火を噴く尖閣

2013年12月19日 (木)

★…きょうのニュース解説 [ 12月17日 ] 新しい防衛大綱を閣議決定

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 政府が17日、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について=いわゆる、防衛大綱ですね」を閣議決定しました。防衛大綱は中・長期的な安全保障政策の指針です。この前の防衛大綱は民主党政権時代の平成23年度に定められたばかりですから、わずか3年での改訂です。防衛大綱の閣議決定と同時に、大綱に基づいた今後5年間の防衛力整備計画「中期防衛力整備計画(中期防)」も明らかになりました。それに必要な、2014年度から5年間の防衛予算は、民主党政権下の前の大綱を約1兆2千億円上回る、総額約24兆6700億円になりました。

 では、今回の防衛大綱、それを受けた中期防をどうみればいいのでしょう。マスコミの報道は「南西シフト」と伝えていますが、最大のポイントは、防衛の重点を北海道から沖縄などの島嶼部に移すことです。これまでの仮想的・旧ソ連に向いていた防衛体制を見直す、そして、急速に軍事力を増強してきている中国を睨んだ体制に組み替える……1990年初めの米ソ冷戦の終結以来、日本の防衛体制が大きく転換することを意味します。

 その方針の下、いちばん大きく変わるのは、陸上自衛隊です。東部方面隊や中部方面隊など、5方面隊の上に「陸上総隊」を新設、指揮を一元化する組織改編を行います。私に言わせれば、今頃なんだという話ですが、各方面隊が地域ごとに独立した指揮権を持つ、というこれまでの歪な形がようやく是正されることになります。また、海からの上陸作戦能力を持ち、離島などの防衛を専門とする「水陸両用団=仮称」を2015年度にも発足させることになりました。モデルは米海兵隊で、長崎県佐世保市の西部方面普通科連隊700人を核に発足させ、将来的には3千人規模に増員する計画です。 加えて、与那国島に100人規模の「沿岸監視隊」を配置することも明記。定員は3年前の大綱では15万4000人になっていましたが、15万9000人に引き上げました。

 また、戦車は44両を取得しながら旧型を順次退役させることで約740両から300両に大幅に削減し、配備も北海道、九州に集約することになりました。これまで各師団に配備されていた火砲も方面隊直轄となります。戦車は上陸した敵を迎え撃つためにいるのですが、よく考えれば、敵が本土にという状況自体、やばい状況です。大事なのはそんなことになる前に敵を排除すること。戦車への投資を、敵を日本に近づけさせない防御力の整備に振り向ける方が賢明です。陸自ではその予算を(1)機動力の高いヘリコプター「オスプレイ」17機(2)戦車並の武装を持ちながらタイヤで道路を高速で走行出来て空輸も出来る機動戦闘車99両(3)水陸両用の装甲車52両などに振り向けることになりました。

 新しい大綱では、陸海空自衛隊の連携や即応性を重視する「統合機動防衛力の構築」を基本概念にしています。それを受けて、海上自衛隊、航空自衛隊の装備も前倒しでの整備が進みます。空自は5年の間に最新鋭ステルス戦闘機F35Aを28機、新型の早期警戒機を4機、新型の空中給油機を3機、国産の新型哨戒機P1を23機、C2輸送機を10機、さらに初めて高高度を飛ぶ無人偵察機を3機配備します。また、移動式警戒管制レーダーを「南西地域の島しょ部」に整備。那覇基地も増強させ、F15戦闘機、E2C早期警戒機の飛行隊をそれぞれ1個新たに配備します。一方、海上自衛隊の護衛艦を現状の47隻から54隻に増強。そのうち、イージス艦は2隻増やして8隻になります。潜水艦は既定通り16隻から22隻に増強されます。

 こう書いてくると、軍備の大幅増強のようにみえるかもしれませんが、このところの中国の軍事力増強はハイペースで、2013年に中国が建造した軍艦の数は、海自がこの10年間に建造した護衛艦の合計を既に上回るスピード。しかも、複数の空母の建造が進むなど、軍備拡大はむしろこれからが本番といった調子で、とても追いつきません。空自はF15戦闘機に代わる最新鋭ステルス戦闘機F35Aの導入を中期防以後も続け、将来的に100機以上を保有して中国に対する航空優位を維持すると言っていますが、中国は空軍とは別に海軍航空隊を持ち、これまでの増強ペースを見れば、数年のうちに海軍航空隊だけで空自より強力な戦力になります。計画通り進んでも、日本の防衛力は心許ないというのが現実です。





2013年11月26日 (火)

★…きょうのニュース解説 [ 11月25日 ] 中国が防空識別圏を設定

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 中国が動きました。日本の領土である尖閣諸島の上空を含む、東シナ海に一方的に防空識別圏を設定してきました。防空識別圏に他国の航空機が進入してきた場合、どこの国でも、戦闘機をスクランブル(緊急発進)させて領空侵犯を阻止します。日本もこれまで、防空識別圏に入ってくる中国機に対して航空自衛隊がスクランブルを重ね、退去させてきました。


 その日本の防空識別圏と重なるような形で中国が防空識別圏を設定した…中国の国防省は、圏内を飛ぶ各国の航空機に対して「国防省の指令に従うこと」、「飛行計画の提出を求める」といったが公告を出しました。また、従わない航空機には「防御的緊急措置を講じる」として、スクランブルを行うことも明らかにしています。つまり、一方的に設定した防空識別圏への進入を武力で排除すると言っているわけです。

 尖閣諸島をめぐって中国は、これまでも中国海警局の公船を尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)へ頻繁に進入させてきました。もう、それが当たり前画のようになっているため、ニュースにならないくらいの頻度です。そして、海警局の乗組員が中国漁船に対して立ち入り検査を行っています。もちろん、日本が管轄権を持つ海域での法執行は国際法違反と知っていてどこ吹く風。さもそのエリアで法執行を行っているかのように装う“やらせ行為”を繰り返し、既成事実の積み重ねを図ってきました。

 しかし、今回の動きはこれまでとは違い、力ずくでも現状を変更しようとする動きです。尖閣諸島をめぐる日中の対立を、武力で解決していくと宣言したに等しく、話し合いによる日本との関係改善を拒否するという意思表示です。日本の領空に中国機が侵入してきた場合、日本が躊躇なく撃墜命令を下せるかどうかといった問題がより顕在化するわけで、ある意味で日本への“宣戦布告”です。

 だからこそ、米国は日本以上に機敏に動き、ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官、国家安全保障会議(NSC)が歩調を合わせて声明を発表。中国の一方的な行動は誤解と誤算による不測の事態の危険性を増大させる、とその行動を非難した上で、「尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象であることを米国は再確認する」、「日本を含む同盟・友好国と緊密に協議する」と、中国を強く牽制しました。加えて、防衛識別圏が重なった台湾と韓国も中国の行動に「遺憾の意」を表明しています。

 これに中国も応酬。日米の批判に対して、人民解放軍の機関紙「解放軍報」は25日、「国家主権を守ろうとする中国軍の決意を見くびってはいけない」という社論を掲載。その中で、「防空識別圏の設定にはどの国の許可もいらず、大国の顔色をうかがう必要はない」、「1969年に日本が防空識別圏を設定した行為こそが非常に危険で一方的な行為だ」と反論しています。また、中国共産党の機関紙「人民日報」系の「環球時報」は、「もし日本の戦闘機が中国の防空識別圏内で中国機の飛行を妨害するなら、中国の戦闘機も断固として日本の戦闘機の飛行を阻むべきだ」という主張を展開しました。

 チャイナ・ウオッチャーの間には「中国一流のブラフ(脅し)であり、宣言したけれど、実際にはスクランブルは行わない口先介入」という見方もあります。また、東京の中国大使館が今月8日、日本にいる中国人に対して、「緊急事態に備え、連絡先を登録するよう」ホームページなどで呼びかけたという話が「環球時報」のインターネット版や「京華時報」のニュースで表面化。一方で中国外務省が「無用な連想や過度な解釈をすべきではない」と思わせぶりに否定してみせていることも、日米を揺さぶるために一芝居打っているといった見方に繋がっています。もちろん、実際にそれで終わってくれる方が良いに決まっています。

 しかし…。日本航空や全日空など日本の航空各社が識別圏を通過する台北便や香港便などの飛行計画書を中国当局に提出したことが25日に明らかになりました。台湾も飛行計画書を中国当局に提出したことを認めています。既成事実の積み重ねるという彼らの巧妙な手口…。飛行計画を提出するという踏み絵を踏まされる航空各社も気の毒ですが、それが続けば、中国の尖閣の領有権を半ば認めてしまうことにもなり兼ねません。アメリカの航空会社がどうするか、そこが知りたいところですね。

 安倍首相は25日の参院決算委員会で「尖閣諸島の領空があたかも中国の領空であるかのごとき表示で、全く受け入れることができない。一切の措置の撤回を求めている」と改めて中国を強く非難。外務省の斎木事務次官も中国の程永華(チョン・ヨンホワ)大使を呼び、改めて撤回を求めました。

 しかし、そういう抗議行動だけでは…。既成事実が積み上がることで、細かい事情や歴史を知らない欧米の知人たちの間では最近、「日本と中国は尖閣諸島をめぐって領土問題を抱えている」という認識が定着しつつあります。向こうのニュースには「中国の公船と海上保安庁の巡視船が揉み合っている短い映像」しか流れないのですから、そういう印象を持つのも当然でしょう。

 日本の防空識別圏はこれまで多くの国に認められてきました(あの韓国でさえも)。なのに武力を背景に強引にその変更を迫る中国の行為は“侵略”そのものです。中国はまず無人偵察機あたりを日本の領空に進入させてくると思いますが、スクランブルに上がった自衛隊機は国際法で定められた手順に則って粛々と撃墜すべきです(
日本の正当性を伝えるため、撃墜する映像を公開するということも必要)。領空侵犯を続けた大韓航空機が旧ソ連軍の戦闘機によって撃墜された時です。撃墜されたのは民間機、乗っていた乗員、乗客全員が犠牲になる痛ましい事件でしたが、国際法で定められた手順に則ったギリギリの判断だったことが解ると、国際的な批判は止みました。

 そしてその一方で、中国の“侵略”については、日中で話し合いをするのではなく、国連の安保理事会に話を持って行くべきです。中国がいかに危険なことを仕掛けているか、それを国際社会に広く理解してもらい、日本の主張を堂々と世界に問う必要があります。その過程で、日本の領有の正当性も広く世界に浸透していくことでしょう
。もう少し先になると思っていたのですが、尖閣問題は中国が先に動いたことで、どうやらここが天王山です。ここで引くと、中国に譲歩せざるを得なくなります。


2013年10月23日 (水)

★…中国の兵器開発も日本頼み!?


 中国でこのところ、自国兵器に日本製の部品が使われていることをめぐって議論が起きています。始まりは9月末、トルコが導入を決めた防空ミサイルシステム「紅旗9=輸出仕様はFD-2000」に日本製の部品が使われていることが判明したことでした。

 「FD-2000」米国のパトリオットやロシアのS-400を蹴落として採用されたのですが、契約金額が40億ドル(約4000億円)と大きかったこともあり、中国では「米国とソ連を撃破して勝利」と派手に報道されました。ところが、そのリミットスイッチという電気スイッチが日本製と判明したのです。香港の報道によれば、電流制御装置である「AZ8112」というスイッチがパナソニック製ということです。

 その後、この15日には、ニュージーランドを友好訪問した中国海軍の軍艦に日本製のアンテナが採用されていることが分かったというニュースが流れ、波紋が広がっています。ニュージーランド在住の中国人が撮影した写真で解ったということですが、なんとも締まらない話ですね。



 今回友好訪問したのは、ミサイル駆逐艦「青島」、フリゲート艦「臨沂」、補給艦「洪澤湖」で、その中の「青島」に搭載されていた艦載レーダーが光電製作所(KODEN)製のGPSプロッターでした。民間ルートで輸入し、軍事転用されたとみられています。

 中国の工業化は凄まじいとはいえ、それでも電子部品や半導体、炭素繊維は日本や韓国からの輸入頼み。「潜水艦にも古野電気の誘導レーダーが使われている」という中国の軍事評論家は、武器の中味を日本に依存する状況に「中国の国防の隠れた落とし穴」と危機感を募らせています。「輸出を禁止されたらと想像するだけで…」、「安全保障上の大問題で中国人に突き付けられた課題」といった議論が飛び交っています。

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2013年2月18日 (月)

★…尖閣問題を話して、美味しい米を頂戴しました


  17日の日曜日は、鯖江市の「瀧ヶ花運送」さんの親睦会「ターキー会」の例会に招かれました。会では毎回、ゲストを呼んで話をしてもらっているそうで、私は皆さんの希望で「尖閣諸島問題」を話してきました。

 この日は、中国の尖閣諸島への関心が、尖閣諸島の海底に眠る海底資源にあることも間違いないが、いまではそのことよりも、太平洋への進出に取って重要な通り道として、彼らは尖閣諸島を影響下に置きたい(逆に日本の影響下から外したい)という願望の方が強くなってきていることを中心に話しました。一通り話をした後、皆さんとても熱心に話を聞いてくれて、質問もたくさんもらいました。中国側の接続水域、領海への進入が日常茶飯事のようになり、これまでの熱い議論の後の、息の長い対応策について市民の皆さんの関心も高まってきていることを感じます。

 もう一つ。会の終わりにお土産を頂いたのですが、その中にお米が入っていたのです。なんでお米なのか…聞いてみると、「瀧ヶ花運送」は「タキガハナファーム」というのを持っていて(長男の方がやっています)、米の生産と直販をやっていたのです。その中に「ピロール・コシヒカリ」というのがあり、ちょっと変わったその名前に惹かれました。



 それでさっそく試食…。これが噛み応えがしっかりしている上、味がしっかりしていて美味しいのです。この「ピロール・コシヒカリ」、「ピロール農法」によって作られたコシヒカリという米ですが、どんな農法なのか、それが解りません。そこでちょっと調べてみると、「ピロール農法」で作ると、米が育つ土の中に酸素と有機物を増える、それでカルシウムなどのミネラルやビタミン類などが多く含まれた米になるというのです。ぜひ一度、食べてみてください。

 毎日のようにTPP交渉のことが話題になりますが、いまの流れでは、交渉への参加と引き替えに、またご機嫌取りのための補助金の支出が増えそうな感じです。成長産業、輸出産業としての農業に鍛え直さないと間に合わないこの時期にこの体たらく。農協を中心として、なんでいまの状況に安住することばかり求めるのか…。既得権益の保護ではなく、やる気のある農業事業者をもっと支援し、こうした高品質の農作物の開発を進める、一刻も早くそういうことに早く取り組まないといけないと改めて感じました。

2013年2月 5日 (火)

★…論客・孫崎享氏との対話


 3日はオペラ、4日はコンサートのミーティング、5日は朝の便で羽田から小松へ戻りました。三国の「おけら牧場」で行われる孫崎享(まごさき・うける)氏の講演を聞くためです。孫崎氏は外務省の元・国際情報局長だった論客。日米関係を軸にしながら、日米安保体制、普天間基地問題や尖閣諸島問題になどについて、他の論客とは違う視点から積極的な発言を続けています。この3年ほどの間に『日本人のための戦略的思考入門――日米同盟を超えて』、『日本の国境問題――尖閣・竹島・北方領土』、『戦後史の正体 1945-2012』、『アメリカに潰された政治家たち』といった著作が立て続けに発表、多くがベストセラーになっています。



 講演会は、「おけら牧場」の主宰者・山崎一之氏が計画したもので、私は地元のコミュニティーFM「たんなんFM」の伊藤努理事長に誘われて出掛けたのですが(写真で私と話をしている眼鏡を掛けた白髪の人物です)、会場に着いてみると、既に50人近い人たちが詰めかけていてちょっとビックリでした。これもヒートアップしている尖閣問題について、世の中の関心が高まっている証拠でしょう。事実、私もこのところ尖閣問題の基礎知識的なことを話す機会が増えています。



 さて、孫崎さんの尖閣問題への視点は冷めていて、ちょっと異色です。「朝まで生テレビ」のような討論番組で他の論客が「日本固有の領土」といった発言を繰り返す中で、「必ずしも海外は尖閣を日本のものと考えていないと考えた方が良い」といった意見を吐いたり、日米安保体制による米軍の軍事的支援に疑問を投げかけたりといった具合です。国益の確保を至上命題とする外交官出身でありながら、そんな氏の姿勢、つまり、日本の国益を一方的に叫ばないところを取り上げ、「売国奴」と罵るような論敵までいます。



 私の古巣の産経新聞も氏に批判的です。氏もそれを感じているらしく、話が進んでいく中でなんと「産経新聞の人とはもう話したくないですね」といった発音が飛び出したのです。ところが……。氏の目の前に私が座っていました。着いた時にそこに案内されたのも伊藤さんたちの企みだったのかもしれませんが、私が「OB」であることを告げたところ会場は大爆笑、氏も大笑いで会の空気が和んだので救われました。その後も、何かとその話になるたび私と孫崎さんがやりとりをすることになりました。

 氏の話はこの日も、これまでの持論の繰り返し。テレビ番組や雑誌でかなり氏の発言を追いかけている私には新味はありませんでしたが、講演を終えて東京に戻る列車に同乗して質問する時間も作れたので、いくつか本音らしきものも聞けたような気がします。アメリカ従属路線からの脱却が氏の本当に言いたいことであること、独自の防衛力整備を推進させようとしていること、そして、武力解決という方法を取らない、一見すると弱腰、軟弱に見えるその姿勢の裏側には、外交力という力を信じているからこそで、そこに外交官としてのプライドを持っているということなのでしょう。面白い一日でした。

2013年1月17日 (木)

★…歯科医師会で尖閣問題


 「ニウスの夜」の間の16日、鯖江歯科医師会で話をしてきました。30人ほどの集まりで、「尖閣諸島について」というテーマでした。歯科医師会で話すのは、昨年に続いて2回目です。



 さて、昨年の国有化以来、中国公船の接続水域への侵入が日常化し、昨年12月13日には中国海監(日本では海上保安庁ですね)機による領空侵犯も起きています。この状態が続いていることで、海外の人たちの中に「日本と中国の間に領土紛争がある」と日々刷り込まれているわけですから、実に歯がゆい限りです。

 この日はそんな話に加えて、「中国がなぜ尖閣を取りたいのか」という基本的な話もしました。「資源があるから」というのも間違いないのですが、それ以上に戦略的にあの場所がホットコーナーなのであるということを知ってもらいたかったのです。

 何度も書いて来ましたが、中国にとって“台湾解放”は絶対命題です。場合によっては武力行使も厭わない、それが中国の基本姿勢です。そして、その台湾戦では、日本やアメリカの海軍を台湾に寄せ付けないようにしたい、と中国は考えています。

 そこで…。中国はグアム周辺のフィリピン海まで艦隊を押し出して、来援するアメリカ軍を迎え撃とうと考えているのです。その艦隊はアメリカ軍の前に全滅しても、いくらかでも打撃を与えることが出来たり、時間が稼げればめっけもん、その間に台湾を占領できればいいという考え方ですね。

 そして、中国大陸を囲っている日本列島、沖縄、尖閣諸島、台湾という防波堤からそのフィリピン海へ出るのに、いちばん守りの薄いところが尖閣諸島、だからこそ彼らは拘っているのです。日本がここに対艦ミサイル基地を設ければそれこそ中国を封じ込めるのですが、日本はそれをしてきませんでした。というのも、「現状維持」を維持することで、中国に日本の実効支配を認めさせていたからです。実効支配が続けば、日本には有利なわけですから、弱腰であってもそれはそれで一つの手でした。

 しかし、石原発言以降の日本の動きを、中国は「日本が一歩踏み出した」と感じているのですから中国も黙っていません(リアルな政治に理は通じません)。これから攻勢は強まってくるでしょう。一戦交えれば、海上自衛隊は中国海軍に圧勝するので簡単なのですが、中国と戦争したくないアメリカが許可しない以上、領海に入ってくる船を武力で排除するのも、日中開戦の端緒となるためままなりません。そういう事態に陥らないようアメリカは中国に自制を求めていますが、独自で動けない日本はまさにジレンマに陥っています。

 そうこうしている間にも、海上保安庁の船が中国の公船を追い払っているという表面的なニュースが世界中に毎日垂れ流され、海外では「日中間に領土問題あり」というイメージが定着しつつあります。詳細を知らない人たちにしてみれば当然で、イタリアの友人からのメールも「当然そうなのだろう」というトーンでした。

 実は中国もジレンマに陥っています。こちらは過去20年間の反日政策によって国民を洗脳してきたことがいまは指導部はとって重荷で、それに手足を縛られ、日本に一歩も譲歩できない状態です。ただでさえ不満が溜まっているところにそれをやれば、その不満に一気に火が着き、それが共産党支配を焼き尽くしかねません。そんなわけで、なかなか解決の糸口が見つかず、我々のイライラは募ります。

 この日も、私が話を終えた後、質問が続きました。その中で、アジアは中国とアメリカの力のぶつかり合いが続いてきたことに触れました。朝鮮戦争というと、朝鮮民族同士の戦争のようなイメージがありますが、実際に戦ったのは、中国とアメリカです。両者が、あの時代からぶつかり合っていることを忘れてはいけません。

 北朝鮮が崩壊すれば、アメリカの勢力が朝鮮半島の付け根、つまり中朝国境まで勢力を伸びてくる、そうなることを中国は当時も今もとても怖れています。あれこれ言いながらも、中国が北朝鮮をずっと支援しているのも、そこに理由があるのです。

 その中国とアメリカがいまは戦争をしたくない、というのですから、間に落ち込んでいる日本は困ったものです。

2012年11月29日 (木)

★…きょうのニュース解説 [ 11月29日 ] 中国の一人っ子政策見直し


 28日付の中国の英字紙「チャイナ・デーリー」が、中国政府が「一人っ子政策」を緩和する可能性があると報じました。中国人民政治協商会議の人口資源環境委員会の張維慶(ちょう・いけい)主任の談話として掲載されています。「チャイナ・デーリー」は中国の新聞としては西側の報道にもっとも似ているとされていますが、それでも規制を受けているのは明白で、中国共産党政府のお墨付きがなければ、この手の記事が載ることはありません。ということは、中国政府が中国のインテリの反応を見るために上げたアドバルーンということです。

 それくらい、中国当局が高齢化に危機感を持っているということです。日本総研環太平洋戦略研究センターの大泉啓一郎主任研究員の研究によれば、2009年の中国の高齢化率は8.5%ですから、もう既に高齢化社会に移行していることを表しています。今後は高齢化率が上昇する一方で、2022〜24年の数字がその時点で、「世界一のスピードで高齢化している日本」と肩を並べるのです。

 経済学上の法則の中に「ルイスのターニングポイント」という言葉があります。「農村から都市に労働力が豊富に供給される間は代わりがいくらでもいるので労働者の賃金は上がらないが、供給が滞るようになった時点から労働者の賃金は上昇する」という考え方なのですが、中国の経済学者ですら中国が今、そこに差し掛かっていると見ています。そうなると、どうなるか。中国の高度成長が終わるのです。

 中国にはもう一つ、大きな問題が存在します。それは「人口ボーナス」の果実を手に入れることが出来ないということです。「人口ボーナス」とは、ある世代の頭数が多いことが経済成長を押し上げることです。その頭数はずっと移行していくので、その世代が生産年齢(15〜64歳)でいる間は、生産と消費を支えて経済が伸びます。日本でいえば、「団塊の世代」がそれですね。

 これを中国に当てはめると、そのピークが2015年頃に来てしまうのです。肝心なのはここからで、その「人口ボーナス」期が終わった時点が個人収入のピークに近いということです。日本のピークは1990年で、「1人当たりのGDP」は2万7000ドルでした。ところが、15年の「中国の1人当たりのGDP」の予測額は5000ドルにも達しません。

 これは何を意味するか。国際通貨基金(IMF)の高所得国の定義は1万2000ドルですから、中国は個人収入のピークを迎えても高所得国になれなかったということです。つまり、これからもずっと低所得国のままの国として存在するということです。あれだけの富を築きながら、一部の特権階級に(共産党幹部のことですが)その富が偏在した結果です。そして、そこに「世界に例がない」高齢化社会が覆い被さる。他人事ながら、中国は大変な時を迎えることになります。そうなると…。私がいつも「中国をそれほど怖がらなくていいんですよ」といっている根拠もここにあります。