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2015年12月17日 (木)

[きょうのニュース快説] アメリカの利上げと原油輸出解禁

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   アメリカが攻勢に出ています。アメリカの中央銀行の役目を担う「米連邦準備制度理事会(FRB)」がきのう16日、2008年から7年間続けてきた事実上のゼロ金利政策を止め、9年半ぶりに利上げに踏み切ることを決めました。0.25%の引き上げと政策金利の誘導目標は小幅ですが、「リーマン・ショック」という金融危機の震源地となったアメリカが、日欧に先駆けて異例の金融緩和策を止めることになりました。ドルの金利が上がれば、資金がドルに集まるようになって新興国の株式と通貨売りが進むでしょう。中国を含めた新興国経済にどれくらい打撃を与えるか、ちょっと心配です。


   そのニュースの影に隠れてしまいましたが、先週もう一つ、アメリカ絡みの重要なニュースがありました。なんと原油の輸出を解禁することを決めたのです。アメリカは第1次石油危機の後、1975年に「エネルギー政策・保存法」を制定して輸出を原則として禁止、例外的にカナダなどごく一部の国に少量を輸出しているだけでした。40年ぶりの解禁です。


   原油というと、日本ではどうしても中東のイメージですよね。しかし、アメリカはいまや世界最大の産油国なのです。意外に思う人も多いでしょうね。それもこれも、2010年代に入って「シェールオイル」と呼ばれる原油の産出が急増したからです。EIA(米エネルギー省)の2014年のシェールオイルと在来型の原油の産出量は合わせて日量約1397万バレル。エネルギーを自給自足出来るようになった……中東に関心を失ってしまったのも、訳なしではないのです。


   今回の決定は、石油開発業者を中心に強まっていた輸出の解禁を求める声に応えたものです。産出が増えている「シェールオイル」はガソリンなどを多く含む「低硫黄原油=軽質油」。アメリカ国内の製油所はそれまで扱いが多かった中東系の「高硫黄原油=重質油」に対応しているところが多く、その精製が(原油をガソリンや重油、軽油、灯油に分ける作業ですね!)追いつかないのですね。ならば、原油自体を輸出!というわけです。


   それがどのような影響を及ぼすか…。例えば、「シェールオイル」と呼ばれる原油の産出が急増したことで、アメリカでは「軽質油」の代表銘柄ナイジェリア産原油の輸入が急減。2010年のピーク時には日に120万バレルあった輸入が14年7月にはなんとゼロになってしまいました。アメリカ一国でそれだけの分がこの二、三年の間でだぶついているわけです。


   そこにもってきて、西欧諸国のイランに対する経済制裁が終わって原油輸出が再開されました。エジプト、ベトナムでも有力な海底油田が見つかり、開発が進んでいます。そこにアメリカからの輸出……。中国を中心とする新興国の景気減速により需要が減少しているところに供給過剰が重なって原油の価格が暴落していますが、もう一段も二段も価格が下がりそうです。原油価格は、昨年は100ドルを超えていましたが、現在は約45ドルまで急落。その煽りを喰って、産油国の多くが大幅な収入減に見舞われています。


   原油安については、IMF(国際通貨基金)が先月、ちょっと気になる報告書を出していました。今後も1バレル50ドル(約6,000円)前後で推移すると、中東産油国の多くが5年以内に手持ちの資金不足に陥る可能性があるというのです。原油安による中東地域の損出は、今年だけで推定3600億ドル(約43兆2000億円)と予想。湾岸産油国にとっての3600億ドルは、名目GDPの21%にもなります。 加えて、中東の産油国の多くは、シリアの内戦や「IS=いわゆるイスラム国」対策のための資金などが嵩んで財政状況が悪化しています。


   将来を見据えて原油収入を蓄え、1バレル50ドルでも約25年は大丈夫というクウェート、カタール、UAE(アラブ首長国連邦)はともかく、バーレーンとオマーンは数年内に国民に税負担を(いまは無税で福祉や教育、医療などは無償)求めざるを得なくなるとしています。OPEC(オペック=石油輸出国機構)の盟主サウジアラビアも、バーレーンに対する最大の支援国で徐々に余裕がなくなっていくとみられています。いまはアラビア半島の端にある隣国イエメンの内戦にも地上軍を送って介入しています。ナイジェリアもしかり。アフリカ最大の産油国で、サブサハラ・アフリカ(北アフリカ以外のアフリカ)49カ国全体のGDPの4割近くを占める経済大国ですから、アフリカ経済全体にも大きな衝撃です。


   天然ガス市場も似たようなもので、「シェールガス」も生産拡大が進んで価格が下がり、アメリカでは発電用の原料が石炭から天然ガスにシフトしまって石炭需要が急減。08年のピーク時には南米コロンビアから年間2400万トンも輸入していた石炭の輸入は600万トンに急減。供給先を失ったコロンビアも厳しい状況です。



   こうやって経済の玉突き現象を追いかけていくと、世界中のあらゆるものをこの10年近く“暴食”してきた中国経済の失速がいま、いかに大きな影響を及ぼしているか、それがよく見えてきます。そして、地球上のどこかで経済成長が起きてくれないと経済的にやっていけないという、人類の姿もまた見えてきますね。



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