話です。月に1度の「ニウスな夜」で取り上げて解説して欲しいという人もいますが、一夜で解説できるかどうか自分でも自信が持てないほどの大きなテーマ。しかも、最近も「AIJの破綻」、「厚生年金の適用拡大」…。年金をめぐるニュースが続いています。そんな中で一つ、とても気になることがありました。そう、「AIJの破綻」のことです。

 AIJの破綻について、企業年金の運用を任されていた投資顧問会社の破綻ですから、そこにお金を預けていない人は、「まず自分には関係ない」と思ったはずです。企業年金というのは、基礎年金(=1階部分)、厚生年金(=2階部分)という「公的年金」 に加えて支給される、いわゆる“3階部分”。集まっていたお金はその原資です。なので預けていた人にとっても、1、2階部分に直接的な被害はないはずです。

 ところが、なのです。大きな落とし穴がありました。このAIJに集まっていたお金は、小さな基金から運用を任されていたお金なのですが、そうした小さい基金の多くが「厚生年金の代行部分」の運用も任せていたというのです。厚生年金の運用は本来は厚生労働省が運用するべきもの。ところが、現状は企業が厚生労働所に変わって運用することができることが認められおり、それを「厚生年金の代行運用」と呼んで常態化しています。つまり、AIJにお金の運用を任せていた基金の多くは、AIJの破綻で2階部分にも被害が出るのです。

 厚生労働省の国会答弁によると、AIJが溶かしてしまった(なくしてしまった)といわれる約2000億円が回収不能になると、お金を預けていた21の基金で「厚生年金の代行運用」部分に被害が出るという話です。そして、厚生労働省はその損出を、厚生年金全体で補填すると言っています。となると…。これは企業の年金運用の失敗が、厚生年金の加入者全員に均等に降りかかってくる、というわけです。

 昨年度末で、企業や団体によって作られている年金基金は全国に595。そのうち213の基金では運用の失敗で、3階部分だけでなく、2階部分にも損害が出ていると言われています。本来ならば、各基金の厚生年金の原資に損害が出れば、企業や団体がそれを補填しなくてはいけないはず。ところが、基金の多くは、それだけの体力のない企業や団体によって設立されていることが多く、それを補填できないままです。

 では、もう解散したら、という声も聞こえてきそうですが、現状では、その損害を補填しないと解散もできません。しかし、企業や団体側に補填する体力はない。進むも地獄、退くも地獄です。厚生労働省の調べでは、595の基金のうち、補填なく今すぐ解散できるところはわずか29。また、本来なら積み上がっているはずのお金は24兆円近いはずなのですが、現状では18兆円弱しかありません。言わずもがなですが、最終的にはその損出もやがて、厚生年金全体で補填するということになってくるのです。

 AIJの破綻によって、パンドラの箱が開けられてしまったという感じでしょうか。現状をこのまま放置しておくと大変なことになると教えてくれています。そして、運用会社の破綻は回り回って、結局は厚生年金全体に被害を及ぼすということ。厚生年金の加入者にとっては、決して他人事ではないのです。


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