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2014年2月11日 (火)

★…佐村河内という作曲家

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作曲家の佐村河内守(さむらごうち・まもる)氏が別人に作曲してもらっていた、そのことで波紋が広がっています。佐村河内氏は耳が聞こえないことから“現代のベートーヴェン”と称され、メディアでもよく取り上げられてきました。その人気作曲家にゴーストライターがいた…。まあ、マスコミがいちばん飛び付きそうな話です。6日にはゴーストライターだった作曲家の新垣隆(にいがき・たかし)氏が記者会見、「私は、佐村河内さんから出会った日から18年にわたり、彼の代わりに曲を書き続けてきました。彼が世間を欺いて曲を発表していることを知りながら、曲を書き続けた私は、佐村河内さんの共犯者。障害をお持ちの方、彼のこと信じて曲を聞いてくださった方、演奏家のみなさま、本当に申し訳ありませんでした」と謝罪しました。


その会見で新垣氏が語ったことで、おおまかな構図はハッキリしました。二人にとっての作曲のやりとりについては「私が録音したものを、彼が聞き、彼がそれに対してコメントをするということは何度もありました」というスタイルであり、金銭面のやりとりは「印税については私は関係ありません。佐村河内氏から1曲ごとに報酬を得ていました。正確ではありませんが、18年間で20曲以上作り、およそ700万円を得ました」という状況だったということです。極めつけは、報道陣から「それでは、佐村河内氏が耳が聞こえないことをよそおっていたのか」と問われると「はい」と言い切ったことでしょうか。つまり、佐村河内氏は「売らんがため」に全聾であるということや被爆地出身であるということを強調し、悲劇的境遇を売り物にしていたわけです。


もう一つ、今回の会見でみえてきたことがあります。皮肉にも、佐村河内氏の、「音楽を作りたい」という気持ちは本物だったということです。自分の頭の中には音楽のイメージが湧く。しかし彼は楽譜が書けず、「演奏して貰える作品」にする能力がない。そのもどかしさたるや…。そこにイメージを伝えるだけで自分の想いを「演奏して貰える作品」にしてくれる新垣氏が現れた。そのことは彼の「それまでを」一変させたことは想像に難くありません。彼にとっての一筋の光明だったのではないか…。そしてその時点では、「キワモノ・ビジネス」のことなど念頭になかったと思うのです。ところが…。「技術」を手にし、それが日常化していく中で、佐村河内氏は最初の新鮮な喜びを忘れてしまった。借りてきた「技術」を自分が元々持っていた「技術」と錯覚してしまったわけですね。新垣氏の技術を使えるようになったことで、もう「気分は作曲家」になってしまったのですね。


そして、新垣氏を通じて音楽を作ることが出来るようになったからこそ、「キワモノ・ビジネス」に走った。実際に音符を書き連ねるという作業がない分、そうすることへのハードルは低かったのでしょうね。その誘惑に負けてからは一直線で、「売らんがため」の循環から抜け出せなくなってしまった…。知り合いの業界関係者の話では、彼の周りにはそのビジネスに期待する人間が群がっていたといいます。これから賠償を請求されたりするようなことになると思いますが、実際に彼の手元にどれくらいのお金が残っているか…。もちろん、そんな循環にはまり込んだのは佐村河内氏自身の責任ですが、「キワモノ・ビジネス」がうまくいったが故に彼自身は「進むも地獄、退くも地獄」の状況になっていたのでは、その泥沼の中でもがいていたのでは、とも思うのです。


一方、世間は真逆で、そのストーリーが多くの人を惹きつけ、NHKが持ち上げたこともあって、普段はクラシック音楽を聴かない人たちもその音楽にも熱狂しました。その勢いの前で、音楽そのものについてはあまり語られることもなく、「神格化」されていったように思います。一方、クラシック音楽業界は、彼の存在について、彼の音楽について(中身は新垣氏の音楽ですが)距離を置いていました。そこに「キワモノ・ビジネス」の臭いがあったからで、集客についてはもう10年以上「キワモノ・ビジネス」に主導権を獲られていることへの疲れもあったからです。今回の件で「お涙頂戴ストーリー」が剝げ落ちた「HIROSHIMA」、これからも聴かれるでしょうか? 音楽そのものに生命力がなければ人々の心に残らない。その意味で曲の真価が問われるのはこれからです。出来るまでの課程に問題があったとしても、人の心を打つものであればそれも人類の遺産として残っていく…そこに音楽の素晴らしさがあるのですが…。




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