■■ きょうのニュース解説 ■■

2016年1月 2日 (土)

[きょうのニュース快説] 北陸新幹線で京都府が「第5のルート」

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新年あけましておめでとうございます。

新しい年を迎え、ブログも引っ越しとなりました。

これからもよろしくお願いします。

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2015年12月29日 (火)

[きょうのニュース快説] 慰安婦問題解決へ日韓が合意

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    日韓の間の最大の懸案だった、いわゆる「従軍慰安婦問題」で大きな動きがありました。問題解決をめぐり、日韓の合意が実現したのです。きのう岸田外相と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が共同記者会見を行い、合意内容が明らかになりました。会見の中継を見ていた人も多かったのでしょう、店でお客さんからこの問題についての質問が相次ぎました。長くなりますが、合意について振り返ってみます。


    合意では、❶韓国政府が財団を設立し、そこに日本が政府予算からおよそ10億円を一括で拠出、その財団が慰安婦だった女性の名誉と尊厳の回復と、心の傷の癒やしのための事業を行うことになりました。❷共同記者会見で尹外相は「日本側の措置が着実に実施されることを前提に、慰安婦問題の最終的、不可逆的な解決を確認する」と語り、❸韓国政府として慰安婦問題が最終決着したとの認識を示しました。❹日本側が撤去を求めていた在韓日本大使館前の少女像について尹外相は、「関連団体と協議して韓国政府として適切に解決するよう努力する」と強調、❺慰安婦問題に関して国際社会で日本批判を自制することを約束しました。


    共同記者会見に臨んだ岸田外相は高揚感に包まれていましたね。その後の日本の記者団との会見で「慰安婦問題で終止符を打った」と胸を張り、「尹外相と膝詰めの協議を行い、確約をとりつけた。尹氏は共同記者発表で合意を力強く明言している」と指摘、合意が日韓だけでなく、国際社会での公約として、問題の最終的かつ不可逆的な解決を担保することができたと強調していました。


    心配なのは、会見冒頭の、岸田外相の「当時の軍の関与のもとに」という踏み込んだ発言です。あくまでも軍の行った行為と限定することで、国家や政府との距離感を出すためでしょうが、「関与」という言葉がどの程度の関与なのか説明されないことが災いし、言葉が独り歩きしてしまい、これまで韓国が国際社会にバラ巻いてきた「慰安婦の強制連行があった」ことを認めたような印象を与えかねません。また、韓国が問題をまた蒸し返さない保証はなく、その時にまた言葉尻を捉えて言い募ってくる怖れなしとは言えません。


    実際、一夜明けて中央日報は「日本政府の責任が初めて公式認定された」、朝鮮日報も「日本軍の関与や日本政府の責任を認め、首相が謝罪したことは肯定的に評価できる」と書いていて、日本がさも韓国の言い分を認めたような形で報道されています。


    今回の交渉の最大の争点は、「日本が法的責任を認めるかどうか」でした。韓国側は日本の軍・官憲による強制を認めるよう主張していたのですが、結局は「当時の軍の関与のもとに」の一方で、「日本政府は責任を痛感する」という表現に落ち着きました。道義的か法的かを、あえて明確にしないということで日韓が折り合った結果です。表現で韓国側が譲った、にもかかわらず、問題を今後蒸し返さないと公式に表明した……岸田外相が胸を張るのはそのあたりにあります。


    表現で韓国側が譲った……。新設される財団の資金に日本政府の予算が使われる、その事実を勝ち取ったからでしょう。岸田外相は「国家賠償ではない」と強調していますが、それは日本国内の反発を避けるためですね。新設される財団は、あくまでも韓国政府が設立し、韓国政府も資金を出します。その韓国政府の活動に日本政府も協力するという話と説明していくはずです。一方、韓国側は、日本政府に事実上の賠償責任を認めさせることができた、と国内向けに説明するはずです。そこで双方の国内向けの説明については非難しない、ということまで取り決めることになりました。


    10億円の使途、また、財団の運営に日本側がどれくらい関与出来るのか、といった細かい点はこれからの話としても、問題なのは、韓国側がほとんど何も確約していないことですね。慰安婦像の撤去についても、「関連団体と協議して韓国政府として適切に解決するよう努力する」という、あくまでも努力目標です。


    日本が撤去を求めている慰安婦像は2011年、元慰安婦の支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会=挺対協」が設置。その像を囲んでいまも毎週、対日非難の抗議集会が開かれています。外国公館に対する侮辱行為としてウィーン条約に違反していることは明白で、地元の行政当局も設置許可を出していないのですが、韓国政府はこれまで「民間団体が自発的に設置したもの」として黙認してきました。


     実は今回、正式な合意文書は作成されていません。共同会見での二人の発言が、合意の中身そのもの、というわけです。両外相が会見でメモを見ながら慎重に発言していたのはそのせいですね。文書が作成されなかった理由について産経新聞は、外交筋の話として、韓国国内の世論の動向を懸念する韓国側の要請で最終的に見送られたと報じています。


    韓国の新聞各紙は、左派系のハンギョレ新聞を除けば、おおむね合意を歓迎する論調でしたが、元慰安婦や「挺対協」などの支援団体は激しく反発しています。大使館前の像のみならず、韓国内で像が増え続けているという現状をどうするのか。尹外相は会見で「第三国での慰安婦関連の動きは支持しない」という認識を示しましたが、米国各地に設置されている碑や像をどうするか、という問題も残ります。


    そもそも、この慰安婦問題はなぜここまで拗れたのか……。戦前は公娼制度があり、春を売る商売を行っていた女性たちが普通にいたわけです。女郎さん、ですね。そんな女性の中で、軍隊相手に商売を行っていた人たち、彼女たちが、いわゆる従軍慰安婦です。


    軍を相手にした商売なので当然、軍の管理下にありました。しかし、「軍の関与」と言っても、性病の管理や女性を集める女衒(ぜげん)と呼ばれる人たちとのやり取りが中心。稼げる商売で希望者も多く、軍が銃を突き付けて女性を強制連行してくるといった話自体が非現実的なのです。兵士と女性たちの関係も悪くなく、自らそうだったと名乗り出ている女性で報酬が貰えなかった証言する人はおらず、戦後の占領軍の調査でも事実関係はハッキリしています。事は至ってシンプルなのです。


    では、なぜ彼女たちが急に「無理矢理強制された」と言い出したのか……。その背景には、彼女たちの存在を利用して、補償金の分け前に与るために、あるいは、自分の政治的な発言力を確保するために「そう言え」と彼女たちを焚き付けた人たちの存在があります。「戦前の日本叩き」の一環として記事で強制連行があったかのような印象付けを行った朝日新聞も大きな括りでは同じ穴の狢です。そして、韓国政府もそれに便乗、「対日カード」として使い始めたのです。


    日本と韓国は1965年、国交正常化のための「日韓基本条約」と同時に「日韓請求権協定」を結んで、「両国及びその国民の間の請求権に関する問題が完全かつ最終的に解決された」と確認しています。この時、日本側は個人一人ひとりに補償することを提案したのですが、韓国側は政府が一括で受け取ることを希望しました。しかし、韓国政府はその事実を長く国民に伏せた上、個人ごとの補償に使いませんでした。さらに慰安婦問題が浮上すると、その人たちは交渉時には枠の中に入っていなかったと言い募り、「何とかしろ!」と言ってきているのです。


    今回の合意は、その最終的な解決という位置付けですが、その解決に韓国政府がどれだけ真剣に取り組むか、そこに懸かっています。実は韓国では来年から、小学生の高学年生から高校生までを対象にした「慰安婦教育」の授業が始まることになっています。事実と違う自分たちに都合の良い話を教える“洗脳”が続けば、都合の良い話がそのうち“歴史の真実”となってしまうでしょう。そんなことを一方でやりながら、韓国政府は本当に支援団体を説得できるのか……。我々は今後の動きをしっかり見つめていくしか手がない、何とも心許ない限りですね。



2015年12月24日 (木)

[きょうのニュース快説] 軽率減税続けるの?

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   与党の自民党と公明党が先日、消費税率を10%に引き上げる予定の2017年4月から導入する「軽減税率」について大枠で合意しました。「軽減税率」は、食料品など生活必需品の税率を、本来の消費税率より低く設定することですね。消費税は、金持ちにも貧乏人にも分け隔てなく掛かる税金なので、「貧乏人の方が負担が重くなる税金」とされています。そこで、食料品などの生活必需品に対しては消費税を10%に上げないで8%で据え置いて税負担を軽減しようと導入されます。


   そう書くと、弱者にとても優しいそう。しかし、実際はそれほど弱者救済に役に立たないのです(涙)。というのも、たくさん消費する高額所得者の食費にも“平等”にこの「軽減税率」が適用されるからです。例えば……。10,000円の高級牛肉を買った人は、10%の消費税が8%に軽減されるので1000円払うところ800円で済んで200円浮きます。一方、1,000円の牛肉を買うと、消費税が100円から80円に減って浮くのは20円です。つまり、高い者を買う人ほど、「軽率減税」の恩恵をうけるという、なんとも皮肉な結果になるのです。取れるところから取れなくなる、ということですね。それによって(10%に上げないで8%に据え置くことによって)不足する税収額は約1兆円と試算されています。


   日本の貧困率は16%と言われていて、世帯年収で200万を割り込む「低所得者層」は約953万世帯とされています。その1兆円を、その世帯数で割ると、1世帯あたり10万円です。一方、その世帯は今回の「軽減税率」で年間いくら浮くのかを考えてみましょう。その世帯のエンゲル係数が(所得に占める食費の割合です)35%とすると、200万円×0.35で年間の食費は70万円。そのすべてを食料品の購入に使っているとすると、軽減率2%なら、軽減額は年間で1万4千円しか浮きません。ならば、「系減税率」を導入しないで1兆円の税収を確保して、そこから低所得者世帯に3万円ずつ配った方が、税収の落ち込みも防げる上、本当の意味での救済策になるのです。


   加えて、外食が「軽減税率」の対象から外れたことが混乱を生んでいます。そう、どこまでを外食として認めるのか、見極めるのが難しいからです。コンビニ店内で食べる場合は外食として10%、店外で食べる場合は8%などなど、全品目に対して細かく決めないといけません。その煩雑さに、コンビニやスーパー、百貨店など小売り各社が頭を抱え、飲食業界からも悲鳴が上がっています。しかも、税率8%と10%が混在するため、レジのシステムを変更したり、場合によってはレジを入れ替えるといった必要が出てきます。経済産業省の2014年の商業統計によると、日本の小売業の事業所数は約78万。POS(販売時点情報管理システム)レジ1台で数十万円の費用が発生すると言われており、その費用の捻出も、個人商店を中心に経営を圧迫します。


   もう一つ。どの品目を「軽率減税」の対象とするか、その線引きが政治利権化する怖れもあります。どの業界も自分たちの扱う製品をその対象にしてもらいたいと政治家に陳情するようになり(私の古巣の新聞業界もしっかり対象に入れ込みました)、場合によっては汚職の温床にもなり兼ねません。また、徴税事務の複雑化による公務員の増加ということも起きます。その意味ではデメリットの多い愚策です。消費税は今後早いペースで、10%を15%に、15%を20%へ上げざるを得ません。自民党に政策を修正させることで公明党に花を持たせ、公明党からさらに一段の選挙協力を得たいという安倍政権の思惑も解りますが、ここは百年の計として、低所得者が本当に恩恵を受ける仕組みをきちんと導入してほしかったですね。





2015年12月17日 (木)

[きょうのニュース快説] アメリカの利上げと原油輸出解禁

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   アメリカが攻勢に出ています。アメリカの中央銀行の役目を担う「米連邦準備制度理事会(FRB)」がきのう16日、2008年から7年間続けてきた事実上のゼロ金利政策を止め、9年半ぶりに利上げに踏み切ることを決めました。0.25%の引き上げと政策金利の誘導目標は小幅ですが、「リーマン・ショック」という金融危機の震源地となったアメリカが、日欧に先駆けて異例の金融緩和策を止めることになりました。ドルの金利が上がれば、資金がドルに集まるようになって新興国の株式と通貨売りが進むでしょう。中国を含めた新興国経済にどれくらい打撃を与えるか、ちょっと心配です。


   そのニュースの影に隠れてしまいましたが、先週もう一つ、アメリカ絡みの重要なニュースがありました。なんと原油の輸出を解禁することを決めたのです。アメリカは第1次石油危機の後、1975年に「エネルギー政策・保存法」を制定して輸出を原則として禁止、例外的にカナダなどごく一部の国に少量を輸出しているだけでした。40年ぶりの解禁です。


   原油というと、日本ではどうしても中東のイメージですよね。しかし、アメリカはいまや世界最大の産油国なのです。意外に思う人も多いでしょうね。それもこれも、2010年代に入って「シェールオイル」と呼ばれる原油の産出が急増したからです。EIA(米エネルギー省)の2014年のシェールオイルと在来型の原油の産出量は合わせて日量約1397万バレル。エネルギーを自給自足出来るようになった……中東に関心を失ってしまったのも、訳なしではないのです。


   今回の決定は、石油開発業者を中心に強まっていた輸出の解禁を求める声に応えたものです。産出が増えている「シェールオイル」はガソリンなどを多く含む「低硫黄原油=軽質油」。アメリカ国内の製油所はそれまで扱いが多かった中東系の「高硫黄原油=重質油」に対応しているところが多く、その精製が(原油をガソリンや重油、軽油、灯油に分ける作業ですね!)追いつかないのですね。ならば、原油自体を輸出!というわけです。


   それがどのような影響を及ぼすか…。例えば、「シェールオイル」と呼ばれる原油の産出が急増したことで、アメリカでは「軽質油」の代表銘柄ナイジェリア産原油の輸入が急減。2010年のピーク時には日に120万バレルあった輸入が14年7月にはなんとゼロになってしまいました。アメリカ一国でそれだけの分がこの二、三年の間でだぶついているわけです。


   そこにもってきて、西欧諸国のイランに対する経済制裁が終わって原油輸出が再開されました。エジプト、ベトナムでも有力な海底油田が見つかり、開発が進んでいます。そこにアメリカからの輸出……。中国を中心とする新興国の景気減速により需要が減少しているところに供給過剰が重なって原油の価格が暴落していますが、もう一段も二段も価格が下がりそうです。原油価格は、昨年は100ドルを超えていましたが、現在は約45ドルまで急落。その煽りを喰って、産油国の多くが大幅な収入減に見舞われています。


   原油安については、IMF(国際通貨基金)が先月、ちょっと気になる報告書を出していました。今後も1バレル50ドル(約6,000円)前後で推移すると、中東産油国の多くが5年以内に手持ちの資金不足に陥る可能性があるというのです。原油安による中東地域の損出は、今年だけで推定3600億ドル(約43兆2000億円)と予想。湾岸産油国にとっての3600億ドルは、名目GDPの21%にもなります。 加えて、中東の産油国の多くは、シリアの内戦や「IS=いわゆるイスラム国」対策のための資金などが嵩んで財政状況が悪化しています。


   将来を見据えて原油収入を蓄え、1バレル50ドルでも約25年は大丈夫というクウェート、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)はともかく、バーレーンとオマーンは数年内に国民に税負担を(いまは無税で福祉や教育、医療などは無償)求めざるを得なくなるとしています。OPEC(オペック=石油輸出国機構)の盟主サウジアラビアも、バーレーンに対する最大の支援国で徐々に余裕がなくなっていくとみられています。いまはアラビア半島の端にある隣国イエメンの内戦にも地上軍を送って介入しています。ナイジェリアもしかり。アフリカ最大の産油国で、サブサハラ・アフリカ(北アフリカ以外のアフリカ)49カ国全体のGDPの4割近くを占める経済大国ですから、アフリカ経済全体にも大きな衝撃です。


   天然ガス市場も似たようなもので、「シェールガス」も生産拡大が進んで価格が下がり、アメリカでは発電用の原料が石炭から天然ガスにシフトしまって石炭需要が急減。08年のピーク時には南米コロンビアから年間2400万トンも輸入していた石炭の輸入は600万トンに急減。供給先を失ったコロンビアも厳しい状況です。



   こうやって経済の玉突き現象を追いかけていくと、世界中のあらゆるものをこの10年近く“暴食”してきた中国経済の失速がいま、いかに大きな影響を及ぼしているか、それがよく見えてきます。そして、地球上のどこかで経済成長が起きてくれないと経済的にやっていけないという、人類の姿もまた見えてきますね。



2014年8月 6日 (水)

★…何なんでしょう、朝日新聞の記事の取り消し……。

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この見出し、「日韓関係なぜこじれたか」はブラックジョークですかね。朝日新聞の過去の一連の印象付け報道がなければ、「強制連行」といった話は独り歩きすることなく、日本の名誉が汚されることもなく、日韓関係もここまで拗れないでしょうに(笑)……。


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この二日間にわたった朝日新聞の検証記事ですが、終わってみれば、「強制連行」をやったという吉田某の証言は虚偽であるので、その証言に基づいた記事を取り消すというだけの話です。本当に「強制連行」があったかなかったのか、改めて一時資料に当たってその真偽に迫ったわけでもなく、これでは問題の検証にはなりません。返す刀で、その他の印象付けの記事については捏造はないと否定していて、残るはこれまでの報道についての言い訳ばかりです。吉田証言を否定せざるを得なくなったからか、「強制性」の解釈を、本当の意味の「強制連行」よりずっと広げて自説を改めて声高に叫んでいるのです。


記事の取り消しで、これまでのことがすべて消えるわけではありません。一連の報道が引き起こしたことの重さを(国際社会で日本が性奴隷の国と呼ばれるようになっていることです)考える時、吉田証言に始まる一連の報道に間違いが無かったのか、それに正面から向き合わないと……。これでは偽善の誹りを受けても仕方無いですね。それにしても、朝日新聞がここまでして、日本を貶める必要がどこにあるのか解りません。




2013年12月19日 (木)

★…きょうのニュース解説 [ 12月17日 ] 新しい防衛大綱を閣議決定

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 政府が17日、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱について=いわゆる、防衛大綱ですね」を閣議決定しました。防衛大綱は中・長期的な安全保障政策の指針です。この前の防衛大綱は民主党政権時代の平成23年度に定められたばかりですから、わずか3年での改訂です。防衛大綱の閣議決定と同時に、大綱に基づいた今後5年間の防衛力整備計画「中期防衛力整備計画(中期防)」も明らかになりました。それに必要な、2014年度から5年間の防衛予算は、民主党政権下の前の大綱を約1兆2千億円上回る、総額約24兆6700億円になりました。

 では、今回の防衛大綱、それを受けた中期防をどうみればいいのでしょう。マスコミの報道は「南西シフト」と伝えていますが、最大のポイントは、防衛の重点を北海道から沖縄などの島嶼部に移すことです。これまでの仮想的・旧ソ連に向いていた防衛体制を見直す、そして、急速に軍事力を増強してきている中国を睨んだ体制に組み替える……1990年初めの米ソ冷戦の終結以来、日本の防衛体制が大きく転換することを意味します。

 その方針の下、いちばん大きく変わるのは、陸上自衛隊です。東部方面隊や中部方面隊など、5方面隊の上に「陸上総隊」を新設、指揮を一元化する組織改編を行います。私に言わせれば、今頃なんだという話ですが、各方面隊が地域ごとに独立した指揮権を持つ、というこれまでの歪な形がようやく是正されることになります。また、海からの上陸作戦能力を持ち、離島などの防衛を専門とする「水陸両用団=仮称」を2015年度にも発足させることになりました。モデルは米海兵隊で、長崎県佐世保市の西部方面普通科連隊700人を核に発足させ、将来的には3千人規模に増員する計画です。 加えて、与那国島に100人規模の「沿岸監視隊」を配置することも明記。定員は3年前の大綱では15万4000人になっていましたが、15万9000人に引き上げました。

 また、戦車は44両を取得しながら旧型を順次退役させることで約740両から300両に大幅に削減し、配備も北海道、九州に集約することになりました。これまで各師団に配備されていた火砲も方面隊直轄となります。戦車は上陸した敵を迎え撃つためにいるのですが、よく考えれば、敵が本土にという状況自体、やばい状況です。大事なのはそんなことになる前に敵を排除すること。戦車への投資を、敵を日本に近づけさせない防御力の整備に振り向ける方が賢明です。陸自ではその予算を(1)機動力の高いヘリコプター「オスプレイ」17機(2)戦車並の武装を持ちながらタイヤで道路を高速で走行出来て空輸も出来る機動戦闘車99両(3)水陸両用の装甲車52両などに振り向けることになりました。

 新しい大綱では、陸海空自衛隊の連携や即応性を重視する「統合機動防衛力の構築」を基本概念にしています。それを受けて、海上自衛隊、航空自衛隊の装備も前倒しでの整備が進みます。空自は5年の間に最新鋭ステルス戦闘機F35Aを28機、新型の早期警戒機を4機、新型の空中給油機を3機、国産の新型哨戒機P1を23機、C2輸送機を10機、さらに初めて高高度を飛ぶ無人偵察機を3機配備します。また、移動式警戒管制レーダーを「南西地域の島しょ部」に整備。那覇基地も増強させ、F15戦闘機、E2C早期警戒機の飛行隊をそれぞれ1個新たに配備します。一方、海上自衛隊の護衛艦を現状の47隻から54隻に増強。そのうち、イージス艦は2隻増やして8隻になります。潜水艦は既定通り16隻から22隻に増強されます。

 こう書いてくると、軍備の大幅増強のようにみえるかもしれませんが、このところの中国の軍事力増強はハイペースで、2013年に中国が建造した軍艦の数は、海自がこの10年間に建造した護衛艦の合計を既に上回るスピード。しかも、複数の空母の建造が進むなど、軍備拡大はむしろこれからが本番といった調子で、とても追いつきません。空自はF15戦闘機に代わる最新鋭ステルス戦闘機F35Aの導入を中期防以後も続け、将来的に100機以上を保有して中国に対する航空優位を維持すると言っていますが、中国は空軍とは別に海軍航空隊を持ち、これまでの増強ペースを見れば、数年のうちに海軍航空隊だけで空自より強力な戦力になります。計画通り進んでも、日本の防衛力は心許ないというのが現実です。





2013年11月26日 (火)

★…きょうのニュース解説 [ 11月25日 ] 中国が防空識別圏を設定

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 中国が動きました。日本の領土である尖閣諸島の上空を含む、東シナ海に一方的に防空識別圏を設定してきました。防空識別圏に他国の航空機が進入してきた場合、どこの国でも、戦闘機をスクランブル(緊急発進)させて領空侵犯を阻止します。日本もこれまで、防空識別圏に入ってくる中国機に対して航空自衛隊がスクランブルを重ね、退去させてきました。


 その日本の防空識別圏と重なるような形で中国が防空識別圏を設定した…中国の国防省は、圏内を飛ぶ各国の航空機に対して「国防省の指令に従うこと」、「飛行計画の提出を求める」といったが公告を出しました。また、従わない航空機には「防御的緊急措置を講じる」として、スクランブルを行うことも明らかにしています。つまり、一方的に設定した防空識別圏への進入を武力で排除すると言っているわけです。

 尖閣諸島をめぐって中国は、これまでも中国海警局の公船を尖閣周辺の日本の排他的経済水域(EEZ)へ頻繁に進入させてきました。もう、それが当たり前画のようになっているため、ニュースにならないくらいの頻度です。そして、海警局の乗組員が中国漁船に対して立ち入り検査を行っています。もちろん、日本が管轄権を持つ海域での法執行は国際法違反と知っていてどこ吹く風。さもそのエリアで法執行を行っているかのように装う“やらせ行為”を繰り返し、既成事実の積み重ねを図ってきました。

 しかし、今回の動きはこれまでとは違い、力ずくでも現状を変更しようとする動きです。尖閣諸島をめぐる日中の対立を、武力で解決していくと宣言したに等しく、話し合いによる日本との関係改善を拒否するという意思表示です。日本の領空に中国機が侵入してきた場合、日本が躊躇なく撃墜命令を下せるかどうかといった問題がより顕在化するわけで、ある意味で日本への“宣戦布告”です。

 だからこそ、米国は日本以上に機敏に動き、ケリー国務長官、ヘーゲル国防長官、国家安全保障会議(NSC)が歩調を合わせて声明を発表。中国の一方的な行動は誤解と誤算による不測の事態の危険性を増大させる、とその行動を非難した上で、「尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象であることを米国は再確認する」、「日本を含む同盟・友好国と緊密に協議する」と、中国を強く牽制しました。加えて、防衛識別圏が重なった台湾と韓国も中国の行動に「遺憾の意」を表明しています。

 これに中国も応酬。日米の批判に対して、人民解放軍の機関紙「解放軍報」は25日、「国家主権を守ろうとする中国軍の決意を見くびってはいけない」という社論を掲載。その中で、「防空識別圏の設定にはどの国の許可もいらず、大国の顔色をうかがう必要はない」、「1969年に日本が防空識別圏を設定した行為こそが非常に危険で一方的な行為だ」と反論しています。また、中国共産党の機関紙「人民日報」系の「環球時報」は、「もし日本の戦闘機が中国の防空識別圏内で中国機の飛行を妨害するなら、中国の戦闘機も断固として日本の戦闘機の飛行を阻むべきだ」という主張を展開しました。

 チャイナ・ウオッチャーの間には「中国一流のブラフ(脅し)であり、宣言したけれど、実際にはスクランブルは行わない口先介入」という見方もあります。また、東京の中国大使館が今月8日、日本にいる中国人に対して、「緊急事態に備え、連絡先を登録するよう」ホームページなどで呼びかけたという話が「環球時報」のインターネット版や「京華時報」のニュースで表面化。一方で中国外務省が「無用な連想や過度な解釈をすべきではない」と思わせぶりに否定してみせていることも、日米を揺さぶるために一芝居打っているといった見方に繋がっています。もちろん、実際にそれで終わってくれる方が良いに決まっています。

 しかし…。日本航空や全日空など日本の航空各社が識別圏を通過する台北便や香港便などの飛行計画書を中国当局に提出したことが25日に明らかになりました。台湾も飛行計画書を中国当局に提出したことを認めています。既成事実の積み重ねるという彼らの巧妙な手口…。飛行計画を提出するという踏み絵を踏まされる航空各社も気の毒ですが、それが続けば、中国の尖閣の領有権を半ば認めてしまうことにもなり兼ねません。アメリカの航空会社がどうするか、そこが知りたいところですね。

 安倍首相は25日の参院決算委員会で「尖閣諸島の領空があたかも中国の領空であるかのごとき表示で、全く受け入れることができない。一切の措置の撤回を求めている」と改めて中国を強く非難。外務省の斎木事務次官も中国の程永華(チョン・ヨンホワ)大使を呼び、改めて撤回を求めました。

 しかし、そういう抗議行動だけでは…。既成事実が積み上がることで、細かい事情や歴史を知らない欧米の知人たちの間では最近、「日本と中国は尖閣諸島をめぐって領土問題を抱えている」という認識が定着しつつあります。向こうのニュースには「中国の公船と海上保安庁の巡視船が揉み合っている短い映像」しか流れないのですから、そういう印象を持つのも当然でしょう。

 日本の防空識別圏はこれまで多くの国に認められてきました(あの韓国でさえも)。なのに武力を背景に強引にその変更を迫る中国の行為は“侵略”そのものです。中国はまず無人偵察機あたりを日本の領空に進入させてくると思いますが、スクランブルに上がった自衛隊機は国際法で定められた手順に則って粛々と撃墜すべきです(
日本の正当性を伝えるため、撃墜する映像を公開するということも必要)。領空侵犯を続けた大韓航空機が旧ソ連軍の戦闘機によって撃墜された時です。撃墜されたのは民間機、乗っていた乗員、乗客全員が犠牲になる痛ましい事件でしたが、国際法で定められた手順に則ったギリギリの判断だったことが解ると、国際的な批判は止みました。

 そしてその一方で、中国の“侵略”については、日中で話し合いをするのではなく、国連の安保理事会に話を持って行くべきです。中国がいかに危険なことを仕掛けているか、それを国際社会に広く理解してもらい、日本の主張を堂々と世界に問う必要があります。その過程で、日本の領有の正当性も広く世界に浸透していくことでしょう
。もう少し先になると思っていたのですが、尖閣問題は中国が先に動いたことで、どうやらここが天王山です。ここで引くと、中国に譲歩せざるを得なくなります。


2013年4月15日 (月)

★…きょうのニュース解説 [ 4月14日 ] 安倍首相が遺骨収集現場を視察


 安倍晋三首相が14日、小笠原の孤島・硫黄島を訪れました。今年度最初の「政府遺骨収集団」の作業を視察するためです。映画『硫黄島からの手紙』でも描かれた大戦末期1945年の島を巡る攻防戦では、栗林忠道大将率いる守備隊が玉砕、約2万1900人が戦死しました。しかし、戦後の遺骨収集は進まず、昨年24年度(2012年度)末で約1万150人分と、その半数に満たない状況でした。

 それが菅政権時代の平成22年度(2009年度)に予算が大幅に増額され、特命チームによる全島再調査の方針が決まったことで収集のピッチが上がりました。22年度には、米国立公文書館などの資料から島内2カ所に2千人規模の埋葬地があることが判明。その後、日本兵が立て籠もったとみられる壕なども新たに500カ所以上見つかりました。それもあって、22年度に822人分(前年度の16倍です!)、23年度に344人分、24年度に266人分という成果が出ています。

 こう書くと、政府は遺骨収集に一生懸命取り組んでいるようにみえます。しかし、硫黄島を除けば、実態はお寒い限りです。厚生労働省によると、沖縄と硫黄島を含む在外戦没者は約240万人。そして、そのうちまだ半分の約113万人の遺骨は未だ日本に帰っていません。政府による遺骨収集事業は昭和27年度(1947年度)に南方地域で始まり、平成3年度からはロシア・シベリアでも行われました。

 しかし、政府による大掛かりな遺骨収集作業は、実は昭和50年度(1980年度)で終了してしまっているのです。海没や北朝鮮などにあって収集困難な遺骨を除いて、約60万人分が収集可能と推定されながら、です。その後は、民間などから情報があった場合のみ収集しているという状況で、平成18年(2006年)度から「概ね3年間」の計画でフィリピン、東部ニューギニアなどで調査を行っているだけ。予算も約1億9800万円程度です。

 これに比べて、アメリカはハワイに米国防総省の「戦争捕虜・行方不明者捜索司令部=JPAC」の本部を置き、425人のスタッフを抱えて、太平洋戦争、朝鮮戦争などで行方不明となっている兵士約8万8000人の捜索と遺骨収集の作業をいまも続けています。5000万ドル(約55億円)という年間予算自体が、戦後日本が費やしてきた総額に匹敵する額です。

 ちゃんと成果も上がっていて、2007年6月には、硫黄島で行方不明になった1人の軍曹を捜すため、8人の調査チームを派遣されて調査に当たりました。また、今年3月には、サイパンで日本の政府収集団が日本兵の遺骨と一緒に米兵とみられる遺骨を発見、連絡を受けたJPACは、2日後にハワイから職員を派遣して遺骨を回収しています。

 国のためを想い、行くたくもない戦場に赴き、そこで散った命は帰って来ない。ならば、せめて遺骨の収集によって戦死者に報いるのが国の使命でしょう。遺骨をこのままにしておくということは「死んだ人たちは犬死」と言っているのと同じです。今回の調査について聞かれた遺族の方のコメントに「国からの赤紙1枚で問答無用で硫黄島に送られた。その遺骨は国の責任で帰すべきものだ」というものがありました。これに返す言葉がありません。

 日本の会社文化の中にはかつて、「骨は拾ってやる」という言葉が確実にありました。上司から部下に対して、後の責任は俺が持つから、お前は後顧の憂いなく、目の前の目標に全力投入で頑張ってくれ………という時に使わる言葉ですね。そんな言葉を持っていながら、この現状は何なのでしょう。空々しく聞こえます。

2013年1月 7日 (月)

★…きょうのニュース解説 [ 1月7日 ] 除染適正化推進本部が初会合


 汚染土壌の不法投棄  年明けから残念なニュースです。国の直轄事業として、福島県内で行われている除染作業で「手抜き」が横行しているという報道が続いています。朝日新聞の報道で発覚したのですが毎日新聞のインタビューに答えた作業員は「そもそも仮置き場が足りない。『置くところがないから仕方ないべ』と捨てることが日常茶飯事になっている」と証言しており、現場では「手抜き」が常態化していることは明らかです。

 国の除染作業は昨年の夏から、建物や道路から20メートル以内を対象に始まり(これ自体非常に遅いのですが)、福島県内の11市町村を除染特別地域に指定して行われています。環境省が元請けと(ゼネコン各社)契約した作業ルールには(1)はぎ取った土や落ち葉はすべて袋に入れて回収し、飛散しないように管理(2)高圧洗浄機の使用は汚染水が飛び散るため雨どいなどごく一部でしか使用できず、住宅の屋根や壁は手で拭き取るかブラシでこする(3)洗浄に使った水は回収ーーー細かいことまで決められています。それがまったく無視されていたということです。手抜き作業を行っていた人たちは、放射性物質汚染対処特別措置法に抵触する可能性があります(除染後の廃棄物などを不法投棄した場合、5年以下の懲役か1000万円以下の罰金が科されます!)。

 事業を監督している環境省は何をしていたのか。報道が出たことできょう7日になって井上副大臣をトップとする「除染適正化推進本部」の初会合を開き、今後は監視態勢を強化し、全地区に環境省職員や監督補助員を常時配置すると言っていますが、これもいまさらの話ですね。事実、現地本部である環境省福島環境再生事務所は、朝日新聞の取材に対して、住民から「草がきちんと刈り取られていない」や「洗浄に使った水が漏れている」といった苦情が多数寄せられていたことを認めている上、「ひっきりなしに電話がかかってきて、いちいち記録をとっていられなかった」と打ち明けています。手抜き除染の横行を知りながら、見て見ぬ振りをしていたということを認め、テンとして恥じない。官僚たちのデタラメぶりがまた明らかになりましたが、ここまで来ると、もう何をか言わんやです。

 こうした除染作業に投じられる税金は、環境省によると、(1)平成23年度第3次補正予算で2459億円、(2)24年度当初予算で4513億円、(3)23年度の予備費分約2179億円(4)24年度での支出を合わせると総額約1兆1480億円にもなります。それが形だけの「なんちゃって除染」に消えていくことになるのですから、こんな人を馬鹿にした話もないでしょう。

2012年12月25日 (火)

★…きょうのニュース解説 [ 12月25日 ] 笹子トンネルの通行止めが29日に解除


 笹子トンネル事故を受けた中央自動車道(中央道)の通行止めが29日に解除されることになりました。事故の後、現場付近で上下線とも通行止めが続いていましたが、生き残っていた下り線のトンネルの天井板の撤去など応急措置が終わったので対面通行で通すというのです。コンクリート製の天井板が崩れ落ちるーーそんなよもやの事故で9人が死亡したのは今月2日のことでしたが、そのニュースを聞いて、改めてあの時の中日本高速道路株式会社(中日本)の首脳陣の対応を思い出して怒りが込み上げてきました。

 あの時ーー記者会見が行われるまで数時間。しかも、会見に出てきた金子剛一社長ら幹部は「なぜ崩落したか分からない」や「老朽化もあるかもしれない」といった言葉を口にするだけ。自社がどんな仕事をしていたのか、そんなことすら説明出来ないのです。百歩譲って、知らなかったのならなぜ会見までに調べないのか、こうなると人として疑わざるを得ません。加えて、その下の担当者も質問に即答できない場面が目立ち、会見の後も、点検時期をめぐっての訂正が続きました。当事者意識の欠如だけが目立った会見と言ってもいいと思います。

 その後の調査で、天井板を支えるボルトが抜け落ちたことが原因と解りました。本来トンネルは、年に一度は「定期点検」を行い、5年に一度は「詳細点検」を行なわれることになっています。その「詳細点検」は、本来はハンマーのようなもので叩き、その音で取り付け具合や劣化や判断する「打音検査」をすることになっているのですが、彼らは「詳細点検」といっても2000年以降は目で見るだけの「目視検査」で済ませていたことも解ってきています。設備は古くなる一方なのに12年近くも放ったらかし。つまり、彼らの手抜きが事故に繋がったということです。

 では、笹子トンネルの維持・管理の責任を負っている中日本はどんな会社なのでしょう。この会社、2005年の「小泉改革」で誕生した会社です。あの時の改革で旧・道路公団が、東日本、中日本、西日本という3つの高速道路株式会社に分割され、民営化されたわけです。しかし、民営化後も3社への官僚の天下りは続いていて、いまだに「親方日の丸」的な体質をずっと引き摺ったままなのです。

 しかも、旧・道路公団時代が分割されたことで、彼らのような「事なかれ主義者」のための天下りポストが増えているのです。旧・道路公団時代は、役員は総裁、副総裁、理事の計8人でした。それが現在は、取締役と専任執行役員を合わせると、3社で51人に増えました。中日本は取締役6人、その年間報酬総額は1億1158万1000円(平均1860万円)で、6人のうち2人が国土交通省からの出稿者とOBです。その下にぶら下がっている、いわゆるファミリー企業15社の役員に旧・道路公団の出身者が35人もいます。

 私は、天下りがすべて悪いと言っているのではありません、中にはやる気のある人もいるはずです。しかし、少なくとも12年近くも杜撰な検査体制を放置していたのですから、いまの幹部たちには「人の命に関わる仕事に関わっている」といった責任感が希薄だったことはハッキリしています。そして、安全を後回しにしていたことは、数字をみれば一目瞭然です。有価証券報告書によると、12年3月期の連結売上高は約6000億円で、当期利益は約69億円です。ところが…。昨年度の「維持修繕費」のうち、「土木構造物(トンネル)修繕」は売上高の0.1%にも満たない5億円。一方で、社員の平均年収は約800万円。安全は二の次、三の次、民営化は競争がある業種でないと意味がなく、単なる手抜きを招くということがまた一つ明らかになりました。

 もう一つ驚いたことは、経営陣の危機感のなさです。本当の民間企業なら、こんな大事故を起こせば一発で経営危機に陥っても不思議ではありません。真の経営者ならば、そのことも心配するはずです。しかし今回、彼らには危機感もなければ緊張感も希薄です。つまり、所詮は他人事といった風情なのです。そこにあるのは…。「親方日の丸」的な体質です。あれだけの原発事故を起こしながら、「どうせ潰れない」と、当事者意識の乏しい東京電力と同じということでしょう。

 それにしても、いったい、いつからなのでしょうか、日本人がこんなに無責任になったのは。それでも処罰されないまま彼らが放置されてしまう状況は本当に嘆かわしい限りです。

 加えて、もう一つ問題があります。それは民間会社になったことで、彼らに国民の監視の目が届かないことです。旧・道路公団時代は国会の監視の目がまだ届いていましたが、いまは昔の話です。今回の事故で、「小泉改革」によって民営化された3社が、かつての道路公団以上の天下り企業に堕してしまっていることが改めてハッキリしました。新しい内閣には、民営化された事業を継続的に監視する委員会などを作ってもらいたいと切に願います。

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