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2012年4月21日 (土)

★…ベーシック・インカムという解決策


耳慣れない人も多いと思うのですが、簡単にいうと、「年金、失業手当、子ども手当、生活保護といった国からの給付」を一本化し、国が毎月、一定の金額(=ベーシック・インカム)を現金で配るやり方です。子供から大人まで、お金のある人にもない人にも、個人ひとり一人に無条件で配るところが特徴で、もちろん、使い道は自由です。お金を配る……突然聞くと“奇妙な”仕組みですが、さまざまなメリットがあり、制度疲労が目立つ日本の社会保障制度を立て直すために導入すべきと思っています。

例えば、ベーシック・インカムが(大阪維新の会の「維新八策」にも採用されていて、彼らが想定しているとされる)月額5万円となれば、家族4人で月に20万円が国から支給されます。福井であれば、「それだけで生活ができそうな」金額が国から支給されるのです。「働かない人」にお金を配るのは道徳に反しないか、「お金をたくさん稼げる人」にも同じお金を配るというのもおかしい…みなさんが最初に思い浮かべるのはそんなことではないでしょうか。

ところが…。これがなかなかの「優れもの」なのです。平成21年度の厚生労働省の社会保障給付費の総額は約99兆8500億円。ここから「医療に必要な部分=医療費など」約30兆8400億円を引くと、ざっと69兆円です。そのお金が年金や失業手当、生活保護などに使われています。まず最大のメリットは、それらの国からの給付を一本化出来ることです。それにより、行政システムを大幅にスリム化できるところです。誰でも解るのは、現行の年金システムを廃止することで年金機構(旧・社会保険庁)が要らなくなることです。生活保護の審査や給付などの実務を行っている行政システムも要らなくなります。他の給付の手間も省けます。ベーシック・インカムが導入されると、年金という概念がなくなるのですから、社会保険料の徴収もなくなります。もちろん、企業の厚生年金の企業負担分もなくなるので、法人税の減税よりも企業にとっては助かります。繰り返しますが、そのための役所、人員も必要なくなります。

国の財政が破綻するといわれるのに、そんなばらまきをやってどうするのか。とんでもない、という人も多いでしょう。もちろん、ベーシック・インカムに姿を変える年金のための資金はみんなで納めないといけません。それを税金一本にして納めるのです。ベーシック・インカムが導入されると、「ベーシック・インカム+働いて得た収入」の合算に課税されます。なんだ…。税金が増えるだけじゃないの、これまで以上に重税に苦しむことになるのか、とため息をつかないでください。これまでとは違い、税金負担以上のお金(ベーシック・インカム)が国から支給されているのです。そして、支給と負担が一本化されることで国民と国とのお金のやりとりがとても見えやすくなるので、 “税金の納め甲斐”も出てきます。 いや、それ以上にメリットがいっぱいあるのです。

現行の年金制度のような年寄りにだけ優しい制度ではなく、若者にも優しい制度であることも大きな魅力です。子供を生めばベーシック・インカムが入ってくるため、少子化(=日本民族の減少)にも歯止めが掛かるでしょう。大学に行くための学費にも使えます。日本の資源は人材、ということをもう一度思い出しましょう。働き始めても、「生活するため」のプレッシャーが減るので、夢を追い続ける人も増えて、そこから革新的なことが生まれるかもしれません。また、働いて生活費を賄えれば、 ベーシック・インカムを貯金しておいて起業しようという人間も出てくるでしょう。それに年金システムで起きている世代間格差がなくなるどころか、年金破綻という不安がなくなります。

働き方も変わります。自分の働き方を選択する幅が大きく拡がるからです。「不当な条件では働きたくない」と低賃金のところやブラック企業では働かない人も出てくるし、反対に「安くても、ベーシック・インカムにプラスされるのだから暮らせる」と低賃金でも働くということを選ぶ人も出てきます。つまり、これまでのように最低賃金を決める必要もなくなります。

なぜ製造業は海外に出て行くのでしょう。安い労働力を求めるからですね。研修生という名目で安い労働力を中国から呼び寄せる必要もなくなります。企業はなぜ、同じ日本人の中でワーキングプアを作り出してまで派遣社員で雇用調整しているのですか。それは正社員を雇うことで生じる負担が(年金の負担や簡単に首に出来ないため)大きかったからですね。でも、ベーシック・インカムが導入されると、もっと弾力的な労働市場が生まれます。導入と同時にある程度のセイフティーネットも完成しますから。

国や多くの自治体が、雇用対策のために公共事業をやり、雇用を作るために企業などに補助金を出すなどして、どれだけのお金をつぎ込んでいるのでしょう。結局、月給20万の労働を作り出すため、込み込みで考えると国が30万円のコストをかけている、というようなことになってませんか。これも国の富の流出です。しかし、ベーシック・インカムというセイフティーネットがあれば、次の仕事が見つかるまでの助成、そういった行政コストも必要なくなります。

働かない人間の存在を社会としてどうするか、という問題は常にありますが、いまや生活保護のための国の支出は年3兆円に迫っていて、最大限受給すると、最低賃金の職場で働いた人の月収を超えるという逆差別すら生んでいます。障害などでベーシック・インカムだけでやっていけない本当の弱者は別の方法で助けるということにすれば、そうした馬鹿げたことはなくなります。働かない人間はこれまでにも常に存在してきたし、今後も社会はそうした人に我慢しなければならないということは変わらないのですから、ここは「ならば」と視点を変える必要があります。

変なところでは、こんなメリットもあります。犯罪者が刑期を終えた後も生活が保障されるので更正する可能性が高まること。刑務所で一人あたりに掛かっている コストは年額300万円。犯罪者が減るのは社会にとっても、財政の面でもいいことですね。「食べるために」また犯罪を起こして入所しようとする人も減ってきて…。

さて、最大の問題は財源です。多くのエコノミストが試算しています。例えば、山崎元氏の試算ではこうなります。平成21年度の厚生労働省の社会保障給付費の総額は約99兆8500億円。先にも書きましたが、ここから「医療に必要な部分=医療費など」約30兆8400億円を引くと、ざっと69兆円。それを人口を1億2500万人として割ると、現在の給付総額で、月に一人4万6000円くらいのベーシック・インカムを確保できる計算です。これに行政システムのスリム化にいる節約分が浮いてきますから、「維新八策」が想定している月額5万円という数字も、決して机上の空論でないことが解ります。ちなみに月額の支給額が5万円だと75兆円で、あと6兆円が必要です。消費税は5%で10兆円の増収といわれているので、消費税10%が実現すれば、行政コスト削減の上積みがないとしてその「月額5万円の財源」を確保できるのです。

現在、諸費税を10%に上げる方向で世の中が動いていますが、それだけでは年金問題だけに限っても根本的な手を打てないと政府自体が言っています。というのも、現在の巨大な行政機構には複雑なシステムが並立し、集めたお金があちらこちらに分散して使われる中でなくなってしまうのです。そうした構造を変えるためにもベーシック・インカムは良い仕組みと思います。ただ、行政システムのスリム化という国民にとって良いことは、行政を担っている政治家や官僚や公務員にとっては自分たちの仕事や権限がなくなることを意味します。つまり、最大の障壁が彼らなので、導入への道のりは険しいのです。



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コメント

 老婆心ながら。
 [ベーシック・インカム]とは、維新八策で打ち出された新しい概念というわけでは全くありませんよ。「みんなの党」の渡辺喜美氏も一時期折りに触れて言及してましたし、もうずいぶん前からコンセプトは世に知られています。元をただせば、『ユート・ピア』を書いたトマス・モアの思想から生み出されたものとのことです。
 貴殿の記述、誤解を招く危険性があると思い、一筆啓上致しました。

ご指摘ありがとうございました。おっしゃる通りで、私の書き方が駄目ですね。維新の会が「初めて打ち出したように」読めます。なので、表現を直しました。

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