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2012年6月

2012年6月27日 (水)

★…連載:北陸新幹線 [4] 大きい福井で止めるメリット

 これまでの連載の中で、さまざまな思惑から沿線の自治体自体が敦賀〜新大阪間のルートを決められないこと、一方で国も新幹線を新大阪まで伸ばすことに情熱をなくしつつあることを書いてきました。その結果、敦賀開業時には、敦賀と関西圏、中京圏を結ぶフリーゲージ・トレインが走ることになる、そして、それを走らせるのであれば、北陸新幹線の終点を福井にした方が良い、と書きました。(1)地元自治体が負担する建設費を浮かすことができる(2)実は利便性が上がる、そして肝心なのは、(3)福井以西の自治体は並行在来線の負担を背負わなくても済む、という理由からです。

 福井以西の建設費が浮くのは誰でも解ります。(2)の利便性が上がる、それはこういうことです。新幹線が敦賀まで伸びると、関西圏、中京圏から走ってくるフリーゲージ・トレインも当然、敦賀から新幹線の路線を走ります。ということは、これまで「武生駅」、「鯖江駅」から福井、金沢、富山方面に(または北回りで東京に)向かう人は新たにできる「南越駅」から乗り込まなければなりません。先を急ぐ人はさらに福井で速達型に乗り換える、あるいはフリーゲージ・トレインの終点である富山でそこから先の列車に乗り換えなければいけません。

 ところが…。新幹線が福井までなら、フリーゲージ・トレインは福井まで在来線を走るので、これまでのように「武生駅」、「鯖江駅」から乗り込むことができる上、富山まで乗り換えなし、かなりの時間短縮になります。反対方向に向かう場合の時間短縮はありませんが、「武生駅」、「鯖江駅」から在来線に乗り込むような感覚で新大阪や米原に向かうフリーゲージ・トレインに乗り込めるので便利です。沿線人口を考えれば、これは捨てがたいポイントです。

 そして、最大の問題は(3)、並行在来線の問題です。新幹線の並行在来線は新幹線開業後、JRの手を離れ、地元自治体が中心となる第三セクターによって運営されることになります。収入の軸はもちろん運賃で、そこに貨物調整金のような使用料を加えてやっていかなくてはいけません。ところが、“先輩格”の東北新幹線、長野新幹線、九州新幹線とも苦戦しています。例えば、長野県。1997年の長野開業で在来線の車両や設備を引き受けて第三セクター「しなの鉄道」がスタートしたのですが、設備投資の償却負担が重く、2004年度に県が実質的に103億円を債権放棄して支援する事態となりました。

 また、新潟県のように長い並行在来線を抱えると大変です。長野開業の時点で、旧・信越本線の直江津~妙高高原の37.7キロを並行在来線として引き取り、次の金沢開業で北陸本線の富山県境~直江津の60.6キロが加わりますが、他の県に比べて沿線の乗客が少ないため、一昨年の試算で「運賃を60%アップしても30年間の公的負担が300~600億円になる」という試算が出ました。そこで慌てた新潟県は、国通省との3年越しで折衝を重ね、この2月に貨物調整金の増額を含め、国から「開業後30年間で780億円」という新たな支援を引き出したところです。

 では、金沢開業で初めて並行在来線を抱えることになる富山県、石川県の試算はどうなっているのでしょう。石川県が引き取るのは、北陸本線・金沢~倶利伽羅の17.8キロ。その運営会社の収益予想がこの2月24日示されましたが、線路などの鉄道資産や新型車両の購入、運行を管理する指令システム整備などの初期投資を90億~100億円程度と想定し、現在と同じ1日約110本を運行すると、開業10年間の赤字が約20億円という数字が出ています。運賃でその赤字を解消する場合、運賃を現行よりも27%の値上げする必要があります。

 一方、富山県が引き受けるのは、北陸本線・石川県境~新潟県境の98.7キロ。こちらも県や民間企業が出資する運営会社の準備会社を7月下旬に発足させる計画です。県が5月21日に並行在来線対策協議会に示したデータでは、並行在来線に必要とされる21編成の新型車両などの初期投資は256~288億円で、現行運賃では10年間で42億~45億円のマイナスとなるという結果です。車両の3分の2程度がJR西日本から譲渡されると初期投資を50億円近く減らすことが可能としていますが、それでも運賃を25%アップして収支が均衡するという話しです。

 福井県は既に「えちぜん鉄道」、「福井鉄道」という第三セクター方式の鉄道会社を抱えています。ここにもう一つ“赤字路線”を抱える格好です。しかし、新幹線を福井で止めれば、福井から先はこれまでのようにJRによって運営されます。つまり、福井以西の鯖江市や越前市、敦賀市などの自治体は並行在来線の負担を免れ、「福井鉄道」の支援に専念できるのです。

 併せて、福井は在来線、並行在来線の終点、新幹線の終点としての終点となり、さまざまな機会に「福井」という言葉が使われるようになります。その広告効果をお金で賄おうと思うと、何億円にもなります。福井で止めても、新幹線誘致に奔走してきた福井市在住の有力者たちは「乗り換えなし、3時間弱で」東京に行けるようになります。彼らの顔も立ち、彼らはメリットを享受できます。ならば、福井で止めるが良い、のではないですか。


 連載終了








2012年6月25日 (月)

★…連載:北陸新幹線 [3] 上手に使いたいフリーゲージ・トレイン

 この5月29日、国土交通省が北陸新幹線の敦賀開業時に新幹線と在来線との間を直通運転できるフリーゲージトレインを導入する方針を固めた、という報道がありました。新幹線は幅1435ミリの「標準軌」、在来線は幅1067の「狭軌」と線路の幅が違うのですが、フリーゲージ・トレインは車輪の幅を変えることでどの路線でも走ることができます。敦賀開業時にその先のルートが決まっていない可能性が高いので、国交省としては敦賀から先は取り敢えずこの車両で在来線を走らせ、乗り換えなしの列車を作ろうというわけです。

 その候補に上がっているのが、北陸と関西圏を結んでいる特急「サンダーバード」、北陸と中京圏を結んでいる「しらさぎ」という北陸本線の看板列車です。それを(1)フリーゲージ・トレイン化(2)どちらも富山始発で敦賀までは新幹線として走らせる(3)敦賀から先は、「サンダーバード」は湖西線と京都線を走らせて新大阪へ、「しらさぎ」は北陸本線と東海道線を走らせて名古屋へ走らせる、という構想です。

 この構想が浮上した直後、北陸や関西の知事は、敦賀~新大阪間がこの方法で結ばれると、国はそれでお茶を濁して、新幹線建設を敦賀で止めてしまうのではないかと警戒。福井の西川知事も今年の2月県議会で「フル規格による延伸が重要」とけん制しています。しかし、利便性を考えれば、なかなかいいアイデアです。便利関西圏、中京圏から金沢、富山方面に向かう人は敦賀での乗り換えがなくなるだけでなく、敦賀~富山は新幹線並みのスピードで走れるので、その分は時間短縮できます。なので国交省も、フリーゲージ・トレインの北陸3県間の利用者数も増加すると予想、1日あたり1万4400人と見込んでいます。

 そういうこともあって、六府県と関西広域連合、JR西日本といった関係機関も、導入についての国交省の提案について最終的には「暫定措置」という条件付きながら同意しました。ただ、そこまで考えるのであれば、もう一歩踏み込んで計画を見つめ直し、北陸新幹線の終点を福井にして、新幹線効果が薄れてくる福井以西はフリーゲージ・トレインにした方が良いのではないかと思います。敦賀開業が予定されるのは2025年ですが、それから2年後の2027年には、中央リニア(東京~名古屋間)開通も待っています。福井終点にすれば、3分の1を県が負担する建設費以外を大きく浮かせる、福井以西の自治体は並行在来線の負担を背負わなくても済む、しかも利便性も上がるのです…。

 次回に続く


2012年6月24日 (日)

★…連載:北陸新幹線 [2] メリット少ない敦賀終点

 金沢開業から約10年、2025年度に敦賀までの一括開業が予定されています。10年待たないで、途中で金沢〜福井間だけ先に開業させるプランがあっても良さそうなのですが、この2月に発表された国土交通省の交通政策審議会小委員会では取り上げられていません。つまり、福井県内に新幹線が走るようになるのは、この敦賀開業から、というわけですね。

 では、敦賀開業で福井県内から東京までの時間短縮はどれくらい進むのでしょうか。富山、金沢は現行の北回りのルートよりも(北陸線〜北越急行ほくほく線〜上越新幹線)1時間前後短縮されますが、福井県内のそれぞれの駅からの時間は以下のようになります。ちなみに北回り、南回りで、乗車券や在来線の特急券、新幹線の特急券を足した金額は(北回りはあくまでも想定ですが)1000円も違いません。
 ●…福井〜東京:3時間28分 → 3時間5分
 ●…南越〜東京:3時間26分 → 3時間10分(福井で速達タイプに乗り継ぐ)
 ●…敦賀〜東京:3時間 → 3時間21分

 どうですか…。現行の南回り(米原で東海道新幹線に乗り継ぐ)より時間が短縮されるのは福井だけです。敦賀は勝負になりません。また、鯖江市、越前市の人たちが福井から速達タイプに(=ひかりタイプに)乗るためには、新設される南越駅から各駅停車タイプの(=こだまタイプの)新幹線に一駅乗って福井に出るか、鯖江あるいは武生から並行在来線の普通列車で福井に出ないといけません。この数字にはその時間と福井駅での乗り換え時間は入れてありません。実際にはさらに20〜30分必要です。さらに南越からは「東京まで乗り換えなし」というメリットもありません。となると、福井以西の人たちの間では、これまで通り米原に出て東海道新幹線に乗り継ぐ人が多いのではないかと思います。

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 一方、北陸地方の都市間移動に関していえば、時間短縮効果は大きいですね。日本有数の車社会である北陸地方で、このエリアの移動に新幹線を使うか疑問ですが、これまでの半分の時間で移動することが可能になります。しかし、それでも敦賀延伸効果は限定的で、今年3月15日に発表された国土交通省の交通政策審議会小委員会のでは、関東と北陸を行き来する新幹線利用者は、金沢止まりに比べてわずか900人増の1日当たり1万7600人という数字が出ています。

 実はそれもこれも、敦賀で止まってしまうことが大きいのです。ならば、敦賀から先、大阪まで急いで繋げればいいのですが、なんと肝心のルートが決まっていません。最初の計画では若狭地方を(小浜を)通って大阪に抜けるとなっていましたが、建設自体が長く棚上げされている間に見直しが行われ、現在は改めて3つのルートについて、国や福井県、関西圏の滋賀県、京都府、大阪府、それにJRなどの間で議論が続いています。

 先日も京都府が試算を出したのですが、これが3ルートとも“帯に短し襷に長し”。例えば、「米原ルート」は建設距離が46キロと最短で建設費は3309億円で最も安くあがりますが、敦賀〜新大阪間の時間短縮効果は、在来線を使った現行の「サンダーバード」に比べて22~12分程度です。元々の「小浜ルート」は距離が128キロと最長で建設費が9229億円と嵩みますが、時間は36分短縮できます。湖西線に沿った「湖西ルート」は長さ94キロで建設費6768億円、短縮効果は28分です。確かに優劣付けがたい…。そこに様々な思惑が重なり、決定できないままです。

 福井県はじめ、六府県などは現在も、フル規格で大阪まで早期整備するよう強く要請していますが、ルートすら決まらないのですから、完全開業の目途も立ちません。つまり、北陸新幹線の終点が敦賀という状況が当面は続くことになります。そうなると、関西圏から走ってくる「サンダーバード」、中京圏から米原を経由して走ってくる「しらさぎ」でこれまで金沢、富山方面に向かっていたお客さんは敦賀で新幹線に乗り換えないといけません。そこで…。昨年急に浮上してきたのが、新幹線と在来線との間で直通運転のできるフリーゲージ・トレインを導入するというアイデアなのです。

 次回に続く


2012年6月23日 (土)

★…連載:北陸新幹線 [1] 金沢開業で変わる首都圏との関係

 そもそも北陸新幹線は、上信越・北陸地方を経由して東京都と大阪市とを結ぶことを目的とした路線です。整備計画が決定されたのは1973年11月。なんと40年も前のことでした。東京から高崎(ここまで上越新幹線の路線を走る)、長野、富山、金沢、福井、敦賀を経て大阪に繋ぐという構想で、このうち東京〜長野間が1997年(平成9年)10月1日に開業、暫定的に「長野新幹線」と呼ばれています。つまり、現在の「長野新幹線」は北陸新幹線の一部なのです。

 長野開業から15年、2014年度末にようやく長野〜金沢までの部分の一括開業が実現します。昨年12月27日には、政府が金沢〜敦賀の部分の建設についてゴーサインを出しました。それを受けてこの5月16日には、福井県と県内の沿線七市町が、敦賀開業後の(金沢〜敦賀間の)並行在来線の経営分離に同意。これで工事着工のための五条件がクリアーされました。金沢開業に続く、敦賀開業は2025年の予定です。ただ、敦賀から先、大阪までのルートはまだ決まっていません。

 では、金沢開業によってどれくらい便利になるのでしょう。実はこの2月27日、国土交通省の交通政策審議会第4回整備新幹線小委員会でほぼ全容が明らかになりました。
 ●…金沢開業時の設定本数は1日27往復。このうち、停車駅の少ない速達(=ひかり)タイプが14本、各駅停車(=こだま)タイプは13本
 ●…最高速度は260キロを予定。速達タイプの最速列車の場合、東京〜富山、東京〜金沢の所要時間はそれぞれ2時間19分、2時間38分となり、それぞれ1時間程度短縮される。また、速達タイプだと、富山〜金沢は18分程度で走り抜ける。

 これを見ると、富山、金沢エリアと首都圏はかなり近くなります。これまで首都圏に向かう場合、富山空港、または小松空港から空路を利用するか、鉄道利用の場合は北回り(北陸本線〜北越急行ほくほく線〜上越新幹線)利用者が多かったのですが、開業後は多くの人が新幹線を利用するようになるでしょう。

 JR西日本の予測もそうで、北陸三県と首都圏を往来する人のうち(1)北陸本線・北越急行ほくほく線・上越新幹線を乗り継ぐ約5,500人/日(2)富山・小松・能登の3空港から羽田空港まで空路を利用する8,000人/日(3)米原軽油で東海道新幹線に乗り継ぐ4,000人/日、の合計17,500人/日のほとんどが新幹線を利用すると予測しています。また、知り合いの航空会社の幹部も、富山空港、小松空港の利用者は減便の影響もあり、利用者は80%減と予測しています。

 石川県の予測も強気で、今は年間230万人という首都圏からの観光客を500万人に増やす目標を掲げています。2007年にまとめた「新幹線開業影響予測調査」によると、金沢開業が石川県に及ぼす経済効果は年間148億円で、新たに1600人の雇用を生むと試算している。一方で、いわゆる「ストロー効果(大都市へ人が流れ出ていく動き)」で27億円が吸い上げられ、330人の雇用が失われ、差し引き121億円のプラスになると算定しています。

 一方、新幹線が伸びてくると、路線がだぶる金沢以東の北陸本線はいわゆる「並行在来線」と呼ばれ、富山県や石川県、その地元の自治体が中心となる第三セクターの鉄道会社によって運営されることになります。名前はまだぜんぜん決まっていませんが、「加賀百万石鉄道」、「越中とやま鉄道」といった、地域性を強調した名前になるでしょうね。

 その一方で、「はくたか」、「サンダーバード」、「北越」、「しらさぎ」といった北陸本線の特急列車は、金沢止まり、あるいは始発となります。京阪神、中部圏から富山や高岡に向かう場合は、金沢で新幹線、または並行在来線普通列車に乗り継ぐことになります。福井から金沢まで買い物に行く程度なら何も困りませんが、関西圏、中京圏から富山方面に向かう人にはちょっと不便ですね。それで在来線、新幹線で直通運転するフリーゲージ・トレイン構想が浮上してきているところもあるのですが、金沢開業には間に合わないのでまた別に書きます。

 こうやってみてくると、富山、金沢の人たちにとって、金沢開業の影響はかなり出そうですね。では、福井県への影響は。金沢にやってくる観光客が激増するのだから、福井県はそれを何とか福井まで引っ張りたいのでしょうが、それだけの魅力を創造出来ないと厳しいと思います。福井まで出かけるのと大差ない費用でグランド・キャニオンを見に行くことが出来る時代です。そんなところに東尋坊を売り込んでも…。福井県の試算でも、首都圏からの旅客数を石川県では33%増と見積もっているのに対して、福井県はわずか3%増としかみていません。

 (次回に続く)

2012年6月22日 (金)

★…やりました、ニウスな夜「第5夜」

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おととい、そしてきのうの夜、「ニウスな夜」第5夜を行いました。
「ニウスな夜」は折々のニュースについて私が解説をする、という集まりなのですが、今回のお題は「新幹線が来たなら」でした。金沢開業が2015年初めに迫る北陸新幹線の全体像をもう一度見直してみようというわけです。今回は初めての参加者を含め、二夜で14人が参加。1日目は田村康夫県会議員も参加、県や県議会のこれまでの動きなどについて話をしてくれたので勉強になりました。

 今回は、●北陸新幹線の金沢開業●そもそも北陸新幹線とは●金沢開業で状況はどう変わる?●敦賀まで開業すると…●新幹線が来ることのメリット、デメリット●最大の問題は並行在来線の存在…、といったポイントに分けて分析していきました。そうやってみていくと、●金沢開業時点で福井に与える影響はあまりない●2025年に敦賀開業となっても(早ければ今年から工事に入るのですが…)福井市以西の県民にとっては金沢、富山が近くなることぐらいしかメリットがない、という“
不都合な”現実が浮かび上がります(敦賀から先、大阪まで伸びても)。反面、●新幹線建設費の(県内分の)3分の1を福井県が負担●並行在来線を運営する第三セクターを地元自治体の負担で設立、運営しなければならない●その赤字が膨らまないよう並行在来線の運賃を値上げする必要があり(富山県、石川県で30%弱の値上げを予定しています)●ダイヤ編成もケチる必要あり…、そういうデメリットが目立ちます。

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 そういうことを考
え合わせて、私はこう考えます。
(1)敦賀から大
までの3ルートについてはどれも時間短縮効果が低い
(2)だから政府も決めないし、決められない

(3)つまり、東京〜大阪を結ぶという
当初の意義、意欲が薄れている
(4)だから政府も、敦賀から先は在来線を走るフリーゲージトレインを走らせてお茶を濁そうとしている
(5)そういう考えならば、フル規格の新幹線は福井で止めて以西のJR線を残し、それ
東海道新幹線、2027年に名古屋まで開通する中央リニアに繋ぐ
(7)福井〜敦賀
の建設費を浮かして敦賀に空港を作り、県内で陸と空の立体的な交通体系を構築する
 
 私がそう考えるのも、東京
生活の経験からみみて、新幹線が出来ても首都圏の人たちが3時間以上もかけて、今ある“福井の魅力”に惹かれてやってくると思えないからです。まあ、細かいことはこれから連載していきますが、県民の人たちにも、見栄でなんとしても新幹線という意識は捨て、本当に便利なことは何かを考えてほしいと思います。
 
 ところで、次回の「ニウスな夜」は、7月11日(水)、12日(木)午後7時半からになりました。「女性宮家」、「橋下旋風」、「尖閣諸島問題」、「原 発」、「北陸新幹線」をテーマしにしてきましたが、次回は若い参加者の希望で「年金」をテーマにします。11日、12日とも同じ内容で話をしますので(1 日15人)、興味のある方は都合の良い日に参加してください。会費はコーヒー飲み放題付で1500円、希望者は私までメールでご連絡ください。







2012年6月19日 (火)

★…あす20日、あさって21日は「ニウスな夜」第5回


 「ニウスな夜」第5回が、あす20日、あさって21日に迫ってきました。今回は「新幹線が来たなら」というタイトルで、北陸新幹線の将来を探っていきます。Photo_2
 いろいろと調べてみて解ってきたことは、福井県の場合、東京までの時間距離は福井市以北のエリアは短くなりますが(どれも3時間前後)、鯖江市より以西のエリアは短くはならないという“不都合な”現実です。その一方で、(1)新幹線の延伸したエリアの在来線が第三セクター化されて運営が厳しくなり、(2)小松空港に飛んでくる便がぐっと減るので、アクセスが新幹線に一本に集約されると選択肢がなくなって不便になるという事にもなりかねません。

 新幹線の延伸で福井にやって来る人が増えるという予想も十分に解りますが、小松空港という拠点空港がなくなることが首都圏を含めて遠距離からの来訪者の動向にどう響くのか、蓋を開けてみなければ予断を許しません。あす、あさっての会では、そういった考える材料を参加者に提供しようと思っています。

 


2012年6月14日 (木)

★…[ きょうのニュース解説 ] 6月13日:政府の再犯防止対策ワーキングチームが「再犯防止に向けた総合対策案」を発表

 

 大阪・心斎橋の路上で10日、佐々木トシさんと南野信吾さんが刺殺されるという通り魔事件が起きました。たまたま現場に居合わせた二人が滅多刺しにされたという凄惨さに戦慄を覚えた人も多いと思います。犯人の礒飛京三容疑者は取り調べに対して「自殺しようとしたが死ねず、人を殺せば死刑になると思ってやった」と供述していますが、何の罪もない人を巻き添えにするとは。言語道断ですね。

 今回の事件を含め、このところ再犯の増加が目立ちます。法務省の2011年版犯罪白書によると、成人の再犯者は犯罪総数の28・2%で、殺人事件に限ると30・6%にもなります。礒飛容疑者は覚せい剤取締法違反の罪で先月24日に二度目の服役を終え、新潟刑務所を満期出所したばかりでした。再犯が増加のするのはなぜか…。その理由は「再犯者の約7割が無職」という数字の中にあります。

 社会復帰とはいうまでもなく、「仕事をして収入を得て自立した生活を送る」ことです。しかし…。仕事を見つけるといっても、まともな人がなかなか仕事を見つけられない中、社会の冷たい視線を浴びながら手に技術もない出所者が仕事を見つける、それがどれほど大変なことは誰にでも想像がつきます。では、彼らの社会復帰を進めるための公的な支援システムはないのか? これが調べれば調べるほど心許ない状況です。

 出所時点で家族や身寄りがいない場合、当日から住むところに困ります。それで出所から約半年間の住居と食事を提供する更生保護施設が設けられているのですが、全国に101カ所、定員は全部で2200人です。毎年の出所者は約3万5千人、その約半分が「身元引き受けのない者」という中で、まったく収容能力が足りません。しかも、公的な支援システムはこれだけなのです。

 幸い、そこにいる間に仕事が見つかったとします。ところが世の中、最初の給与をもらうのは約1ヵ月後です。その間の住居、最低限の食事にもお金が必要、つまり、まず「最初に出費ありき」ですが、出所者には生活をスタートさせるそのお金が自体がほとんどありません。出所時に4~5年分の報奨金を持っているといわれますが(刑務所内の作業に時給6円で従事して溜めたお金)、それも10万円前後。更正保護施設に入れた上、仕事を見つけられた人間ですらそんな状況なのですから、入れなかった人間の惨状は想像にあまりあります。

 つまり、この状況を放置しておくことは、社会が「出所者にまた刑務所に戻れ」というメッセージを出しているようなものなのです。現実に「3食付きの刑務所に戻った方が安閑として暮らせる」と思って再犯を重ねる高齢の受刑者も増えてきました。しかし、それでは、犯罪者を刑務所に入れて矯正させるために社会的なコストを(職員人件費などを入れて一人あたり年間263万円)かけている意味がありません。コストをかけるからには、出所者にはちゃんと更正して社会復帰を果たしてもらい、よき隣人として、また良き納税者として、国家の“戦力”となってもらわないと困るのです。

 では、彼らの社会復帰を促進させる解決法はないのか? 刑務官を長く務め関連著書も多い坂本敏夫氏が、さまざまな機会にこういった提言をしています。(1)身寄りのない出所者には出所時に生活費または再出発資金としてとして少なくとも50万円程度を渡す(2)本人に渡すとそのまま使ってしまう可能性もあるので、定住を希望している地域の行政と連携してそこに委託する(3)その資金で家を借り、仕事を探す(4)家を借りることができれば住民票が交付され、最悪の場合は生活保護の受給ができる
 確かにこれは、現実性のある社会復帰プログラムとして注目に値します。最初に渡したお金は、仕事を始めてから返済して貰えばいいのですから。

 もう一つ気になっていること。それは再犯者の中でも、再び罪を犯して5年以内に刑務所に戻る人の割合は、「満期出所者」の方が「仮釈放」を大きく上回っていることです。磯飛容疑者も「満期出所者」でした。実は「出所」には、更生に向けて指導・監督がなされる保護観察がつく「仮釈放」(よく映画などに出てくる保護司がフォローする仕組みです)、刑期を終了して保護観察がつかない「満期出所」の二種類があるのです。そして、「満期出所」の方がいきなり自由を与えられる分、これまで書いてきたように厳しい現実にいきなり放り込まれること意味します。それ故、再犯率が上がるという状況を招いています。

 ではなぜ、「満期出所」の人間には「仮釈放」のように保護司によるフォローなどが行われないのか…。新聞などによく登場する元・東京地検公安部長の若狭勝弁護士によれば、「満期出所者は、刑がそれで終わるということですから、国から強制的に『指導』とか『教育』とか、できないという状態になっています」。つまり、フォローしようにも法的な権利の壁があってできないという、本末転倒なことになっているのです。

 刑務所に行くようなことをする人間を切り捨てるのは簡単です。しかし、本当に更正できないのはごく一部でしょう。犯罪者を刑務所に入れることの意味は「お前は社会に害を及ぼす人間なのだから、一定期間みんなの前から消えていろ」ということにあるわけではありません。ちゃんと更正して社会復帰を果たしてもらってこそ、国民がコストを負担する意味が生きてきます。このまま再犯は増え続けます。それは社会の安全を脅かすだけでなく、それを取り締まり裁く警察や検察、裁判所、刑務所などの行政コストを膨らませ、ツケはやがて国民に跳ね返ってくるのです。

 13日には政府の再犯防止対策ワーキングチームが、満期出所者の住居の確保、高齢受刑者への出所後の生活指導強化のための「再犯防止に向けた総合対策案」 を発表しました。政治家たちにはそうした負の連鎖を断ち切る前向きな施策を早く導入してもらわなければなりません、それは彼らにしかできないのですから。


2012年6月13日 (水)

★…映画「外事警察~その男に騙されるな」

 映画「外事警察~その男に騙されるな」を観てきました。2009年冬に6回シリーズで放送されたNHKのドラマ「外事警察」の、いわゆる「劇場版」です。スパイ物などで知られる麻生幾の小説『外事警察』を元にしたドラマで、警視庁の公安警察のチームとテロリストのバトルが描かれていました。脅しや買収、誘拐までありとあらゆる手を使う主人公“公安の魔物”住本健司、その部下の松沢陽菜(尾野真千子)たちのグロテスクな仕事ぶりが印象的でした。

 そんなドラマの劇場版なので、キャストは同じです。渡辺と尾野たち「住本班」のメンバー、上司に当たる石橋凌や遠藤憲一といった“濃い役者”が顔を揃えます。そこに今回の話に合わせて、真木よう子、田中泯、さらにキム・ガンウ、イム・ヒョンジュンをはじめとする韓国人キャストが加わっています。制作は同じく劇場版が作られた「ハゲタカ」のチームが当たったそうですが、演出はドラマを手掛けた堀切園健太郎監督です。

 一方、映画には、続編の小説『外事警察 CODE:ジャスミン』の話も取り込まれています。韓半島の某国(まあ、誰が考えても北朝鮮ですが…)から濃縮ウランが流出、同時に日本では大学から機密データが盗まれるという事件が起きます。そこから想像されるのは日本での核テロ…。それを阻止すべく、「住本班」が動き出しますが、そこは何でもありの住本です。テロリストの妻の(これが真木よう子です)不幸な過去につけ込んでスパイに仕立て上げる一方、ライバルの韓国の情報機関「国家情報院(NIS)」とは協力と騙し合いで火花を散らします。

 日本の警察は大きく分けて、我々の生活に関係したことを扱う部門と(刑事や生活安全、交通といった部門ですね)、国家の枠組みに関係することを扱う部門(警備や公安などの部門)に分かれます。公安部門は、テロリストや外国のスパイ、国家体制を脅かす団体(オウム真理教などもそうです)などを監視、彼らの動きを封じ込めるのが仕事です。デモの監視などを除けば、その活動が我々の目に触れることはあまりありません。また、“国家警察”的な性格が強く、ぞれぞれの県警の公安部門も、警察庁の司令で一元的に動いています。

 ドラマではそんな公安警察の体質が住本のキャラクターに集約され、これでもかというくらい濃密に描かれていました。捜査方針をめぐって住本と対立する松沢にも、使命と個人の人生が一体化し、使命を果たすことでしか充実感を得られない体質が違う形でしっかりと宿っていました。劇場版では時間に制約があるのでそのあたりはどうしても薄くなっていますが、まずは手段を選ばない彼らの独特の世界観自体が見どころの一つでしょう。最後の最後までどんでん返しが続いていくところも見どころで、韓国の若手俳優二人の演技がそれに大きく貢献しています。

 そして、圧巻だったのは、田中泯の演技です。彼はかつて日本で学び、帰還運動で母国に戻ってからずっと核兵器開発に携わってきた老物理学者を演じているのですが、一つひとつの動きの切れ、目力には今回も脱帽です。母国の体制に失望しながら自分ではどうすることもできない…その怒りが変質し、母国を崩壊させるために核テロを起こすという狂気を見事に演じ切っていて抜群の存在感です。彼の狂気と住本の狂気(意識的に顔色のどす黒さまで強調されている!)のぶつかり合い…。終わって現実の世界に戻ると、重圧感から解放されてホッとする作品でもあります。

 一つだけ、おまけの話。映画館でパンフレットが「都合により」売っていないのです。なぜなのか窓口で聞いてもちゃんとした答えは返ってきませんでしたが、その代わりに無料のパンフレットが(写真左側です。右側は原作)おいてありました。

2012年6月12日 (火)

★…[ きょうのニュース解説 ] 6月11日:石原知事、尖閣問題で熱弁!


 東京都の石原知事が11日、衆議院の決算行政監視委員会に参考人として出席しました。石原知事はこの4月、訪問先のワシントンで、中国側からの挑発が絶えない尖閣諸島を都で購入すると宣言、世間を驚かせました。「よく言ってくれた」と、都が呼び掛けた一般からの寄付が11億円を突破するという大きな動きになっています。その一方で、中国の反発に加え、中国駐在の丹羽大使が購入を「日中関係に重大な危機をもたらす」と発言するなど、ハレーションも起きています。それについて国会が詳しい話を聞くため、石原知事を招致したのです。

 石原知事にとっては、持論を広く訴えるための格好の場になりました。どの発言にも苛立ちがありありで、怒りもあらわに「『東京がやるのは、筋違いだ』という。筋違いだよ。筋違いだけど、やらざるを得ないじゃないですか。あなた方の責任だよ。過去の自民党の責任だよ。政府の責任は、国会の責任ですよ」と、これまでの政府の無策を強烈に批判しました。また、中国側が領有権を主張していることや中国漁船衝突事件が起きたことを引き合いに出し「『強盗に入るぞ』と言われて戸締まりしない国がどこにあるのか」と指摘。「尖閣がこういうふうになった時に、いったい誰がこの島を守るんですか。政府にやってもらいたいよ」と、領有権を明確にするための対応強化を国に求めました。

 また、返す刀で、中国駐在の丹羽大使が購入を「日中関係に重大な危機をもたらす」と発言したことに対し、「政府の意向と違う、大事な発言をする大使は、更迭すべきだ」と、大使の発言を強く批判しました。加えて、国が委員会の上陸調査への協力を拒んでいるとも指摘、都が海洋環境調査などを行う「漁業調査指導船」を4隻保有していることに触れ、「東京都で船を出しますから国会議員、行ってくださいよ!」と声を荒らげる場面もありました。

 そんな具合に知事は熱いのですが、では、実現の度合いはどれくらいあるのでしょう。まず購入価格がどれくらいか、です。購入を予定しているのは魚釣島、北小島、南小島の3つの島です(4島全部購入の線もあります)。路線価がないため購入価格の算定は難しいと言われていますが、参考になる数字はあります。というのも、国が3島を2002年から1平方メートル当たり5.8円で借りているからです(賃料は年間2450万円)。この賃料と収益性から価格をはじき出す「収益還元法」という手法で計算した場合、専門家によると、一般的な取引なら価格は5億円程度、土地の価値を高く見ても最大で25億円という数字が出ています。都庁内では最近、「税金を使わなくても寄付金だけで買える」という声も出ているようで、す。

 今後は具体的手続きを進めるため、地権者側と詳細な金額などを詰めつつ、議案の提出が予想される年末に向けて都議会や都民に購入理由の説明を重ねていくことになります。都の購入決定には審議会による価格評価を経た上で都議会の賛成が必要です。ただ、魚釣島など3島は国の賃貸借契約が来年3月で切れます。そのため、知事は都議会で所有権移転を「来年4月をめざす」と説明、この日の決算行政監視委員会でも「年度途中でも東京都に預けてもらえるよう応援を」と政府に要請しました。

 購入後、都はどんなことを考えているのでしょう。知事はこれまで、世界遺産となった小笠原諸島などで積み重ねた自然保護や海洋開発などの実績を上げ、「第二の小笠原に」をめざすことを明らかにしています。都心部から約1千キロ離れた小笠原の一部では固有植物を食い荒らすヤギの駆除を実現させた実績を持っています。また、約1700キロ離れた沖ノ鳥島では、周辺に人工魚礁を設置して、カツオ、マグロを集める場を作り上げた実績もあります。

 では、そんな石原知事の行動を国民はどう見ているのでしょう。毎日新聞が5月初めに行った全国世論調査では、尖閣諸島を都の予算で購入する計画について聞いたところ、「支持する」と答えた人は61%と、「支持しない」の31%を大きく上回っています。ただ、都内在住の有権者の「支持する」は57%と、全国平均を下回りました。性別ごとにみると、男性の「支持する」は67%に達したのに対し、女性は56%といった具合です。

 となると、残るのは中国の反応でしょうか。そもそも日中間で尖閣諸島の領有権をめぐってやり合ったのは、1972年の日中国交正常化交渉が戦後最初の舞台でした。交渉は当時の田中角栄首相と周恩来首相との間で行われたましたが、田中首相が第三回首脳会談で「尖閣諸島についてどう思うか」と問いかけた際、周首相は「尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾も米国も問題にしない」と話題を逸らし、この問題に触れない態度に出たのです。

 ここで領土問題に深入りすれば、交渉自体が暗礁に乗り上げる可能性があるのでそれを避けた…。周首相にしてみればそれも理解できますが、その分、日中双方で受け取り方に違いが出ました。日本側にしてみれば、せっかく話を向けたのにそれを避けた、と映りました。つまり、日本の実効支配を認めたのであり、そこから導かれるのは「日中間に領土問題は存在しない」という結論です。一方、中国側は、日本側から尖閣の問題を持ち出したということは領土問題の存在を認めたということになります。ただ、「今、これを話すのはよくない」という周首相の発言で問題は棚上げされた、つまり、「未解決のまま残された」ということになるわけです。ただ、棚上げされたということは、日本の実効支配が認められたわけですから、日本側が実を取ったことは間違いありません。

 次に動きがあったのは78年です。当時の最高実力者の鄧小平氏が来日した時、「10年放っておいてもかまわない。後世の智慧にまかせよう」と発言したからです。棚上げの継続、ということですね。そして、それで合意したのだから中国側にとっては、今でも「未解決のまま残された」場所であり、現状を少しでも動かそうとする日本側の動きには敏感で非難を繰り返します。政府が島を借り上げた時も非難しましたが、ある意味で彼らは彼らの解釈に沿っているのです。

 政府は「わが国固有の領土」と言いいながら、日本人の上陸を認めません。領土なのになぜ自由に行けないのか、そんな単純な疑問を国民の多くが持っています。それもこれも、政府が「尖閣は日本固有の領土であって、日中間に領土問題はない」と言いながら、実は中国側の論理もよく知っているからに他なりません。だから、あの島々をそっとしてきたのです。それを大人の知恵、と考えるのか…。

 しかし、もう状況がそれを許しません。中国側の艦船が我が物顔で振る舞うようになってきている中で、こんな曖昧な状況を放置しておくわけにはいきません。石原知事たちの動き次第では、中国側が軍事的な圧力をかけ、尖閣諸島が大変な緊張状態に置かれることになる可能性もあります。その意味でこの問題は、抜本的な解決に向けて、外交の場でお互いの主張をガンガンぶつけ合い、現場の緊張を吸収していかないと、逆にヤバい状況に発展する時期にきているのです。これまでのように玉虫色の結論を積み重ねていくだけでは、お互いの国民の中にフラストレーションが溜まるだけです。それに火が着いた時こそ悲劇です。

 何度も言ってきましたが、この問題では、大胆な入会権を認めるといった方法で一刻も早く台湾を味方にすることです。このまま放っておいて、もし台湾の過激な活動家が上陸、それを排除しようとした海上保安庁との間でトラブルが起きたとします。その時、活動家を保護するなんていう名目で中国側が介入してこないとも限りません。そして、そこで中国側に犠牲者が出るようなことでもあれば、中国礼賛、日本批判の火が台湾にも広がるでしょう。そうなると、味方に付けようにも手遅れです。


2012年6月 9日 (土)

★…いいね、カリメロ・ミュージックプール


 きのう夜、店開けまでの時間を利用して、武生のダイニング&カフェ「ラグタイムクラシックス」に出かけました。越前市出身のパーカッション・デュオ「カリメロ・ミュージックプール」のライブがあったからです。兄弟二人が組んだデュオで、つかず離れずのところは息の合ったリズムを刻み、離れるところでは鮮やかに個を浮き立たせて聞かせてくれるところが気に入っています。



 きのうのライブには、彼らの師匠である中村岳氏も出演。時間にして30分ほどしか聞くことが出来ませんでしたが、3人の音が一糸乱れず絡まることで、いつにも増して音楽に立体感が生まれ、熱いパフォーマンスに時間を忘れました。昨年に続いて今年も、二人には私がプロデューサーをしている出光興産主催の「ミュージック・イン・ミュージアム」に(今年は苫小牧でのコンサートに)出演してもらうのですが、彼らのパフォーマンスをいちばん楽しみにしているのは、誰あろう私です!


2012年6月 8日 (金)

★…李登輝氏が爆弾発言


 尖閣諸島問題でまた動きが出ています。

 産経新聞の報道によれば、台湾の李登輝(り・とうき)元総統が5日夜、台湾北部桃園県の中央大学で講演した際、中国の学生の質問に対して、「尖閣諸島を日本領」と主張していたことが分かりました。その一方で、「台湾は中国のものではない」と発言、会場は一時騒然となったというのです。

 この日は李氏がまず、自ら推進した台湾の民主化の歩みについて約1時間半にわたって講演。その後の質疑応答で、台湾に来て半年という中国の学生が尖閣諸島の帰属に関して質問し、それに李氏は「領有権は日本にある。中国固有の領土というなら、裏付けとなる証拠の提出が必要」。学生は「それは個人の見解か」と気色ばみましたが、李氏の秘書が「見解ではなく歴史」と補足したそうです。二人のやりとりは約20分間続き、学生は中国と台湾の将来についても質問、李氏は「台湾は中国の物ではなく、未来の民主化のモデル」として、学生に「民主化と自由を学んでほしい」と、台湾の歴史に関する自らの著書をプレゼントしたと報じられています。

 李氏は1988年、台湾史上初めて民主的な手続きを経て総統となった人物です。氏はそれまでの「反攻大陸」のスローガンを下ろして、中華人民共和国が中国大陸を有効に支配していることを認めると同時に、台湾という国家の存在を主張。その一方で、着実に経済を発展させました。総統職と国民党主席を退任した後は、初めて「台湾」という名前の政党「台湾団結連盟」を立ち上げ、「台湾独立」運動の事実上の指導者となっています。

 実は先週、日本にやってきた台湾のテレビ局の知人が店に遊びに来たのですが、その時に李氏のことが話題になりました。氏は台北高校卒業後、京都帝国大学農学部農業経済学科に進み、太平洋戦争末期には陸軍少尉として従軍した経験を持ち、日本語もぺらぺら、実際に日本びいきです。それでその時の我々の話の結論も、「彼は頭の中からして日本人だね」ということに落ち着いたのです。ただ、今回の発言は、単に氏が日本びいきだからとは思えません。かつて国のトップを務めた人間による、それなりの確証を持っての発言で重みがあります。

 尖閣諸島については、遭難した中国の漁民を助けた石垣島の住民に対する中国政府の感謝状が石垣市の八重山博物館に保管されています。感謝状は1919年(大正8年)に中華民国の駐長崎領事から贈られたもので、魚釣島を「和洋島」と日本名で表記している上、島の帰属も「日本帝国沖縄県八重山郡尖閣列島」としていて、「馮冕(ひょう・めん)」のサインと「華駐長崎領事」の公印が押されています。これこそ、中国政府が尖閣諸島を日本の領土と認識していたことの証明です。ただ、意外に知られていません。台湾の知人も知らず、帰国したらすぐ確認すると言っていました。

 一方、李氏の発言と前後して、駐中国の丹羽大使が東京都による尖閣諸島購入計画に関して英紙「フィナンシャル・タイムズ」のインタビューに対して、「実行されれば日中関係に重大な危機をもたらす」と、反対の意見を述べていたことが明るみに出ました。玄外務大臣はきょう、外務省が丹羽氏に注意し、丹羽氏も謝罪したことを明らかにしましたが、こうなると、どっちが日本の味方なのか分からなくなってきますね。


2012年6月 7日 (木)

★…三笠宮寛仁親王殿下が薨去

 

 三笠宮寛仁(ともひと)親王殿下がきのう6日午後3時過ぎ、入院先の佐々木研究所付属杏雲堂病院で薨去(こうきょ)されました。「ヒゲの殿下」の愛称で親しまれた殿下は、昭和天皇の弟宮・三笠宮さまの長男で、天皇陛下のいとこに当たります。学習院大を卒業した68年から2年間、英国のオックスフォード大学に留学。80年に吉田茂元首相の孫で、麻生太郎元首相の妹・信子さまと結婚、彬子さま、瑶子さま、2人のお子様に恵まれました。日英協会や日本ノルウェー協会の名誉総裁として国際親善に務める一方で、ご自分を「福祉の現場監督」と呼んで、福祉団体の会長を務めて障害者の自立を支援したり、学生時代に磨いた技術を活かして障害者のスキーの指導に当たったりと、障害者福祉に積極的に取り組まれてきたことで知られます。

 一方、皇族としては型破りなところもありました。若い頃にラジオのディスクジョッキーを務め、雑誌などで皇族論などを披露。82年には「障害者問題などに専念したい」として、突然「皇籍離脱」を宣言して世間を驚かせました。また、小泉政権下の皇室典範に関する有識者会議が女系天皇容認の方針を打ち出した時には、会長を務める福祉団体の機関誌にエッセーを寄稿し、新聞や月刊誌のインタビューに応えるなどして、初代の神武天皇から連綿と男系が続いているからこそ皇統は貴重という考えから「会議の構成に私が口を挟むわけにはいきませんが、二千六百六十五年間も続いてきた世界でも類を見ない、まことに稀有な伝統と歴史を、一年、わずか十七回、三十数時間の会議で大改革してしまうことが、果たして認められるのでしょうか、あまりにも拙速すぎませんか」=「文芸春秋」2月号=と世に問われました。

 殿下について書くとなると、66年の生涯のうち、20年にもなるガンとの戦いに触れないわけにはいきません。91年の食道ガン以来、何度も手術を受け、そして公務に復帰されるの繰り返しでした。昨年末にがんの右あごへの転移が判明、今年1月と3月にも手術を受け、退院は適いませんでした。手術はなんと16回を数えます。ガン以外にも、2007年にはアルコール依存症であることを公表、2008年の手術では自力で声を出せなくなり、人工喉頭を使っていましたが、そんな体調の中、去年5月には宮城県を訪れて東日本大震災で被災した人たちを励ますなど熱心に公務に取り組まれてきました。

 実は10年くらい前、ある音楽家の自宅で、殿下と信子妃殿下、音楽家夫妻と食事をご一緒したことがあります。殿下、妃殿下の丁々発止としたやりとり、あまりに屈託ない話にあっという間に時が過ぎましたが、仲睦まじいご夫妻の様子が強く印象に残っています。お二人の初めての出会いは、信子さまが小学生の時。殿下は72年の札幌オリンピックの大会組織委員会事務局に勤めたのですが、それが終わると、17歳の誕生日を目前にした信子さまにプロポーズされます。しかし…。さすがに若過ぎると周囲は反対、7年後に「いろいろトータルに考えてみて、やっぱり彼女が一番いい」と再びプロポーズ、長年の恋を実らせました。

ところが…。妃殿下は2004年に脳虚血発作の後、軽井沢で療養生活に。06年に2年ぶりに宮邸に戻られましたが、それから赤坂御用地内に建てられた別棟での生活です。殿下は07年に米「ニューヨーク・タイムズ」紙のインタビューを受け、「結婚生活も26年におよび、家庭内にもいろいろな難しい問題がある」と話されていますが、あのお二人の姿を拝見出来なくなったことは残念でした。

 この時もインタビューでは、皇室についてもさまざまな問題があると、殿下は率直に指摘されています。一例として、皇太子さまの「皇太子妃の人格否定」会見を取り上げ、「皇太子に長い手紙を出し、詳しい説明を求めた。返事があれば、いくらか前進することができたであろうが、私の意見に礼を述べた返事しかなかった」といった秘話も明らかにされています。世間にもの申す、東宮家にもの申す、それで周囲にどう思われても厭わないという殿下の勇気ある行動は、皇室のことを本当に考えていればこそだったと思います。女性宮家創設が議論され、皇室が大きな転換点にある今、殿下がなくなられたことが残念でなりません。



2012年6月 6日 (水)

★…[原発の話:連載4] なぜ大飯なのか


 大飯原発の再稼働をめぐり、原発事故収束対策プロジェクトチームの荒井座長がきのう5日、野田首相に「再稼働に一層慎重である」ことを求め、民主党の国会議員117名分の反対署名を提出しました。署名には小沢一郎元代表や鳩山由紀夫元首相も名を連ね、政局絡みとみる向きもありますが、117名といえば民主党議員の約3分の1。首相にとってはまた一つ悩みの種が増えた格好です。5日に行われた原発に関する党の合同会議でも、出席議員から「事故の際の住民の避難計画ができていない」など慎重意見が相次ぎ、民主党自体が再稼働をめぐってぐらついています。

 そもそも、再稼働の大飯原発に白羽が立ったのはなぜでしょう。関係者の話では、政府が再稼働の対象としてピックアップしたのは(1)巨大津波の恐れがある太平洋側ではなく(2)格納容器の容量が大きい加圧水型軽水炉(3)運転年数が比較的少ない、そういった条件をクリアーしたもの、だったそうです。(2)については、制御棒を上から入れるスタイルなので底が抜ける可能性が低いという理由からです。福島第一のような沸騰水型軽水炉は制御棒を下から出し入れするスタイルなので、地震などで機械的に壊れる可能性が高いという判断でしょう。

 この条件をクリアーしたのが、福井県にある関西電力の大飯3、4号機、高浜3、4号機、愛媛県にある四国電力の伊方3号機、佐賀県の九州電力玄海3、4号機、鹿児島県の川内1、2号機の9基。中でも、大飯と並んでストレステストをクリアーしている伊方3号機は(1)1994年の運転開始と比較的新しい(2)昨年の12月に免震施設が(福島第一の影像などによく出てくる前線基地になっている建物ですね)運用を開始(3)内海に(瀬戸内海に)面している唯一の原発で津波の危険性が少ない、などの理由で最有力候補だったのですが、ここで関西電力の電力需給が逼迫するという問題が表面化してきたことから大飯が先になったと言われています。

 大飯3、4号機の特徴としては(1)いずれも出力100万キロワットを超える大型(2)運転開始から約20年と比較的新しく、2008年に3号機の配管に損傷が見つかったというトラブルが起きたくらい(3)ともに格納容器はプレストレストコンクリート(コンクリートの中に強い張力を掛けた鋼の線を通し、コンクリートに縮もう縮もうとする力が働くようになったている)を使っていて頑強(4)港湾は若狭湾の開口部に対して90度ほど傾いて開口し、開口部の先に松ヶ崎の付きだし部があることなどから津波が押し寄せる確率が低い(5)原子炉建屋が角型ではなく円筒形で波力をまともに受けない、といったことがポイントとして上がっています。

 加えて、地震についても比較的危険度が少ないと分析されています。文部科学省に設置されている地震調査研究推進本部が作成する「地震ハザードステーション」で向こう30年を調べると、大飯エリアは震度6弱以上の地震発生確率は、首都圏・東海・関西よりも低いことが分かります。また、地盤の揺れやすさについても、内閣府の「地震のゆれやすさ全国マップ」を見ると、地震震度予想や地盤の安定性からいえば危険度の低いエリアに属しています。

 もちろん、まったく懸念がないというわけではありません。大飯原発周辺には、陸側の「熊川断層」と、海側の若狭湾内に延びる2つの活断層があり、3断層の全長は約63キロと見込まれているからです。関西電力はストレステストの評価時点では、海側の2つの断層(全長約35キロ)の連動についてはその可能性に言及していますが、3つの断層の連動は想定していません。4日には京都の環境団体などが西川知事と県の原子力安全専門委員に対して、敷地内の地盤の破砕帯が活断層である可能性があるとして、調査の実施と評価が終わるまで再稼働しないよう求めた要望書を提出しています。こうした指摘に対して、関西電力は経済産業省の原子力安全保安院に「仮に3断層が連動したとしても、基準地震動の1.8倍は超えない」と報告していますが、保安院も「計算の根拠が不明確だ」などとして、詳細な評価を再度行うよう求めています。

 国会ではようやく、原子力規制庁について与野党の間で修正協議が始まり、当初の民主党案よりも中立性が高い「3条委員会」となる方向性が見えてきました。細野原発担当相は、新しい組織の元で今一度審査基準を見直し、大飯原発が再稼働したとしても、それに抵触する場合は稼働をやめるとまで言っていますが、新しく誕生する規制庁には、安全のためのこういう小さな指摘に対して真摯に答えてほしいものです。政府の原発政策に対する信用回復も、その規制庁の姿勢次第です。


2012年6月 5日 (火)

★…[原発の話:連載3] 無策の末の追い込まれての再稼働


 大飯原発3、4号機の再稼働が目前に迫っています。4日には細野原発事故担当相が福井県庁を訪ねて西川知事と会談しました。再稼働よりも保管されている核燃料の方が心配な私にとっては稼働に反対という立場ではありませんが、そんな私から見ても、今回の再稼働をめぐる政府の動きは「拙速」としか言いようがありません。一方、政府の地元自治体への説得工作、それに答える自治側の対応にしても、結果が見えている単なるアリバイ作りにしか見えません。

 再稼働までの政府の動きはこうでした。
(1)電力会社がストレステストを実施、一次評価を経済産業省の原子力安全保安院に提出(2)原子力安全保安院が一次評価の妥当性を審査、内閣府の原子力安全委員会の審査を求める(3)原子力安全委員会が外部有識者を加えた検討会を開いて一次評価を審査(4)妥当であれば、政府が地元自治体へ、稼働への協力を要請

 しかし、まともな人からみたらこれでオーケーを出そうとしている政府の対応に疑問を感じないはずがありません。まずストレステストへの信頼度です。「ストレステストの一次評価をクリアーすることが再稼働の条件」は菅首相が突然言い出した話ですが、政府としては今さらそれを取り下げるわけにもいかず、安全保安院もそれに従って淡々と事務を進めているだけの話です。しかも、設計の想定より厳しい条件を課してもそのシステムの安全が保てるかどうかを確認するための机上テストで、使うデータも計算の基準も基本的に電力会社が用意、それを自ら評価するという代物です。つまり、今後こんな工事をしますという計画を審査しているだけです。免震重要棟を装備しているわけでもないし、防潮堤が強化されたわけでもなく、ベント出来るようにするための改造も「これから」なのです。これでは実効性の担保にも何にもなりませんね。

 しかも2月の時点で、国会事故調査委員会のヒアリングに呼ばれていた原子力安全委員会の班目春樹委員長が「(一次評価は)再稼働とは関係ない。二次評価まで終わらなければ、安全性の判断はできない。一次評価は安全委が要求している(安全性の)レベルに達していない」と発言。自ら当てにならないと言っているわけですが、その二次評価は再稼働の条件には未だに入っていません。

 一方、再稼働の必要性についても説得力がありません。政府は枝野経産相が旗振り役になって、関電管内の電力需給見通しについて、電力の供給力の積み上げを勘案しても一昨年並みの猛暑下での最大2割程度の電力不足になる可能性があるとずっと指摘。その一方で5月10日には、夏の電力状況を有識者らが調べる政府の需給検証委員会(委員長・石田勝之副内閣相)が、再稼働が実現した場合、8月の関西電力管内の最大需要にほぼ見合う電力供給が可能との試算を公表しました。しかし、根拠になる関西電力の数字がもう一つ信憑性に乏しいのだから困ります。

 というのも、関西電力の見積もりの甘さがあります。例えば、この冬の電力供給について2月が最も厳しいと見積もっていました。関西電力のサイトにはこうありました。「供給力2412万キロワット、需要2665万キロワット、差し引き250万キロワット以上の電力不足」。ところが、関西電力管内の平均気温が例年よりも低かった(寒かった)にも関わらず、需要のピークは2月2日の2578万キロワットで予想を下回りました。一方、最大供給力は2412万キロワットと見積もっていましたが、2月17日には、他の電力会社からの融通や揚水発電、自家発電などで2884万キロワットを生み出しています。こうなると、今年夏の供給力2574万キロワットという見積もりにも?です。

 そんなこんなで進んできた政府の再稼働への動きは、国民には茶番と映っているようです。マスコミ各社の世論調査の数字にそれが明らかです。再稼働に最も理解のある人が多い産経新聞社+FNNの調査ですら、「政府や電力会社が示す電力需給の見通しについては信頼できない」という数字がこれなのです。

<朝日新聞社……5月19〜20日実施の全国定例世論調査>
・原発に対する政府の安全対策を「信頼している」は「大いに」+「ある程度」で21%、「信頼していない」が「あまり」+「まったく」78%
・再稼働については、反対54%で、賛成29%

<毎日新聞……5月5〜6日実施の全国世論調査>
・再稼働について「反対」63%、「賛成」31%
・今夏に電気の使用が制限された場合、「我慢できる」74%、
・政府の新たな判断基準について「信用しない」77%、「信用する」16%
・電力使用制限「我慢できる」で、最も電力需給が逼迫すると予想される近畿圏61%、関東圏で79%、他のすべての地域で7割超

<産経新聞社+FNN……5月19〜20日実施した合同世論調査>
・「電力不足なら安全が確認された原発は再稼働させてもよいと思う」51・5%、「思わない」43・6%
・政府や電力会社が示す電力需給の見通しについては「信頼できない」75・7%

 結局のところ、東日本大震災後の電力不足対策に無策だった政府が、いよいよ打つ手がなくなって安易な再稼働に戻ってきたようなもので、見事な無責任ぶりです。最後には容認に傾きましたが、まだ橋下大阪市長の「危険性がないわけではないけれども、電気が足りなくなる可能性があるので、国益を重視して動かすと言った方がいい」という言い分の方が筋が通っています。国民に正直な分だけましです。

 もし、本当に原発が必要というのであれば、震災直後から独立性の高い原子力規制庁を設立、新しい安全基準を作るべきでした。衆議院の厚生労働委員会で「何をしているのですか」と政府を一括した東京大学の児玉龍彦教授が言うように、原子力安全委員会は今も事故を防げなかったメンバーたちで運営されています。

 三陸沿岸の津波による危険性はずっと前から指摘されていましたし、活断層の危険性や原発の安全性をもっと高めるための提言もたくさん出されていました。しかし、彼らは見て見ぬふりしてきました。そして、それらに真摯に耳を傾けず、対策に真面目に取り組まなかった電力会社の奢り。それらがあって、今の福島第一なのです。そういう体質が変わっていないのに、彼らが言うことを信用しろと言われても…。少なくとも、こうした体質を一新していれば、再稼働に賛成する人もかなりいると思うのです。




2012年6月 3日 (日)

★…[原発の話:連載2] 燃料プールを疑え!


 前回は原子炉の中で使われている核燃料も、プールで冷やしている使用済み核燃料も危険度は同じ、プールの方が密閉されていないため事が起きれば大変、という話を書きました。そして、このプールはどの原発にもあるわけですから、稼働していようが停止していようが、もしどこかのプールの冷却システムが何かの理由で止まると、福島4号機と同じような事態に陥る可能性があるのです。では現在、原発にはどれくらいの使用済み核燃料が保管されているのでしょう。電気事業連合会によると、昨年9月末の時点で、全国の商業用原発54基で合計1万4千トンにもなります。

 原発ごとに数字を見てみましょう。北海道・泊(380t)青森・東通(100t)宮城・女川(420t)福島・福島第一(1960t)福島・福島第二原発(1120t)新潟・柏崎刈羽(2300t)茨城・東海第二(370t)石川・志賀(150t)静岡・浜岡(1140t)島根・島根(390t)愛媛・伊方(590t)佐賀・玄海(830t)鹿児島・川内(870t)。そして、福井は、敦賀(580t)美浜(390t)大飯(1400t)高浜(1180t)といった具合です。ではなぜ、そんな危ない物をこんなに保管しているのか。答えは簡単で、持って行き場がないのです。

 日本の原発政策では、使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを抽出し、それをウランに混ぜて「MOX燃料」を作り、それをもう一回発電に使うということになっています。それが「プルサーマル発電」で、その循環がいわゆる「核燃料サイクルの環」なのです。ところが…。青森の六ヶ所村に建設された再処理工場は操業が延期されっぱなし。また、「プルサーマル発電」の延長線上には、発電すると使ったプルトニウムの量以上の燃料を生み出す高速増殖炉(ご存じ、福井にある「もんじゅ」です)」も開発されたのですが、こちらも事故ばかりで、わずか数か月しか運転できないまま放置されています。つまり、この45年間に10兆円を投じても(その原資は税金と電気料金から出ているのですが)未だ「核燃料サイクルの環」を作ることが出来ていないのです。

 そこで取り敢えず、使用済み燃料を六ヶ所村の再処理工場に運び込んでいるのですが、その限界は3千トン。そこにもう2千860トンも預かっています。それで「これ以上はご勘弁」と、原発に留め置いてもらっているわけですが、こちらも54基で保管できる量は2万630トンで、あと6千400トン分で満杯です。しかも原発が今までのようなペースで動いた場合、毎年1000トンの使用済み燃料が新たに生まれてくるのです。まさに「糞詰まり」状況。だから、原発は「トイレのないマンション」と言われるのです。

 ところで、大飯原発の再稼働問題がいよいよ現実味を帯びてきているのですが、私から見ると、再稼働しようがしまいが危険性はそれほど変わらない、と考えています。というのも、それによって使用済み核燃料を冷やしている脆弱な作りのプールの危険性は増えもしないし、減りもしないからです。つまり、危険性を判断する基準を、運転停止か再稼働においているのではなく、核燃料がそこにあるかないかにおいているからです。再稼働をめぐって「脱原発」、「卒原発」と言葉は踊りますが、本当に安全性を高めるためには54カ所に分散している危険物を一刻も早く集め、堅牢な中間貯蔵施設で一括管理することでしょう。

 一方、原発再稼働を叫んでいる人が意外に気付いていない盲点があります。それは、使用済み核燃料を原子炉から取り出せないと(新しい燃料と交換しないと)、発電自体が出来ないことです。つまり、このままでは放っておいても、あと数年で原発の保管プールも満杯、六ヶ所村の再処理工場も満杯となり、原発を動かしたくても動かせなくなってしまうことです。原発を今までのように動かすなら動かすで、六ヶ所村以外にも再処理施設を作り、それが出来ないとしても、せめて使用済み核燃料を集中保管する堅牢な中間貯蔵施設を早く作らないといけません。つまり、どっちの道を選ぶにせよ、中間貯蔵施設の建設を急ぎぐべきという結論になります。

 そうなると、福島の人には申し訳ないのですが、ここは心を鬼にして、「福島第一発電所の周辺に集める」というのが、すべての面で最もリーズナブルで現実的な方法なのではないか、と思います。具体的には、最も汚染がひどい福島第一の周辺を国が買い上げ、そこに中間貯蔵施設を作り、燃料をそこに集めるのです。そのエリアの汚染度は極めて高く、今の世代はもう帰還できないという現実があります。ならば、そこを日本全体の安全のために有効に使った方が合理的ではないか、と思うのです。福島は1〜3号機についても、いつ廃炉に出来るのか、そのめどはまだ立っていません。私たちは今世紀末まで「福島第一の現実」と戦っていかなければなりません。ここが日本の原子力技術の最前線にならざるを得ないのです。だからこその提案です。


2012年6月 2日 (土)

★…[原発の話:連載1] 福島第一の4号機こそ危ない


 「ニウスな夜」第4夜「原発はどうなる」で最初に触れたのが、福島第一発電所の危険性です。「危険性?、取り敢えずは一息ついて、緊急事態は回避されたではないのか…」。多くの人はそんなイメージを持っていると思います。しかし、4号機の使用済み核燃料プールが再度の地震で壊れないだろうか、それを世界中がハラハラ、ドキドキしながら見守っているというのが実情です。

 使用済み核燃料は、「近づけば即死」というレベルの高い放射線量を出します。また、ずっと崩壊熱を出しているので、プールの中で冷やし続けないといけません。ところが、4号機は震災直後の3月15日の爆発で天井が吹き飛ばされ、5階にあったプールは青天井となり、ゴミが入らないようにビニールシートをかけてはありますが、野ざらしに近い状態になっているのです。もし、再度の地震でプールが壊れ、水が抜けたり、冷却システムが壊れて水が蒸発したりすれば、燃料が空気中に剥き出しになるのです。そうなると、もう手が付けられません。

 どれくらいの被害が出るのか…。プールに保管されている燃料棒は1535本(原子炉2.8個分に相当)。それらの放射能がずっと出ずっぱりになるので、放出される放射能の量は、米ブルックヘブン国立研究所のシミュレーションでは「これまで地上で行われた核実験の送料を超える規模」、「周辺の18万6000人が死ぬ」となっています。また、海外のメディアでは「チェルノブイリの少なくとも10倍のセシウム137が放出される」という専門家の見方を紹介されています。原子力委員会の近藤駿介委員長が昨年3月25日にまとめていた「不測事態シナリオ」でも、半径170キロ圏が強制移住の対象となり、東京など250キロ圏でも避難の必要ありとしています。いわゆる首都圏3000万人がすぐに西へ逃げないといけない、という状況に陥るのです。

 しかも、線量が高いため、福島第一原発の修復、管理作業が一切出来なくなります。それが何を意味するか…。1〜3号機も壊れるに任せるしかなくなるということですね。そうなれば、放射能を閉じ込めるための手が打てないのですから、日本自体がもう終わってしまいます。なので、アメリカもやきもきしています。4月1日に米上院エネルギー委員会のロン・ワイデン議員がわざわざ福島第一を視察しています。14日付でヒラリー国務長官、米原子力規制委員会のヤツコ委員長、日本の藤崎駐米大使に「当初の事故より大量の放射性物質の放出となる恐れがある」と警告を出しています。

 実際、震災時にそうなりかけたのです。震災時、福島第一原発では4つある原子炉のうち第4号機だけ運転していませんでした。運転開始以来最大の改修工事を行っていたからです。そのため燃料を「お釜」から取り出してプールに移してあったのですが、震災時にそのプールの冷却システムが停止してしまったのです。ところが…、地震の衝撃で隣の「原子炉ウエル」というスペースとの仕切り壁がずれてそこに溜まっていた水が流れ込んでくれて事なきを得ました。その後、6日間で720トンの海水を注入して当座を凌ぎ、現在は循環システムを構築して冷却を続けています。

 もちろん、東京電力も出来るだけのことはやっていて、昨年夏にプールの底を鋼鉄の支柱とコンクリートで補強しました。この28日には東日本大震災後初めてとなる詳細な実地調査結果も発表されましたが、それによると、外壁に爆発によって生じたとみられる小さなたわみが見つかったが、それは非常に小さく、この壁の場所が燃料プールから離れているため危険ではなく、東日本大震災と同程度の強さの地震が来ても耐えられる能力があるとしています。

 ただ、冷却システムは応急的に構築したものなので、そちらの耐久性の方がちょっと心配です。実際、4月12日に自動的に止まりました。この時は冷却水の配管接合部で水漏れが起きていたことが判明、部品を交換して13日午後4時には約25時間ぶりに動き出しましたが、この間に燃料プールの水温は当初の28度から37・6度に上昇しているのです。燃料がまだ高い崩壊熱を出していることが分かりますね。しかも、漏れた水は高濃度に汚染されているのですから、大量に漏れ出したらと思うと、やはり心配です。

 とにかく、燃料を早く取り出すこと、それに尽きるのですが、東京電力の工程表によると、まずは4号機の原子炉建屋外にクレーンや核燃料取扱機を備えた逆「L」字型の骨組みを設置するところから始めなければならず、クレーンを設置してからも、プールに飛び込んだがれきを運び出すなどの作業があるので、実際に燃料の取り出しが始まるのは2012年末から、という遅さです。

 しかも…。運び出した燃料の保管場所にしようとしている共用プールが、既に約6400本の使用済み燃料がいっぱいという状況なのです。そこでまず冷却が進んでいる燃料を他の場所に移してスペースを確保するというのですが、燃料は鋼鉄と鉛で作られたキャスク(直径3メートル、暑さ7・5センチ、重さ100トン)に密閉しないといけません。この作業自体もかなりの作業量なので、4号機からすべての燃料を運び出すまでに早くて3年、つまり、2015年末まで掛かるということになります。

 こうやって調べていくと、燃料プールが原発の意外な弱点であることが分かります。いったんことが起きると、とんでもない被害を及ぼすのに、プールは所詮プールの作り。福島第一の写真をみれば、誰もがビックリするはずです。人間誰しも運転している「お釜」の方が危ないと思いがちでそちらにばかり目が行きますが、燃料は密閉性の高い容器である「お釜」に入っている分だけまだ安全なわけで、何とも皮肉な話です。そして、燃料プールはすべての原発にあるのです。

 次回も燃料プールについてのお話です。





2012年6月 1日 (金)

★…「ニウスな夜」第4夜を開催

 定例となった「ニウスな夜」、その第4夜を30日、31日に行いました。今回も2日間で20人が出席してくれました。今回のテーマは、「原発はどうなる」。福井で暮らす以上、原発問題は避けて通れない問題という前回の参加者の希望を取り入れたのですが、折から大飯原発3、4号機の再稼働問題で状況が毎日動いていたので、取材や資料作りが大変でした。しかも、30、31日に再稼働に反対していた関西広域連合の会合が開かれ、31日には最強硬派の橋下大阪市長が一転して再稼働容認に傾くなど状況が激変。きょう、あすにも野田首相が再稼働を決断、週明けからは福井県の西川知事、おおい町の時岡町長のゴーサインが続いて再稼働となる見通しとなりました。

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 今回のように、原発について短期的、集中的に調べたというのは記者時代にもなく、初めての経験でした。そして、調べれば調べるほど、東京電力福島第一発 電所の事故の深刻さを思い知らされました。復旧どころか、4号機の使用済み燃料プールの危機は今も首の皮一枚で繋がっている状況で、東日本崩壊という悪夢 が今も去っていないことが分かってきました。そして、その事故を招いた原因が東京電力という組織の奢りにあったことなど…。そして、事故に対する彼らの対 応、さらには政府の対応に、日本という国の体質が凝縮されていることを改めて感じました。これからの日本が背負っていくことの大きさに思いをめぐらせる と、言葉を失うこともしばしばでした。

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 今回は横浜から遊びに来ていた同級生のおばさんが参加してくれましたが、その意識の高さにビックリしました。というのも、東日本大震災以後、関東圏では いまだに余震が続いていて、原発でまた深刻な事故が起きるのではないかという恐怖が常に身近にあるからだ、と言っていました。確かに福井県に最も原発が集 中しているのですが、普段の我々には原発の危機がいまそこにあるという実感がありません。これは意外な話で、我々はもっと原発について知らなければならな いと痛感しました。原発の行方はどこにいくのか…。国民それぞれに自分なりの方向性があると思いますが、今回の取材を通じて分かったことをこれからしばらく、テーマごとに何回かに分けてブログに載せていこうと思います。






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