迷走原発

2014年1月26日 (日)

★…プルトニウム所有の記事に潜む狙い

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共同通信が配信した以下の記事が、きょう27日の朝刊各紙に載りました。福井新聞では一面トップ(その日最も重要なニュース)でした。

核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが26日、分かった。複数の日米両政府関係者が明らかにした。このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器40~50発分程度に相当する。日本側では返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から返還の可能性を探る協議が本格化している。

この記事がなぜ、この時期に流れたのか…。普通に考えれば、たまたま情報を手にした記者が複数の関係者に「裏を取って」そのまま書いたという話です。それがきょうはちょっと気になったのです。

まずパッと頭に浮かんだのは、東京都知事選のこの時期にこのニュースを流すことで、細川氏の立候補で争点として浮上しかけた「脱原発」の動きへの牽制です。この記事を最後まで読んでいく中で、読者の頭の中に浮かび上がってくるのは「原発がなくなる→日本はプルトニウムを持てなくなる→将来的な核兵器は不可能になる」という流れです。人間そこに考えが行き当たると、核武装の「可能性」を捨てるわけにもなあ………「脱原発」ちょっと待てよ………となって、細川氏、宇都宮氏への投票を考え直す可能性が出てきますよね。その効果を狙ってこの時期に流されたのか、という考えが頭を過ぎりました。

というのも、日本のプルトニウムの所有とその理由、背景については(潜在的核保有国という立場については)、知っている人はよく解っている話でもあるからです。なので、いま発生した記事としては書くことが出来ません。記者として、その話を改めて書くとなると、それを書くきっかけになる新しい動きが必要ですが、そこに日米で新しい動きが出てきた………。そうなると、それをテコに改めて記事を書くことができるわけです。

しかし、共同通信自身は、どちらかといえば、これまで政府の原発政策に対して厳しい姿勢を取ってきた。そこを考えると、まったく反対の効果を狙って記事を配信した可能性の方が高いですね。それは………、この交渉の存在を明かすことで「米国が日本を信用していない」という印象付けができることでしょう。安倍首相の靖国参拝に対する米国の「失望した」という最初のリアクションの後にこういう記事が続けば、国民の間に「いまの安倍政権大丈夫か?」、「世界は疑いの目で日本を見ている」、「米国は日本の核武装を警戒していて、それをさせないためにプルトニウムを早く引き上げようとしている」、「安倍政権は危ないことをしようとしているのではないか」という空気が生まれるからです。

たった一つの記事からまったく正反対の味方が出来る………。新聞に何気に載っている記事をそういう目で見ると、新聞を読むのがもっと面白くなりますよ。

2014年1月23日 (木)

★…細川さん、どこまで本気ですか?

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東京都知事選挙が告示されました。政府与党が推す舛添要一(ますぞえ・よういち)元・厚生労働大臣、突然の「原発ゼロ発言」で世間を驚かせた小泉純一郎(こいずみ・じゅんいちろう)元首相とも連携する細川護煕(ほそかわ・もりひろ)、そこに右から田母神俊雄(たもがみ・としお)元・航空自衛隊幕僚長、左から宇都宮健児(うつのみや・けんじ))前・日弁連会長という党派性の強い候補者が出馬、さらにIT起業家の家入一真氏まで参戦して過去最高の盛り上がりになりそうです。ところが、細川さん、きのうちょっとやらかしました。核廃棄物の受け入れについて、記者会見で「東京での負担」について言及したのです。この発言が広まるにつれ、「東京の脱原発派」からの票は減るでしょう。

なぜか…。「東京の脱原発派」の中には「脱原発、だけどそんな危険なものは自分たちの近くに持ってこないで」という人たちも多いからです。「脱原発」という一つのテーマでうねりを起こそうとした目論見は破綻しかねませんね。よく考えてみてください、廃棄物の受け入れなんて、核燃料の保管に比べれば、どうということのない話なのです。危ないのは核燃料。廃棄物を東京や大阪が引き取っても、それがストックされている原発の危険性は同じ。稼働していようがいまいが、核燃料プールから水が抜ければお終いという状況は何も変わらないのです。電力消費地の責任を認め、廃棄物の受け入れに触れる……開明的に響きます。しかし、危険性を立地県に押しつけていることには変わりはない。ならば、発言しなくても……。本質が解っていないと本当の「脱原発派」からは問題の理解度を疑われ、雰囲気の「東京の脱原発派」にも逃げられる結果になりかねません。

もちろん、「脱原発」は、最後は廃棄物の最終保管をどうするか、それに尽きます。しかし、話が廃棄物の保管にいきなり飛ぶのではなく、そこまでの課程をどうするか、そっちの方が喫緊の課題です。廃棄物も何も、廃棄物になる前の核燃料は福島はじめ、全国50カ所の原発に散らばっています。現在検討されている乾式、湿式どちらにせよ、それなりに安全に保管される廃棄物よりも、水が抜けたら周りにとんでもない放射能を撒き散らかす核燃料をどうするか、その話の方が先でしょう。50カ所に散らばっているわけですから、テロに遭う可能性も高い。中国や北朝鮮からの核武装攻撃うんぬんの前にそれが暴走すれば、その時点で日本はアウトです。しかし、細川さんの現時点の話からはそれが見えません。宇都宮さんの話からもです。

福島の惨状を見るにつけ、人間にはまだ核を完全にコントロール出来ないことが解ります。シェールガスやメタンハイドレードといった化石燃料がこれからも使えることが解っている中で、埋蔵量に限りがあるウランと原子力発電に頼る必要もありません。ですから、「脱原発」もいいと思います。原発推進派には「それではCO2が…」という人がいますが、米国や中国が入っていない京都議定書なんかで国際的な「CO2」管理が出来るはずもなく、日本だけがそれに縛られて「脱原発」出来ないというのはためにする話でしょう。

実際、電気も足りています。ただし、そのために原油や天然ガスなどの化石燃料を買いまくっていて、膨大な金が海外に出ている。そうした燃料購入コストの上昇がベースにあり、そこに「脱原発」で「お金が出ていくだけの作業」である廃炉作業が加われば、すべての電力会社が持たないでしょう。東京電力はともかく、他の電力会社を潰さないためには、人件費の削減では追いつかず、電気料を上げるしかありません。「脱原発」に賛成の人たちがどのくらいの負担増に我慢出来るか、それも鍵になりますね。なので、「脱原発」を語る時はそういったことから初めてほしいのです。

加えて、経済的な理由だけではなく、「脱原発」は日本が「潜在的な核保有国=いざとなれば核武装出来る国」でなくなることを意味します。米国の中国政策によって、対中国問題でいずれ米国が日本に譲歩を求めてくるような時代が訪れることが予想される中、それをどう考えるか……。日本のプルトニウム所有は特別に国際的に認められていますが、それもこれも「核燃料サイクル」の完成が前提。実際に完成していませんが、「核燃サイクルはいまだ開発中」と装うことで逃げているのが実情です。「もんじゅ」があれだけ故障続きでも、予算が投じられるのを不思議に思いませんか? それもこれも、「核燃料サイクル」の放棄を正式に表明すれば、プルトニウムなどの所有が国際的に認められなくなるからですね。そして、そこにいわゆる「原発利権」が絡む。その複雑な絡み合いをどう具体的に解すのか……。

細川さん、宇都宮さん、そして舛添さんにも、さらにいえば、安倍首相にも、みんなそこが聞きたいのです。いまのままでは、核燃料が全国各地の原発に散らばっていて、あすまた、「稼働していない原発」を地震が襲い、その核燃料が事故を起こす可能性がある。政府が再稼働をめざすにしても、どれから動かすかばかり考えていないで、その検討に時間を喰っている間に再稼働しない原発から核燃料を抜いて1カ所に集めるという作業も同時に急ぐべきでしょう。ただし、その時、使用済み核燃料を保管する六ヶ所村にある再処理施設のような中間処理施設をどこに作るのか……。六ヶ所村はもう満杯です。廃棄物ではなく、核燃料の受け入れに、細川さんは何というでしょう。この問題もまた沖縄の基地問題と同じようなことになりはしないか……。「脱原発」は叫ぶけれど、「核燃料の地元での保管はまっぴら」という人たちにそれを聞いてみたいのです。




2014年1月19日 (日)

★…聞いて見たい細川氏の《核燃料ゼロ》

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細川護煕(ほそかわ・もりひろ)元首相が14日、都知事選出場を表明しました。同日、桝添要一(ますぞえ・よういち)元・厚生労働大臣も出馬表明、今回の都知事選はかつてない大物同時の激突です。細川元首相は「脱原発」を旗印にした出馬で、突然の「原発ゼロ発言」で世間を驚かせた小泉純一郎(こいずみ・じゅんいちろう)元首相とも連携する上、右が田母神俊雄(たもがみ・としお)元・航空自衛隊幕僚長、左が宇都宮健児(うつのみや・けんじ))前・日弁連会長という、党派性の強い候補者が顔を揃えました。戦後の都知事選でこれだけ選択肢がハッキリ見える選挙は初めて。これまでのような“銀行レース”とは違い、過去最高の盛り上がりになりそうです。

ところがきのう18日、東京青年会議所(JC)主催の公開討論会が中止になりました。準備が整っていないと細川氏が降りたことで他の候補者も辞退してしまったからと説明されていますが、こういうことでは政策論議は一向に深まりませんね。これだけの候補者が揃いながらなんとも残念な状況です。政府は国会閉会中に行う予定だった「エネルギー基本計画の閣議決定」を2月以降に先送りすることを決めましたが、細川氏と小泉氏が「反原発」を叫ぶ以上、原発の是非も争点として確実に浮上するでしょう。しかし、細川氏の「反原発」の姿が見えません。公約の取りまとめも遅れているという話ですが、ひょっとすると、具体的な政策の中身で勝負しようというのではなく、「反原発」というムードだけに乗って23日の告示から2月9日の投票まで選挙期間を一気に渡りきろうという作戦なのかもしれません。

細川氏の「脱原発」、どんな姿なのでしょう。いま叫ばれている《稼働ゼロ》ではなく、その後どうするのか、そこをしっかりと聞きたいものです。「脱原発」の取り敢えずの入口に《稼働ゼロ》があるのは解りますが、それだけでは、我々が置かれている危険度は何も減らないからです。いつも書いているのですが、危ないのは「原発が稼働しているから」ではなく、「核燃料がそこにあるから」。単なる《稼働ゼロ》は《核燃料ゼロ》を意味しませんね、「核燃料がそこに置かれている」状況は何も変わらないというわけです。福井に突き付けられている危険性もそういうことです。なので、細川元首相、小泉元首相ら「脱原発」を叫ぶ人たちにぜひとも《核燃料ゼロ》までの出口戦略を聞かせてもらいたいのです。








2012年9月16日 (日)

★…きょうのニュース解説 [ 9月15日 ] 原発ゼロは単なる努力目標!?


 14日に明らかになったばかりの政府のエネルギーに関する新戦略が、早くもブレを見せています。枝野幸男・経済産業相が15日、訪問先の青森県で三村申吾知事らに対して、14日の時点では不明確だった着工中の原発3基について「国が設置許可を出したのは重たい事実。変更するつもりはない」と述べ、建設を容認しました。着工済みのものは新増設とは見なさないという判断を示したのは初めてです。

 3つの原発とは、東日本大震災などの影響で工事が中断していた中国電力の島根原発3号機(松江市)、電源開発の大間原発(青森県大間町)、東京電力の東通原発1号機(青森県東通村)。政府の新戦略は、「30年代に原発ゼロ」という目標を掲げ、「原発の運転期間を40年とするルールを厳格に適用」、「原発を新増設しない」を原則としました。しかし、3つの原発は「40年ルール」で50年代まで稼働できます。これでは目標との整合性がとれません。

 なんで早くもこんなお粗末なことになったのか…。それは使用済み核燃料を引き受けている青森県側が、新戦略の「原発ゼロ」目標に強く反発、使用済み核燃料を元の発電所に送り返すぞ、と態度を硬化させたからです。原発ゼロ→青森で再処理した燃料の使い道がなくなる→処理施設は稼働停止で地元経済・雇用も崩壊→今運び込まれている使用済み核燃料がずっと青森に置かれることになる…青森側は将来そうなることを怖れています。

 全国の原発で保管されている使用済み核燃料は約14000トン。どこも満杯に近い状況です。一方、六ケ所村に置かれている使用済み核燃料は2900トン。それらが原発に戻されると、保管プールが満杯となって運転停止を余儀なくされる原発が続出することになります。そこで経産相はこの日、原発の建設容認に踏み込んで青森県側を宥めた上、使用済み核燃料からウランやプルトニウムを回収して再利用する「核燃料サイクル」についても「従来の政策に何らかの変更をしたものではない」と説明。六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場やMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料工場、むつ市の中間貯蔵施設についても建設推進を改めて強調、青森側に理解を求めました。

 しかし、青森側の反応はもう一つでした。中間貯蔵施設を建設中のむつ市の宮下順一郎市長は「まだ納得、理解ができない」と、使用済み核燃料の搬入の可否の判断を保留。また、東通村の越善靖夫村長は「プロセスや課題への対応が非常にあいまい。原発ゼロと再処理継続という方針に矛盾を感じざるを得ない」。大間町の金澤満春町長も、サイクル維持と「原発ゼロ」との整合性については「あいまいな部分について、きちっとした発言がなかった」と述べています。

 整合性について経産相は「大変困難な課題。原発ゼロが可能になるよう最大限努力する」と繰り返したと報じられていますが、きょう朝のテレビの討論番組での野田首相の発言も、なんとも歯切れの悪いものでした。「30年の時点で」というルールが、「状況によって」というあいまいな理由で「40年の時点で」ということになるかも、と感じました。

 政府のブレもさることながら、実現に向けた具体策自体がまた不透明。本当に「原発ゼロ」で大丈夫なのか、それが見えてきません。方針では、再生可能エネルギーの(太陽光発電などですね)発電量を2010年の3倍にするとしていますが、現在の再生可能エネルギー推進策にも問題がたくさんあります。

 例えば、太陽光発電の買い取り価格です。この7月、税込で1キロワット時あたり42円と決まりました。この決定を受け、大手企業が続々とこのマーケットに参入を始めました。大規模な“発電所”の建設を行っているところもあります。なぜか。買い取り価格が42円を下回らない間は確実に儲かるという見込みがあるからです。将来的には買い取り価格が下がる可能性もありますが、それまでに償却しちゃえ、というわけですね。

 ところが、それだけ電力会社が仕入れる電気代が上がるのですから、それらは我々の毎月の電気代に上乗せされるのです。つまり、彼らの儲けを、我々が広く薄く負担しているという構図です。これでは大規模な投資が出来る一部の人たちは確実に儲かる一方で、それが出来ないほとんどの人は負担が増えるだけですね。太陽光発電の普及は大事ですが、こういう機会不平等な施策はどうかと思います。

 太陽光発電の場合は、各家庭を軸にすべきでした。極端な政策ですが、自宅に付けたい人には国がその費用を負担してソーラーシステムを付けるといった方法を採れば、建築業界に対する大きな景気対策になると同時に、国民のほとんどが太陽光発電の恩恵に浴すことになったでしょう。その費用は設置後の一定期間、売電収入を国にもらう形で回収すれば良いのです。そして、それらが生み出すことになる電力量は…。電力不足に本当に怯えるなら、そういうことを仕掛けても良いのではないでしょうか。

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★…きょうのニュース解説 [ 9月14日 ] 新たなエネルギー戦略に議論百出

 政府が14日、新しいエネルギー戦略を決めました。「2030年代に原発稼働ゼロを可能とする」と、原発ゼロ目標を初めて具体的に政府方針に明記しました。原発ゼロへの道のりは「原子炉の運転期間を40年に制限、それを超える原発から順次廃炉にしていく」という考え方で、そのルールに従うと、県内の原発は数年で半減、21年後にはゼロになる計算です。この政策の大転換は、“原発で喰ってきた”福井県への影響は甚大です。

 福井新聞の13日の紙面には「福井県、核燃料税収が9割減少 11年度、原発停止で」という記事が載っていました。県内にある原発13基の運転停止が続いたことから、原発に装荷した燃料の価格などに応じ電力事業者に課税する県税「核燃料税」収入が、2011年度は前年度比で86%減少、74億円から10億円に減ったというニュースです。県に限ってみても、原発関連の収入がいかに大きいか、この記事で一目瞭然です。

 なので15日の福井新聞は大きな紙面を割き、「原発ゼロ」という方針に対する地元の声をたくさん載せています。原発関連収入に頼ってきた立地自治体の怒りと動揺ぶりに始まり、経済や雇用が打撃を受ける地元の人たちの悲鳴…。記事によれば、関西電力が定期検査やメンテナンス業務を通じて外部発注する金額は1500億円に上るとあります。毎年どこかの原発で定期検査があるため、3000人規模の作業員が出入りし、町を潤してきたとあります。

 「どうしてくれるんだ俺たちの生活を!」の大合唱…。しかし、そうした叫びは今、逆効果になりかねません。声を上げれば上げるほど、「自分たちの経済ありきで原発を動かせと言うのか…」と、独りよがりに思われてしまう…そう言った方が正確かもしれません。というのも、福島の事故で国民は、原発事故が立地自治体の犠牲だけで済まないことを目の当たりにしたからです。立地自治体の人が危険を背負い、「原発が生み出す電力の恩恵に浴してきた人間は安全」という区別が出来なくなったからです。

 そういう空気の中、地元経済が崩壊してしまうと叫んでも「もう充分おいしい思いをしてきたじゃないか」と言われるのがオチです。米軍基地を押しつけている沖縄に対する本土の人たちの視線…、それと同じものが福井県にも注がれているということですね。人間なんて実に自分勝手なもの。こと沖縄に関して言えば、我々も同罪でしょう。

 ならば、ここは開き直って、原発ゼロとなっても「原発政策の変更で立地自治体が割を食わない」よう、立地自治体全体でスクラムを組んで政府を突き上げないといけません。その意味では、福井県が昨年11月に全国に先駆けて制定した新しい条例は、それを先取りした動きでした。停止中の原発でも発電能力に基づいて課税対象とする、という条例です。実際、この条例が施行されたことで12年度当初予算案に計上された核燃料税収は61億円にもなります。

 今後はこの流れをより強化、深化させる必要があります。その時、ポイントになるのは「核の危険性への課税」という視点でしょう。危険度から言えば、原子炉内の核燃料も、プールに保管されている使用済み核燃料も危険性は何ら変わりません(核燃料の危険性については、福島の事故で都会の人間にも浸透しています)。立地自治他を潤してきた「電源三法」は原発立地・稼働を前提としていましたが、新たに「核燃料の存在」を対象にした法律を成立させることです。そうなれば、原発ゼロでも、「核燃料を預かっている以上」これまでのような収入は担保されます。

 一方、地元での雇用ですが、実はこれは廃炉作業が始まれば、いくつかの原発で同時多発的に通年的な作業が30年以上も続くのですから、これまで以上に大きな需要を生み出していくと見込まれています。事実、重電メーカーで原発関連の仕事をしている知人たちは、政府の方針がはっきりして実作業が始まれば「廃炉ビジネスで50年は食える!」と言ってます。

 大きく捉えた歴史的な見方をすれば、50年かけて作ってきたものをまた50年かけて壊していくという作業になるわけですが、彼らに言わせれると、廃炉ビジネスを通じて得ることが出来る知見も(放射能と設備や機器の劣化などへの分析といったこと)、原発開発にはとても貴重な経験になるそうです。どうでしょう、政治家たちがこうしたことをきちんと組み立てることが出来れば、立地自治体の不安は解消、むしろ原発ゼロに向けて積極的に動き出す可能性すらある、そのことを今一度考えてもらいたいものです。

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2012年6月 6日 (水)

★…[原発の話:連載4] なぜ大飯なのか


 大飯原発の再稼働をめぐり、原発事故収束対策プロジェクトチームの荒井座長がきのう5日、野田首相に「再稼働に一層慎重である」ことを求め、民主党の国会議員117名分の反対署名を提出しました。署名には小沢一郎元代表や鳩山由紀夫元首相も名を連ね、政局絡みとみる向きもありますが、117名といえば民主党議員の約3分の1。首相にとってはまた一つ悩みの種が増えた格好です。5日に行われた原発に関する党の合同会議でも、出席議員から「事故の際の住民の避難計画ができていない」など慎重意見が相次ぎ、民主党自体が再稼働をめぐってぐらついています。

 そもそも、再稼働の大飯原発に白羽が立ったのはなぜでしょう。関係者の話では、政府が再稼働の対象としてピックアップしたのは(1)巨大津波の恐れがある太平洋側ではなく(2)格納容器の容量が大きい加圧水型軽水炉(3)運転年数が比較的少ない、そういった条件をクリアーしたもの、だったそうです。(2)については、制御棒を上から入れるスタイルなので底が抜ける可能性が低いという理由からです。福島第一のような沸騰水型軽水炉は制御棒を下から出し入れするスタイルなので、地震などで機械的に壊れる可能性が高いという判断でしょう。

 この条件をクリアーしたのが、福井県にある関西電力の大飯3、4号機、高浜3、4号機、愛媛県にある四国電力の伊方3号機、佐賀県の九州電力玄海3、4号機、鹿児島県の川内1、2号機の9基。中でも、大飯と並んでストレステストをクリアーしている伊方3号機は(1)1994年の運転開始と比較的新しい(2)昨年の12月に免震施設が(福島第一の影像などによく出てくる前線基地になっている建物ですね)運用を開始(3)内海に(瀬戸内海に)面している唯一の原発で津波の危険性が少ない、などの理由で最有力候補だったのですが、ここで関西電力の電力需給が逼迫するという問題が表面化してきたことから大飯が先になったと言われています。

 大飯3、4号機の特徴としては(1)いずれも出力100万キロワットを超える大型(2)運転開始から約20年と比較的新しく、2008年に3号機の配管に損傷が見つかったというトラブルが起きたくらい(3)ともに格納容器はプレストレストコンクリート(コンクリートの中に強い張力を掛けた鋼の線を通し、コンクリートに縮もう縮もうとする力が働くようになったている)を使っていて頑強(4)港湾は若狭湾の開口部に対して90度ほど傾いて開口し、開口部の先に松ヶ崎の付きだし部があることなどから津波が押し寄せる確率が低い(5)原子炉建屋が角型ではなく円筒形で波力をまともに受けない、といったことがポイントとして上がっています。

 加えて、地震についても比較的危険度が少ないと分析されています。文部科学省に設置されている地震調査研究推進本部が作成する「地震ハザードステーション」で向こう30年を調べると、大飯エリアは震度6弱以上の地震発生確率は、首都圏・東海・関西よりも低いことが分かります。また、地盤の揺れやすさについても、内閣府の「地震のゆれやすさ全国マップ」を見ると、地震震度予想や地盤の安定性からいえば危険度の低いエリアに属しています。

 もちろん、まったく懸念がないというわけではありません。大飯原発周辺には、陸側の「熊川断層」と、海側の若狭湾内に延びる2つの活断層があり、3断層の全長は約63キロと見込まれているからです。関西電力はストレステストの評価時点では、海側の2つの断層(全長約35キロ)の連動についてはその可能性に言及していますが、3つの断層の連動は想定していません。4日には京都の環境団体などが西川知事と県の原子力安全専門委員に対して、敷地内の地盤の破砕帯が活断層である可能性があるとして、調査の実施と評価が終わるまで再稼働しないよう求めた要望書を提出しています。こうした指摘に対して、関西電力は経済産業省の原子力安全保安院に「仮に3断層が連動したとしても、基準地震動の1.8倍は超えない」と報告していますが、保安院も「計算の根拠が不明確だ」などとして、詳細な評価を再度行うよう求めています。

 国会ではようやく、原子力規制庁について与野党の間で修正協議が始まり、当初の民主党案よりも中立性が高い「3条委員会」となる方向性が見えてきました。細野原発担当相は、新しい組織の元で今一度審査基準を見直し、大飯原発が再稼働したとしても、それに抵触する場合は稼働をやめるとまで言っていますが、新しく誕生する規制庁には、安全のためのこういう小さな指摘に対して真摯に答えてほしいものです。政府の原発政策に対する信用回復も、その規制庁の姿勢次第です。


2012年6月 5日 (火)

★…[原発の話:連載3] 無策の末の追い込まれての再稼働


 大飯原発3、4号機の再稼働が目前に迫っています。4日には細野原発事故担当相が福井県庁を訪ねて西川知事と会談しました。再稼働よりも保管されている核燃料の方が心配な私にとっては稼働に反対という立場ではありませんが、そんな私から見ても、今回の再稼働をめぐる政府の動きは「拙速」としか言いようがありません。一方、政府の地元自治体への説得工作、それに答える自治側の対応にしても、結果が見えている単なるアリバイ作りにしか見えません。

 再稼働までの政府の動きはこうでした。
(1)電力会社がストレステストを実施、一次評価を経済産業省の原子力安全保安院に提出(2)原子力安全保安院が一次評価の妥当性を審査、内閣府の原子力安全委員会の審査を求める(3)原子力安全委員会が外部有識者を加えた検討会を開いて一次評価を審査(4)妥当であれば、政府が地元自治体へ、稼働への協力を要請

 しかし、まともな人からみたらこれでオーケーを出そうとしている政府の対応に疑問を感じないはずがありません。まずストレステストへの信頼度です。「ストレステストの一次評価をクリアーすることが再稼働の条件」は菅首相が突然言い出した話ですが、政府としては今さらそれを取り下げるわけにもいかず、安全保安院もそれに従って淡々と事務を進めているだけの話です。しかも、設計の想定より厳しい条件を課してもそのシステムの安全が保てるかどうかを確認するための机上テストで、使うデータも計算の基準も基本的に電力会社が用意、それを自ら評価するという代物です。つまり、今後こんな工事をしますという計画を審査しているだけです。免震重要棟を装備しているわけでもないし、防潮堤が強化されたわけでもなく、ベント出来るようにするための改造も「これから」なのです。これでは実効性の担保にも何にもなりませんね。

 しかも2月の時点で、国会事故調査委員会のヒアリングに呼ばれていた原子力安全委員会の班目春樹委員長が「(一次評価は)再稼働とは関係ない。二次評価まで終わらなければ、安全性の判断はできない。一次評価は安全委が要求している(安全性の)レベルに達していない」と発言。自ら当てにならないと言っているわけですが、その二次評価は再稼働の条件には未だに入っていません。

 一方、再稼働の必要性についても説得力がありません。政府は枝野経産相が旗振り役になって、関電管内の電力需給見通しについて、電力の供給力の積み上げを勘案しても一昨年並みの猛暑下での最大2割程度の電力不足になる可能性があるとずっと指摘。その一方で5月10日には、夏の電力状況を有識者らが調べる政府の需給検証委員会(委員長・石田勝之副内閣相)が、再稼働が実現した場合、8月の関西電力管内の最大需要にほぼ見合う電力供給が可能との試算を公表しました。しかし、根拠になる関西電力の数字がもう一つ信憑性に乏しいのだから困ります。

 というのも、関西電力の見積もりの甘さがあります。例えば、この冬の電力供給について2月が最も厳しいと見積もっていました。関西電力のサイトにはこうありました。「供給力2412万キロワット、需要2665万キロワット、差し引き250万キロワット以上の電力不足」。ところが、関西電力管内の平均気温が例年よりも低かった(寒かった)にも関わらず、需要のピークは2月2日の2578万キロワットで予想を下回りました。一方、最大供給力は2412万キロワットと見積もっていましたが、2月17日には、他の電力会社からの融通や揚水発電、自家発電などで2884万キロワットを生み出しています。こうなると、今年夏の供給力2574万キロワットという見積もりにも?です。

 そんなこんなで進んできた政府の再稼働への動きは、国民には茶番と映っているようです。マスコミ各社の世論調査の数字にそれが明らかです。再稼働に最も理解のある人が多い産経新聞社+FNNの調査ですら、「政府や電力会社が示す電力需給の見通しについては信頼できない」という数字がこれなのです。

<朝日新聞社……5月19〜20日実施の全国定例世論調査>
・原発に対する政府の安全対策を「信頼している」は「大いに」+「ある程度」で21%、「信頼していない」が「あまり」+「まったく」78%
・再稼働については、反対54%で、賛成29%

<毎日新聞……5月5〜6日実施の全国世論調査>
・再稼働について「反対」63%、「賛成」31%
・今夏に電気の使用が制限された場合、「我慢できる」74%、
・政府の新たな判断基準について「信用しない」77%、「信用する」16%
・電力使用制限「我慢できる」で、最も電力需給が逼迫すると予想される近畿圏61%、関東圏で79%、他のすべての地域で7割超

<産経新聞社+FNN……5月19〜20日実施した合同世論調査>
・「電力不足なら安全が確認された原発は再稼働させてもよいと思う」51・5%、「思わない」43・6%
・政府や電力会社が示す電力需給の見通しについては「信頼できない」75・7%

 結局のところ、東日本大震災後の電力不足対策に無策だった政府が、いよいよ打つ手がなくなって安易な再稼働に戻ってきたようなもので、見事な無責任ぶりです。最後には容認に傾きましたが、まだ橋下大阪市長の「危険性がないわけではないけれども、電気が足りなくなる可能性があるので、国益を重視して動かすと言った方がいい」という言い分の方が筋が通っています。国民に正直な分だけましです。

 もし、本当に原発が必要というのであれば、震災直後から独立性の高い原子力規制庁を設立、新しい安全基準を作るべきでした。衆議院の厚生労働委員会で「何をしているのですか」と政府を一括した東京大学の児玉龍彦教授が言うように、原子力安全委員会は今も事故を防げなかったメンバーたちで運営されています。

 三陸沿岸の津波による危険性はずっと前から指摘されていましたし、活断層の危険性や原発の安全性をもっと高めるための提言もたくさん出されていました。しかし、彼らは見て見ぬふりしてきました。そして、それらに真摯に耳を傾けず、対策に真面目に取り組まなかった電力会社の奢り。それらがあって、今の福島第一なのです。そういう体質が変わっていないのに、彼らが言うことを信用しろと言われても…。少なくとも、こうした体質を一新していれば、再稼働に賛成する人もかなりいると思うのです。




2012年6月 3日 (日)

★…[原発の話:連載2] 燃料プールを疑え!


 前回は原子炉の中で使われている核燃料も、プールで冷やしている使用済み核燃料も危険度は同じ、プールの方が密閉されていないため事が起きれば大変、という話を書きました。そして、このプールはどの原発にもあるわけですから、稼働していようが停止していようが、もしどこかのプールの冷却システムが何かの理由で止まると、福島4号機と同じような事態に陥る可能性があるのです。では現在、原発にはどれくらいの使用済み核燃料が保管されているのでしょう。電気事業連合会によると、昨年9月末の時点で、全国の商業用原発54基で合計1万4千トンにもなります。

 原発ごとに数字を見てみましょう。北海道・泊(380t)青森・東通(100t)宮城・女川(420t)福島・福島第一(1960t)福島・福島第二原発(1120t)新潟・柏崎刈羽(2300t)茨城・東海第二(370t)石川・志賀(150t)静岡・浜岡(1140t)島根・島根(390t)愛媛・伊方(590t)佐賀・玄海(830t)鹿児島・川内(870t)。そして、福井は、敦賀(580t)美浜(390t)大飯(1400t)高浜(1180t)といった具合です。ではなぜ、そんな危ない物をこんなに保管しているのか。答えは簡単で、持って行き場がないのです。

 日本の原発政策では、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、それをウランに混ぜて「MOX燃料」を作り、それをもう一回発電に使うということになっています。それが「プルサーマル発電」で、その循環がいわゆる「核燃料サイクルの環」なのです。ところが…。青森の六ヶ所村に建設された再処理工場は操業が延期されっぱなし。また、「プルサーマル発電」の延長線上には、発電すると使ったプルトニウムの量以上の燃料を生み出す高速増殖炉(ご存じ、福井にある「もんじゅ」です)」も開発されたのですが、こちらも事故ばかりで、わずか数か月しか運転できないまま放置されています。つまり、この45年間に10兆円を投じても(その原資は税金と電気料金から出ているのですが)未だ「核燃料サイクルの環」を作ることが出来ていないのです。

 そこで取り敢えず、使用済み燃料を六ヶ所村の再処理工場に運び込んでいるのですが、その限界は3千トン。そこにもう2千860トンも預かっています。それで「これ以上はご勘弁」と、原発に留め置いてもらっているわけですが、こちらも54基で保管できる量は2万630トンで、あと6千400トン分で満杯です。しかも原発が今までのようなペースで動いた場合、毎年1000トンの使用済み燃料が新たに生まれてくるのです。まさに「糞詰まり」状況。だから、原発は「トイレのないマンション」と言われるのです。

 ところで、大飯原発の再稼働問題がいよいよ現実味を帯びてきているのですが、私から見ると、再稼働しようがしまいが危険性はそれほど変わらない、と考えています。というのも、それによって使用済み核燃料を冷やしている脆弱な作りのプールの危険性は増えもしないし、減りもしないからです。つまり、危険性を判断する基準を、運転停止か再稼働においているのではなく、核燃料がそこにあるかないかにおいているからです。再稼働をめぐって「脱原発」、「卒原発」と言葉は踊りますが、本当に安全性を高めるためには54カ所に分散している危険物を一刻も早く集め、堅牢な中間貯蔵施設で一括管理することでしょう。

 一方、原発再稼働を叫んでいる人が意外に気付いていない盲点があります。それは、使用済み核燃料を原子炉から取り出せないと(新しい燃料と交換しないと)、発電自体が出来ないことです。つまり、このままでは放っておいても、あと数年で原発の保管プールも満杯、六ヶ所村の再処理工場も満杯となり、原発を動かしたくても動かせなくなってしまうことです。原発を今までのように動かすなら動かすで、六ヶ所村以外にも再処理施設を作り、それが出来ないとしても、せめて使用済み核燃料を集中保管する堅牢な中間貯蔵施設を早く作らないといけません。つまり、どっちの道を選ぶにせよ、中間貯蔵施設の建設を急ぎぐべきという結論になります。

 そうなると、福島の人には申し訳ないのですが、ここは心を鬼にして、「福島第一発電所の周辺に集める」というのが、すべての面で最もリーズナブルで現実的な方法なのではないか、と思います。具体的には、最も汚染がひどい福島第一の周辺を国が買い上げ、そこに中間貯蔵施設を作り、燃料をそこに集めるのです。そのエリアの汚染度は極めて高く、今の世代はもう帰還できないという現実があります。ならば、そこを日本全体の安全のために有効に使った方が合理的ではないか、と思うのです。福島は1〜3号機についても、いつ廃炉に出来るのか、そのめどはまだ立っていません。私たちは今世紀末まで「福島第一の現実」と戦っていかなければなりません。ここが日本の原子力技術の最前線にならざるを得ないのです。だからこその提案です。


2012年6月 2日 (土)

★…[原発の話:連載1] 福島第一の4号機こそ危ない


 「ニウスな夜」第4夜「原発はどうなる」で最初に触れたのが、福島第一発電所の危険性です。「危険性?、取り敢えずは一息ついて、緊急事態は回避されたではないのか…」。多くの人はそんなイメージを持っていると思います。しかし、4号機の使用済み核燃料プールが再度の地震で壊れないだろうか、それを世界中がハラハラ、ドキドキしながら見守っているというのが実情です。

 使用済み核燃料は、「近づけば即死」というレベルの高い放射線量を出します。また、ずっと崩壊熱を出しているので、プールの中で冷やし続けないといけません。ところが、4号機は震災直後の3月15日の爆発で天井が吹き飛ばされ、5階にあったプールは青天井となり、ゴミが入らないようにビニールシートをかけてはありますが、野ざらしに近い状態になっているのです。もし、再度の地震でプールが壊れ、水が抜けたり、冷却システムが壊れて水が蒸発したりすれば、燃料が空気中に剥き出しになるのです。そうなると、もう手が付けられません。

 どれくらいの被害が出るのか…。プールに保管されている燃料棒は1535本(原子炉2.8個分に相当)。それらの放射能がずっと出ずっぱりになるので、放出される放射能の量は、米ブルックヘブン国立研究所のシミュレーションでは「これまで地上で行われた核実験の送料を超える規模」、「周辺の18万6000人が死ぬ」となっています。また、海外のメディアでは「チェルノブイリの少なくとも10倍のセシウム137が放出される」という専門家の見方を紹介されています。原子力委員会の近藤駿介委員長が昨年3月25日にまとめていた「不測事態シナリオ」でも、半径170キロ圏が強制移住の対象となり、東京など250キロ圏でも避難の必要ありとしています。いわゆる首都圏3000万人がすぐに西へ逃げないといけない、という状況に陥るのです。

 しかも、線量が高いため、福島第一原発の修復、管理作業が一切出来なくなります。それが何を意味するか…。1〜3号機も壊れるに任せるしかなくなるということですね。そうなれば、放射能を閉じ込めるための手が打てないのですから、日本自体がもう終わってしまいます。なので、アメリカもやきもきしています。4月1日に米上院エネルギー委員会のロン・ワイデン議員がわざわざ福島第一を視察しています。14日付でヒラリー国務長官、米原子力規制委員会のヤツコ委員長、日本の藤崎駐米大使に「当初の事故より大量の放射性物質の放出となる恐れがある」と警告を出しています。

 実際、震災時にそうなりかけたのです。震災時、福島第一原発では4つある原子炉のうち第4号機だけ運転していませんでした。運転開始以来最大の改修工事を行っていたからです。そのため燃料を「お釜」から取り出してプールに移してあったのですが、震災時にそのプールの冷却システムが停止してしまったのです。ところが…、地震の衝撃で隣の「原子炉ウエル」というスペースとの仕切り壁がずれてそこに溜まっていた水が流れ込んでくれて事なきを得ました。その後、6日間で720トンの海水を注入して当座を凌ぎ、現在は循環システムを構築して冷却を続けています。

 もちろん、東京電力も出来るだけのことはやっていて、昨年夏にプールの底を鋼鉄の支柱とコンクリートで補強しました。この28日には東日本大震災後初めてとなる詳細な実地調査結果も発表されましたが、それによると、外壁に爆発によって生じたとみられる小さなたわみが見つかったが、それは非常に小さく、この壁の場所が燃料プールから離れているため危険ではなく、東日本大震災と同程度の強さの地震が来ても耐えられる能力があるとしています。

 ただ、冷却システムは応急的に構築したものなので、そちらの耐久性の方がちょっと心配です。実際、4月12日に自動的に止まりました。この時は冷却水の配管接合部で水漏れが起きていたことが判明、部品を交換して13日午後4時には約25時間ぶりに動き出しましたが、この間に燃料プールの水温は当初の28度から37・6度に上昇しているのです。燃料がまだ高い崩壊熱を出していることが分かりますね。しかも、漏れた水は高濃度に汚染されているのですから、大量に漏れ出したらと思うと、やはり心配です。

 とにかく、燃料を早く取り出すこと、それに尽きるのですが、東京電力の工程表によると、まずは4号機の原子炉建屋外にクレーンや核燃料取扱機を備えた逆「L」字型の骨組みを設置するところから始めなければならず、クレーンを設置してからも、プールに飛び込んだがれきを運び出すなどの作業があるので、実際に燃料の取り出しが始まるのは2012年末から、という遅さです。

 しかも…。運び出した燃料の保管場所にしようとしている共用プールが、既に約6400本の使用済み燃料がいっぱいという状況なのです。そこでまず冷却が進んでいる燃料を他の場所に移してスペースを確保するというのですが、燃料は鋼鉄と鉛で作られたキャスク(直径3メートル、暑さ7・5センチ、重さ100トン)に密閉しないといけません。この作業自体もかなりの作業量なので、4号機からすべての燃料を運び出すまでに早くて3年、つまり、2015年末まで掛かるということになります。

 こうやって調べていくと、燃料プールが原発の意外な弱点であることが分かります。いったんことが起きると、とんでもない被害を及ぼすのに、プールは所詮プールの作り。福島第一の写真をみれば、誰もがビックリするはずです。人間誰しも運転している「お釜」の方が危ないと思いがちでそちらにばかり目が行きますが、燃料は密閉性の高い容器である「お釜」に入っている分だけまだ安全なわけで、何とも皮肉な話です。そして、燃料プールはすべての原発にあるのです。

 次回も燃料プールについてのお話です。





2012年5月 7日 (月)

★…この不安定な電源、原発の将来は!?

きのうは、自分にびっくりです。体調を壊して(戻した後、呼吸が苦しくなり)救急車で病院に運ばれ、一晩入院となりました。まだぼうっとしていますが、取り敢えず退院させてもらえることになりました。それにしても、病院内に顔見知りが多くてビックリです。食事を持ってきてくれたのは知人の娘さん、もう一人、幼なじみの奥さんも配膳の仕事をしています。

さて、病床で、知人から面白い話を聞きました。「産業界が原発の電気に見切りを付けた」という過激な話です。なぜか。原発が日本に適していないことに、今回の震災で多くの産業人が改めてではなく、「初めて気付いた」というのです。震災ほどの被害を受けなくとも、地震ですぐに止まり、さらに運転の再開まで時間が掛かる、つまり、原発は地震の多い日本に向かない作りで、ということに気付いたのですね。これに定期検査の間の中止も加わる。実は稼働率が低い代物…。核の問題はともかく、電力の不安定性の方が恐ろしいわけです。

原子力安全・保安院の原発運転実績によると、東電は昨年、全出力1万7308メガワットの72%が動いていない状況でした。「福島第一」の1~4号機はもちろん、5〜6号機も停止中。「福島第二」も再開できず、2007年の中越沖地震で停止中の「柏崎刈羽」2~4号機の運転再開もメドが立ちません。大震災もありますが、それだけでこうなっているわけではなく、「4年の間に起きた2度の地震で原発が止まった」状況なのです。

そしてもう一つ、核が低コストなエネルギーでないことが明らかになりました。福島の事故によって生じた被害についての補償だけをとっても、まだどこまで膨らむか解らない状況です。また、地元対策のような費用、さらにはまだ解決策を見つけ出せていない「核のゴミ=放射性廃棄物」の処理と保管といった「これからの作業」のコストなど、今後それらがすべて電気料金に跳ね返ってくるわけですから、産業界から一転して「原発止めて」という声が出てくるのも解ります。

さらにいえば、燃料のウランの埋蔵年数が100年もないというのですから。それでこれまで核燃料サイクルの開発を進めてきたわけですが…。青森の六ヶ所村の再処理工場の稼動は延期につぐ延期、ご存じ「高速増殖炉もんじゅ」は何度も事故を起こし、政府の中に廃炉に向けての動きも出てきました。日本以外でも、どこもうまくいっていない状況です。

「原発を持っている=いつでも核武装できる技術を持っているということ」、だから原発は続けないと、という人もいますが、日本にあるウランはそれこそ、北朝鮮よりも何倍も厳しく、IAEA(国際原子力機関)に監視されていますからね。こっそりと核武装…という状況ではありませんね。昨年から原発について考えさせられてきましたが、原発を取り巻く状況自体…、いや、いや、これは本当に厳しいですね。




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