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2011年11月14日 (月)

★…連載:TPPは怖くない[1]そんなに急に誰が米を売り込んでくるの?

 最近、店に来るお客さんから、「TPP=トランス・パシフィック・パートナーシップ=環太平洋戦略的経済連携協定」の話をよく聞かれます。そういう時は、私の知識の範囲内で解説をしているのですが、「農業県」であるだけに、福井の人たちもその行方がかなり気になっているようです。

 それもこれも、「TPPに加盟すると関税がゼロになり、安い外国産の農産物がどっと入ってきて、地場産がやられてしまう」という話が声高に語られ、福井の農業にも打撃が出てくるのではないかという不安が渦巻いているからでしょう。私は「TPPによって、日本の農業は本当に壊滅的な打撃を受けるのか」と問われれば、私は「農政が変われば、そうはならない」と答えるようにしています。なぜか、それをきょうから書いていこうと思います。

 さて、TPPの話をする前に、まず言っておきたいのは、実は日本は農業大国であることを知っておいてほしいということです。「日本の食料自給率は40%、先進国の中で最低水準で、世界的な食糧危機がやって来ても大丈夫なように農業を保護しなければ…」といった話をよく聞きますが、これは数字をできるだけ低く見せようとする農水省によって操作された数字なのです。

 というのも、日本だけがカロリーベースで数字を出しているからで、世界標準の生産高ベースでみれば66%もあります。GDPに占める農業のGDPを比較すると世界第5位、先進国の中では米国に次いで堂々の第2位です。第6位のフランスを凌ぎ(あれだけワインを作っているのに!)、オーストラリアは(肉をはじめとして日本人の胃袋を支えているようなイメージがあるのに)第15位といった具合なのです。しかも、農業生産額は約8兆円もあります。

 さてそこで、「福井にとって大事な」米の話です。米の場合、関税はなんと778%という高率です。それがTPPに加盟すると、奨励的には0%にしないといけません。そう聞くと、確かに慌てる人もいるでしょう。しかし、ここにも一つ、トリックがあります。実はアメリカで生産されている1,000万トンの米のうち、日本人が食べているジャポニカ米(短粒種米)は30万トン、実に日本の生産量の4%にしかならないのです。これでは今すぐ輸出を急増させようとしても無理です。

 それでも「ジャポニカの作付けを増やして輸出攻勢をかけてくる可能性は?」という声が上がるかもしれません。しかし、ジャポニカは、栽培が難しい上に収量が3割ほど少なく、米国の農家にとっても儲けが少ない作物で、関税が0%になっても、品種転換がすぐに、しかも急に起こるとは考えられません。また、東南アジアの米が日本のマーケットを席巻するという話も、日本人の嗜好からいって現実的ではありません。将来的には中国東北部の米がライバルになるかも、といったところでしょうか。

 オーストラリアがあるではないか、という人がいるかもしれません。水稲の作付け面積は約13万ヘクタールで、南半球にあるため、5〜6月という日本の端境期に出荷できるというメリットがあります。ニューサウスウェールズ州の乾燥地帯を中心に、灌漑水を利用しての直播栽培で、省力、低コスト化が進んでいます。ただ、それで現地で10キロ1,200円という日本の半分ほどの価格です。日本まで運んで来ると、その価格差はどうなるでしょう。加えて、干ばつの影響から逃れられず、世界野生動物基金(WWF)からは、大量の水を要する米栽培は経済的ではなくなるだろうと言われてもいます。

 つまり、他国からの輸出攻勢恐るるに足らず、なのです。反対に日本には、今でも外に打って出るだけの力があるのです。中国、台湾、香港の富裕層向けの輸出が増えていますが、その先には、実は農業大国・米国があります。なんと米国は年間60万トン強、金額にして600億円以上も米を輸入しているのです。TPP加盟で関税障壁がなくなるのですから、彼らにドンドン輸出すればいいのです。

 ところで、福井の農業のことを心配するのであれば、むしろ私は、「コシヒカリ」を生み出しながらそれに安住してきた「福井の米づくり」の方がよほど心配です。なぜか。それはこの数年、米を取り巻く状況が大きく変わっているからです。私が子供の頃は、米どころといえば新潟でした。ところが、今や北海道が生産量でも日本一になる時代です。「きらら」、「ほしのゆめ」、「ななつぼし」が人気を集める一方、かつてのブランド米「コシヒカリ」は残留米が増えています。

 飽きられたということもありますが、実は温暖化の影響で「コシヒカリ」は西の方にいけばいくほど味が落ちてきていると言われています。東京の高級寿司店のほとんどがもう既に北の米にシフトしているという現実を見ないといけません。となると、北陸で最も西にある福井は、「次の一手」を考えなければいけません。つまり、外のライバルのことを心配する前に、もっと美味しい米を開発し、国内のライバルに勝つことの方が、福井の農業にとっては喫緊の課題だと思うのですが…。


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